水野美紀、夫への不満話の妙――彼女が“40代サバサバ女優”として鈴木砂羽より上手なワケ

1

2018年03月16日 00:03  サイゾーウーマン

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

サイゾーウーマン

『私の中のおっさん』(角川書店)

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「しっかりしてると言われます」水野美紀
『しゃべくり007』(日本テレビ系、3月12日)

 テレビに出るのは、人気のある人、面白い人というイメージを一般人は抱きがちだが、制作側の立場で考えてみれば、数字(視聴率)が取れる人を出したいというのが本音だろう。

 例えば、視聴率をじわじわ上げている『バイキング』(フジテレビ系)。司会の坂上忍は、コメンテーターに「この点についてどう思う?」とテーマを細く設定して質問する進行スタイルを取っている。何について答えればいいのかはっきりしているという意味で、コメンテーターはやりやすいかもしれないが、その一方で、これは一種の誘導尋問だと感じることもある。実際、坂上は、コメンテーターが自分とは違う意見を言った場合、何度も“答え直し”をさせる。トーク番組のテイを取っていても、結局は力のある人の思い通りに動かなければならない現実があるわけだ。

 こう考えると、番組の司会を持つレベルの実力者にいかに可愛がられるかは、芸能人生命に関わってくるといえるだろう。日本の芸能界で司会をしているのは、男性ばかり。こうなると、若くない女性が苦戦することは目に見えているが、若くない女性が使える手段は“男前”“サバサバ”キャラだろう。「きれいだけど大酒飲み(飲まないサバサバキャラを聞いたことがない)」「美人だけど、おじさんが集うような大衆酒場が大好き」という“設定”は、男性には「気取っていない」「誘いやすい」とおトクに感じられて、好感度が高いのではないか。

 今ではあまり聞かなくなったが、5〜6年前、本来なら男性に対して使う言葉を、女性に用いる流れがあった。例えば、“男前”ウリをしていた女優・鈴木砂羽がその代表格である。しかし、鈴木は初演出舞台で、女優に対して土下座を強要したというパワハラ疑惑が浮上し、サバサバキャラがウリであっただけに、ミソがついた感じは否めない。一方、女優・水野美紀も『私の中のおっさん』(角川書店)というエッセイを上梓するなど、サバサバを強調していた。美人女優として名高い水野だが、本人いわく、自分の内部は「漁師のおっさんみたいな人」で、その外見とおっさんである内面のギャップに頭を悩ませてきたそうだ。おっさん水野は、鈴木と違ってキャラに厚みがある。2016年に、3歳年下の俳優・唐橋充とスピード結婚し、43歳で出産も果たした。アラフォー独身女性の希望の星ともいえるし、お母さんとしても売ることもできる。サバサバネタの持ち主であるから、バラエティ番組は使いやすい存在だろう。

 舞台の宣伝のため、水野は最近テレビによく出ている。3月12日放送の『しゃべくり007』(日本テレビ系)に出演した水野は、司会のくりぃむしちゅー・上田晋也に「水野さんって不思議ちゃんというか、変わってると言われませんか?」と尋ねられ、「しっかりしてると言われます」と返して、笑いを巻き起こした。

 ネプチューン・堀内健が「自覚していない人ほど、ヤバい」と、水野変人説を後押しするが、私も、水野は本当にしっかりしていると思う。なぜなら、水野は余計なことを一切言わないからだ。

 例えば、水野は『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)に出演した際、「新米ママの夫への不満」という質問に答えていたのだが、水野いわく、夫は「幼稚でノロマ」。食べ物をかみすぎて食事に2時間かかる、生理現象を直前まで我慢する、家が結露でびしょびしょになるまで加湿器を使うそうだ。新米ママの憂鬱というと、夫が育児をしないとか、仕事と家庭の両立といった内容が思い浮かぶが、水野のエピソードは“個性的な夫”の話であり、愚痴要素はゼロ。生活に直結して困ったネタではない。一種の夫のプロモーションである(水野の夫がバラエティから声がかかる可能性もある)。

 また、『しゃべくり007』では、サバサバキャラらしく、出産前、オナラが我慢できなくて困ったという話は披露する(下ネタを嬉々として話すのは、美人の特権であると思う)一方、チュートリアル・福田充徳が「うちの奥さんも42歳で出産してるんですけど、体形が戻らなくて困ってる。どうやって戻したんですか?」という質問には、「徐々に戻ると思います」とぼんやりした答えしか返さない。産後のダイエットは女性の関心が高いテーマだと思われるが、女優としての企業秘密は明かさないわけだ。夫の悪口も美しさの秘訣も言わないという一種の秘密主義を貫いているのに、同時にサバサバしたイメージもアピールできるのはすごい。

 かつて、私は水野の『私の中のおっさん』を読んで、水野はハニートラップに長けた女スパイのようだと書いたことがあるが、今もその考えは変わっていない。芸歴31年、大手事務所からの独立を経験するも、消えることのなかった水野は、立ち回りが慎重かつ的確な凄腕スナイパーである。鈴木と違って、こちらの“サバサバ”はかなり息が長そうだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

    ニュース設定