【特別インタビュー】トロロッソ代表フランツ・トスト(1)チームの成り立ち、ホンダとの交渉のはじまり

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2018年03月16日 21:31  AUTOSPORT web

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来週末の第1戦オーストラリアGPから、いよいよ、ホンダとトロロッソの新しい挑戦が幕を開ける。ここで改めてお伝えしたい、トロロッソというチームの詳細とホンダとの関係。まずはチームの代表、フランツ・トストに話を聞いた。

──レッドブルがF1チームを持っていたにも関わらず、スクーデリア・トロロッソを設立(2006年設立)することになった背景を教えてください。

「ディートリッヒ・マテシッツがミナルディを買収した際、彼は『トロロッソは、レッドブルアカデミーに所属するレッドブルのドライバーを育成しなければならない』という特別な哲学にもとづいて買収しました。まずはそれが中心的な考えだった」

「ふたつめの理由は、レッドブル・テクノロジーとの相乗効果を利用すること。そして3つ目の理由は、手頃な資金でインフラを構築するということだった。当時は今とは少し状況が異なっていた。というのも、トロロッソはレースをするためだけのチームであり、マシンのパーツや図面はレッドブル・テクノロジーから得るというのが当初の計画だったからだ。ディーターが私に電話をかけてきて『レッドブル・テクノロジーからのサポートが得られるので、ただそこ(トロロッソ)へ行き、すべてのマネジメントをしなさい』と言ったことを覚えている」

「何もかもレッドブル・テクノロジーから提供を受けていたのだから、当時は素晴らしかったと言わざるをえない。残念ながら同じエンジンを使っていなかったので、まったく同じマシンになることはなかったがね。その原因は、当時のレッドブルはフェラーリのエンジンを使用しており、後に彼らがルノーエンジンへとスイッチしたことにある。しかし彼らにはフェラーリとの契約が残っていたため、我々がその契約を引き継ぐことになった。我々はフェラーリエンジンを搭載し、彼らはルノーエンジンを搭載することになったのだ。つまりマシンのリヤ部分については、完全に我々自身で取り組まなければならなかった」

「この部分は非常に上手くいったし、知っての通り(セバスチャン)ベッテルが我々とともに2008年のイタリアGPで優勝した。このときからライバルたちは、我々の哲学や戦略に反発するようになっていき、リステッドパーツ(指定部品)という考えを打ち出した。FIAはマシンのどの部分をチームが設計し、製造しなければならないかを明確化するようになった。これによって我々の状況はとても難しくなってしまった。なぜなら我々にはふたつの古い建物しかなく、独自にマシンを設計して製造するだけのインフラを持っていなかったからだ。雇用の際にはデザイナーを特に多く雇い入れた。デザイナーがいなかったし、彼らためにオフィスを作り、空力部門を立ち上げた。風洞やCFD設備はレッドブルのものを使用していたので、これを購入し、できるかぎりの改良を加えた。かなりの時間がかかったが、結果として、それなりに整ったインフラを手にすることができたね。今では、良い形になっていると思う」

──トロロッソという名前は、レッドブルをイタリア語に訳したものです。これは単に英語を翻訳しただけのものですか? それとも、幅広くトロロッソのプロダクトを扱おうという計画があってのものですか?

「当時はただレッドブルをイタリア語にしただけだった。しかし遅かれ早かれ、トロロッソの名を冠した商品が出てくるだろう。速いクルマなんかだったら素晴らしいだろうね。日本のパートナーを得たのだから、緑茶なんていうのもいいかもしれないな。ただし、何か特別な緑茶でないとダメだ。緑茶というのはリラックスできるものだが、トロロッソはリラックスとは縁がないのでね」

──今シーズン、チームの正式名称はレッドブル・トロロッソ・ホンダとなりました。なぜチーム名にレッドブルを取り入れたのですか?

「それは変更ではない。トロロッソの名前は残っているし、レッドブルはオーナーでありメインスポンサーで、ホンダはエンジンマニュファクチャラーだ。トロロッソの名もそこにある」

──しかし以前は、レッドブルはチーム名に含まれていませんでした。2019年に向けて、レッドブルとホンダとのつながりを強力にするためのステップではないのですか?

「今のところは、レッドブルの名前がトロロッソのチーム名に組み込まれたというだけのことだ。2019年にレッドブルがどのエンジンを搭載するのかを私はまだ知らないし、それは彼らが決めることだね」

──2018年にホンダと手を組むことは、トロロッソ側から見てどのような魅力があったのでしょうか?

「おそらく2014年からだと思うが、私はずっとホンダとコンタクトを取ってきている。ホンダのことを信頼しているし、ホンダは成功すると信じているので、常にホンダと仕事をしたいと考えていた。私としてはこの数年間、ホンダが苦労してきた理由は明白だと思っている。まず、ホンダがF1から5年か、もしくはそれ以上の期間にわたって離れていたことを忘れてはならない。F1はモータースポーツの頂点だ。スピードだけでなく最高のドライバー、最高のエンジン、さらには完璧なる開発プロセスという部分も関係してくる。もしこうした体制や、そうした仕事のやり方から離れていたとしたら、復帰は非常に難しくなる」

「さらに、復活を困難なものにしたふたつ目の理由がパワーユニットのレギュレーションだ。新しいパワーユニット規則はとても複雑だ。以前はただのエンジンだったが、今ではエンジンがあり、MGU-Hがあり、MGU-Kがあって、そういったものがバッテリーを消耗させる。そうしたすべての要素は異なる使い方をすることができる。それぞれをエンジンのように使うことができるので、それが事態をより複雑化しているのだ」

「ホンダは新レギュレーションの制定に関わっていなかったので、その部分でも不利だった。新レギュレーションの制定に関わってきたメルセデス、フェラーリ、ルノーらは、そこですでに大きなアドバンテージを得ている。彼らはレギュレーションについての話し合いの席につき、介入し、議論を行ってきた。つまり彼らはさまざまな課題や挑戦を、すでに理解していたということになる。私が知る限りではホンダはこの件にはあまり関わってこなかったと思う。想像ができるかい? 彼らがF1から離れている間に新しいレギュレーションが制定されたんだ。成功を収めるには、あまりにも難しいプロセスだ」

「だから彼らは苦労しているのだが、F1では時間を買うことはできない。ホンダにはまず、時間がなかった。1基目のエンジンを持ち込み、変更が必要であることに気がついた。それからアップデートを持ち込んで何度か変更を加え、哲学も変えている。彼らのやってきたことは正しいものの、問題は、F1での週末は1秒たりとも気を抜けない戦いだというところにある。挑戦があり、レースがあり、適切な解決策を見出さなければならない。しかしこの複雑なパワーユニットでは、そんなことはまず不可能だ。それでも、ホンダは正しい道筋をたどっていて、近い将来、大きな成功につながるパワーユニットを持ち込むだろうと私は信じている」

第2回につづく

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