数々のスターを輩出してきた『全日本国民的美少女コンテスト』で、京都府出身の井本彩花さん(13)が今年8月8日、15代目グランプリの座に輝いた。8万人を超える応募者の頂点に立ったのは、なんと! 中学2年生──ところが、「ビジネス&メディア ウォッチ」を標榜するJ CASTニュースによると、そんな彼女の「歌声」が思わぬ注目を集めている……のだそう。コンテスト本選で行われた歌唱審査で、井本さんが『ZARD』の大ヒット曲『負けないで』を熱唱しているシーンがテレビ番組などで紹介されて以来、ネット上に「美しい…けど歌がちょっと」……といった微妙な反応が多く寄せられているというのだ。
ただ、この「ネット住民たちの微妙な反応」の「微妙」は、どちらかと言えば、愛のある肯定的ニュアンスが大半を占めているようで、井本さん本人による
「歌は。大の苦手で下手な私です(中略)ファイナリストになるまで、ほとんどカラオケに行った事もないし、人の前で歌う事もありませんでした」(本選コンテスト出場前の8月2日に更新された自身のブログから)
「2、3週間カラオケとかで(1日あたり)3時間くらい練習してました。(本番は)自分らしさを持てばいいやと思って、ありのままに歌いました。でも、もう歌いたくないです。音痴だから(笑)」(テレ朝系の朝の情報番組『グッド!モーニング』に出演した際のコメント)
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……ほか、「歌」に関する“自己分析”が公になるやいなや、
「音痴具合が最高にかわいい」
「『歌は苦手』っていうコメント聞いてたら応援したくなる」
「そりゃドえらい音痴だったんだけど、自分の欠点をさらけ出すところが逆に度胸あるし好感もてる」
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……などと、絶賛の声が相次いでいるらしい。
コンテストを主催している大手芸能事務所のオスカープロモーションが、この井本さんのことをこれからどう育てていくのかは、私の知るところではないが、ここ21世紀において「音痴のアイドル」というのは相当に希有な天然記念物存在であるのは間違いなく、仮に“歌手”としてデビューでもしたら、そのインパクトは半端じゃないだろう。
昔はけっこういたのである、音痴のアイドルって。浅田美○子に風吹○ュンに大場久○子に松○伊代に菊○桃子に田○俊彦に……。でも、最近のアイドルって、誰もが皆、そこそこ上手に歌えたりするじゃないですか。AKBグループにしてもハロプロ軍団にしてもジャニタレにしても……。
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やっぱ、「幼少や思春期のころから普通にカラオケボックスがあった」という“恵まれた環境”は大きいと思う。我々50代はカラオケと言えば、カラオケスナックしかありませんでしたから。つまり、良い子はハタチになるまでカラオケに接することができなかったわけだ。他人の目をはばからず、みっちりと個人レッスンできる「ヒトカラ」までもがスタンダードとなりつつある今後、逆に「音痴なアイドルを輩出できる確率」は、より激減していくに違いない。
また、「ほとんどカラオケに行った事もないし〜」という、厳格(そう)な家庭に育った(っぽい)無菌室風イメージも、イマドキでは珍しい。「歌が苦手な子には歌わせない」という至極常識的な路線を行くのではなく、「あえて歌わせてみる」──「長所だけを伸ばす」でもなく「短所を修正する」でもなく「短所を長所として見立てる」ダイナミックなヒトの育て方も、タレント供給過多状態であるこの時代……案外アリなのではなかろうか?