安易な「ありがとう」は言われたくない! 欽ちゃんが語る“最高の死に様”

0

2017年11月10日 18:00  citrus

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

citrus

撮影:山田英博

かつては「視聴率100%男」と呼ばれ、テレビをエンターテインメントの王様へと押し上げた立役者である「欽ちゃん」こと萩本欽一。そして、『電波少年』シリーズほか数々の人気番組を手がけ、バラエティ界を席巻したあの「Tプロデューサー」こと土屋敏男──そんな「テレビの巨人」と呼ばれて相応しい重鎮を迎えての特別インタビューが実現!
最終回となる第3回目は、W巨頭がタッグを組んで完成した、相当に“いわくつき”なドキュメンタリー映画『We Love Television?』を”肴”とし、今年76歳を迎えた萩本と、61歳を迎えた土屋の両人に、「これから」を踏まえた人生観について、ちょっぴり触れていただいた!

 

【vol.01】「映画撮った覚えないのに……」欽ちゃんがダマされ続けて知らぬ間に主演!? 最初で最後の”ドッキリメンタリー”映画

【vol.02】今求められているのは“芸人”より“言葉の達人”? 欽ちゃんはいまの「お笑い」を認めていないのか

 

【プロフィール】


主演:萩本欽一(はぎもと・きんいち)


1941年東京都台東区生まれ。高校卒業後、浅草東洋劇場の軽演劇の一座に加わり、1966年、坂上二郎と『コント55号』を結成。その後、数々のテレビ番組に出演し、『スター誕生』(NTV/1971)、『欽ちゃんのどこまでやるの!?』(EX/1976)、『欽ちゃんのドンとやってみよう!』(CX/1981)、『欽ちゃんの週刊欽曜日』(TBS/1982)、『ぴったし カン・カン』(TBS/1975)…など、視聴率30%級の超人気番組を次々と生み出す。自身の冠番組やレギュラー番組の1週間の視聴率合計が100%を超えることから「視聴率100%男」と呼ばれた。

 

企画・構成・監督:土屋敏男(つちや・としお)

 

1956年静岡県静岡市生まれ。1979年、日本テレビ放送網(株)に入社。ワイドショーの現場を経てバラエティ番組に携わるようになり、『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』(1991)、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(1996)…ほか、多くのヒット番組を世に送り出す。とくにバラエティ番組にドキュメンタリーの視点を取り込んだ『進め!電波少年』シリーズ(1992〜)はテレビ番組の予定調和を崩すスタイルが視聴者の心を捉え、社会現象となった。このシリーズで「Tプロデューサー」「T部長」の愛称で親しまれるようになり、現在は、日本テレビにて日テレラボシニアクリエイターとして、定年してもなお精力的に映像コンテンツを制作している。

11/3(欽・祝)より全国で上映中! 映画『We Love Television?』

【萩本欽一×土屋敏男 緊急密談!Vol.03】


「60歳70歳を超えてもまだまだ現役」という人生は、男女問わず誰しもにとっての“究極的な憧れ”である。高齢になっても、いまだ人から必要とされる溢れんばかりの才能と健康にめぐまれたのは勿論のことだが、それ以外にも、みずからへと課した後天的な努力や戦略などが、もし存在するのならば?──我々凡夫でも、ちょっとは真似できる部分があったりするかもしれない。そう!「一日でも長く現役を続けるため」に……。

 

 

■「教えない!」の一言で人生の後半期を乗り切れ!!

 

──最近、萩本さんが頭の中で温めている、なにか“新しい企画”などはありますか?

 

萩本欽一(以下、萩本):あのね、そういうことは「70過ぎたら教えない」の。こう答えるとなにかありそうだから、言わなくて済むでしょ? 仮に、なんにもなくても大丈夫(笑)。

 

──素晴らしい処世術ですね(笑)。

 

萩本:で、実際に仕事をやって、それが「新しい」と評価されたら「ああ、コレですよ!」「今なら教えられますよ」って。失敗したらず〜っと「教えない!」って言い続けてればいい。

 

──見習います!

 

萩本:決して冗談じゃなくて、70と言わずに、50、いや40過ぎたら「教えない!」で切り抜けてかまわないんじゃないかな。

 


撮影:山田英博

土屋敏男(以下、土屋):そもそも大将(※=萩本さんの業界内でのニックネーム)と仕事する場合は、企画云々をたたき合う機会がほとんどないですし……。常に「教えてもらえない」状態(笑)。

 

萩本:僕はね、テレビつくるときは、いつも「こうしましょう」「これについてどう思う?」みたいなやりとりを交わしていくようなやり方をしないのよ。「定義」ってやつが大嫌いだから。定義はゼロ。打ち合わせもゼロ。「こうします!」でおしまい。

 

今回の映画も土屋ちゃんが「家にカメラ置いていきますから」でおしまい。「これをどうする?」って説明は一切なし。「これからなにか新しいことを思いついたら、コレに向かってしゃべってください」のみ。

 

土屋:この映画に関しては「こうこうこんな感じになります」みたいなのは全然なくて、大将の“思いつき”をひたすら積み上げて、ようやく「たどり着いた」という感覚。しかも、そのスタートは「なにか創りましょ!」でしかなかった。そこから起きていくことを全部収録して編集し、完成した作品です。ただ、大将が絶えず発する“熱”を鑑みれば、「創るべくして創られた」という達成感はあります。

 


Ⓒ2017日本テレビ放送網

萩本:いきなりカメラを部屋の中に置いて、このヒト帰っちゃったから! 僕は「次の番組ができたときのいい証拠になるな」程度の気分でやっていた。

 

万一番組がボツになっても、「これは遺言になるな。遺言代わりに、死んでからも面白いって笑ってもらえるような無茶苦茶なことを言っちゃおうかな…」とも考えていた。なのに、その録画を「映画で使う」って聞いてさ……「オレ、生きているうちに言ったらマズイこといっぱい言っちゃったかな…?」って不安になっている。本当は僕が死んじゃったときに流してもらうのが最高のパターンなの。だから、アタシが死んだとき、なにかアタシの面白いコメントが欲しけりゃ、土屋ちゃんのとこに行けば、まだいっぱい残ってるから(笑)。

 

 

■無理やり言わせた「ありがとう」を聞きながら死にたい…

 

──こういうことをお伺いするのは大変失礼なんですけど、萩本さんが理想とする“死に様”とは?

 

萩本:これはさ、すでに決めている。みんな、人が亡くなると「イイヒトだった」「ナントカだった」……って漏らすでしょ? あと「今までありがとな」とも。だけど、僕はそうじゃなくて、「ありがと」と自然に言ってもらうんじゃなくて、無理やり口から出させるような「ありがとう」に会いたい。そういう強引な「ありがとう」を聞きながら死んでいきたいの。

 

僕が「ありがとうって言ってくれ」と頼まずに聞く「ありがとう」って、くすぐったいじゃない? そんなの耳にすると死ねなくなる。「ありがとう。あなたがいなくなると寂しいの…」って。「生きたい」と想いながら死ぬのは嫌。「もういいや」って覚悟ができてから、最後に気分のいい言葉だけを「聞かせろよ!」と強要して聞きながら死ぬのが、理想。

 

「オマエな、なにぼそっと突っ立っているんだよ! ありがとうがあるだろ!」って……。その最中にガタッと倒れて、「よかった……4日間も倒れなかったんだよ」なんて愚痴られたりしたら、まさに完璧だね。

 


撮影:山田英博

──いつ頃からそういうお考えに?

 

萩本:ごく近々。8ヵ月くらい前だったかな? 安易に「ありがとう」って言ってもらえる人って、「(生前は)相当ロクなことしてねえだろ」って、ふと頭をよぎったのがきっかけだった。

 

──土屋さんは、まだまだ年齢的に“第二の人生真っ盛り”といった段階ですよね?

 

土屋:あんまり深く考えたことはないけど……そうなりますかね?

 

萩本:真っ盛りもいいとこだよ! このヒトねえ……たしか日テレを(今年)定年になったはずだよ。そんなヒトがねえ、日本テレビで映画つくってるんだよ? しかも、後輩社員に向かって「お前、日活まで行ってこい!」とかって命令してるんだよ。ガードマンさんも普通は止めるべきなのに、「ああ、どうも」って通しちゃってるんだよ? しかもしかも、「映画にしちゃいました」って進言したら、日本テレビは「そうなの?」って、あっさり認めちゃうんだよ?

 

この映画が、爆発的にヒットしたら、それこそ“新しい生き方”だよね? 定年になったヒトが、しれっと経費の計算とかしちゃったり……。「ああ、こういうのもアリなんだ」って、定年を迎えた方々に勇気を与えられる。「定年ってくくりはなんなんだ!?」って。もうすぐ定年を迎えるアナタは土屋式で、世の中をしたたかに渡っていってください(笑)。「キミはもう辞めたんじゃないの?」って言われたら、「いや土屋流で…」「ああ、アレね!」……みたいな。会社に害がなければ、別にいいでしょ。定年なんて糞喰らえ!

 

土屋:まったくもってそのとおりです。「まだやってますから」って……。
そのような解釈をすれば、ある意味シルバー世代の皆さんにも観てもらいたい映画なのかもしれませんね。

 

萩本:いいねえ。定年になった次の日も、なに食わぬ顔で参加しちゃっているのがいい。給料とかなんとかじゃなくて。とにかく珍しい映画に、珍しいサラリーマンの生き方、人生を味わえる映画なんじゃないかな? 楽しい世の中を提案している。映画の出来に対して萩本欽一が気持ちいいか気持ち悪いかの問題だけであってさ(笑)。

 


撮影:山田英博

「リタイア」という言葉とはまったく無縁な日々を、当たり前のようにすごす「テレビの巨人」たち──その“コツ”とは、なんとなく……ではあるが、「リタイアなる区切りの時期を忘れてしまうくらいの没入感」にあるような気がする。そして、その没入感が願わくば、今際(いまわ)のときまで維持することができるなら……これほど幸せな生涯もないのではなかろうか?

■映画情報

『We Love Television?』
11月3日(欽・祝)全国ロードショー
 
【出演】
萩本欽一
田中美佐子 河本準一
 
【企画・構成・監督】
土屋敏男
公式HP:kinchan-movie.com
 


Ⓒ2017日本テレビ放送網

 

    ニュース設定