THE PINBALLSのライブにある圧倒的な“力強さ”と“熱量” ワンマンツアー最終公演を見て

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2018年04月19日 19:11  リアルサウンド

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 THE PINBALLSが2月23日、渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブ『NUMBER SEVEN tour』のファイナル公演を行った。


参考:ザ・クロマニヨンズの音楽と共に“心の旅”に行く 『ラッキー&ヘブン』ツアーセミファイナルを見て


 古川貴之(Vo/Gt)、中屋智裕(Gt)、森下拓貴(Ba)、石原天(Dr)の4人からなるTHE PINBALLS。結成から11年、2017年12月にリリースされたミニアルバム『NUMBER SEVEN』にて、日本コロムビアよりメジャーデビューを果たした。同ライブでは、インディーズからメジャーに移っても変わることなく、熱いロックスピリットを音楽に乗せて観客に届ける4人の姿があった。


 THEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITYに影響を受けたというTHE PINBALLS。王道のロックサウンドを志向する演奏をはじめ、飾り気のない古川の歌声にもその影響が表れている。ライブは『NUMBER SEVEN』の収録曲「that girl」でスタート。森下のダウナーなイントロからはじまり、中屋が乾いたギターの音を重ねると、気だるげな様子で古川が歌い出す。これからはじまるショーのプロローグとも解釈できるオープニングナンバーは、妖しい色気を纏いながら観客をTHE PINBALLSの世界へと誘った。


 そこから一転、古川が「盛り上がろうぜ!」と叫び、「劇場支配人のテーマ」へ。そこから「FREAKS’ SHOW」「ママに捧ぐ」「I know you」と、アップテンポのナンバーを次々と披露した。時折、心の叫びとも取れるエモーショナルな歌声を響かせた古川をはじめ、フリーキーなギターでオーディエンスを先導する中屋、小気味いいフレーズでアクセントを加える森下、それらを疾走感のあるドラミングでまとめ上げる石原と、4人の息のあったパフォーマンスが一気に会場の熱を上昇させていった。


 骨太なロックンロールを中心に置きながらも、ハッとするような遊び心を散りばめることで多彩な色を表現していくTHE PINBALLS。インスト曲「農園の婚礼」では、ケルト調のギターと跳ねるビートが高揚感を生み出していき、古川の「一緒に飛びたいんだよね!」という投げかけを合図に、嬉々とした表情を浮かべたオーディエンスがフロアを揺らした。そこから軽快なギターソロで始まる「重さのない虹」でポップに振り切ったかと思えば、「七転八倒のブルース」では「これがTHE PINBALLSだ」と言わんばかりのストレートなロックサウンドを響かせた。


 結成11年でメジャーデビューを遂げた彼らのバンド史は、決して順風満帆と言えるものではないだろう。しかし、そのキャリアに裏打ちされた完成度の高いパフォーマンスを見せ、巧みにオーディエンスを盛り上げていくライブスキルは、一朝一夕で身につけられるものではない。毛色の違う楽曲を取り揃えたという『NUMBER SEVEN』も、バンドの今の最高到達点を示しつつ、これからの可能性も十二分に感じることができる作品に仕上がっていた。


 そして本編のラストを飾ったのが、『NUMBER SEVEN』の1曲目に収録されている「蝙蝠と聖レオンハルト」。「地獄の果てまで一緒にいこうぜ!」という掛け声と共にステージとフロアが一体となり、この日一番の盛り上がりを見せた。


 その熱量を残したまま突入したアンコールでは「ワンダーソング」と「まぬけなドンキー」を演奏し、さらにダブルアンコールでは新曲「Lightning strikes」を初披露。THE PINBALLSの勢いがそのまま音に乗っているような激しいロックナンバーを全身全霊でオーディエンスへぶつけ、最後は「十匹の熊(テンベア)」でライブを締めくくった。


 アンコールのMCで古川が「俺たちはあきらめないところを見せるバンドです!」と語っていたように、不器用ながらも止まることなく懸命に歩みを進めてきたTHE PINBALLS。自身の音楽を信じ続け、腐ることなくバンド活動を続けた末にデビューを掴み取った彼らの音楽は、確実にファンの胸へと力強く突き刺さっているはずだ。そしてそんな尖ったロックスピリットの裏側には、バンドとしての大きな器とファンから愛される親しみやすさも感じられた。メジャーという新しい舞台に登った彼らは、どんな物語を紡いでいくのだろうか。きっとファンの胸を打つような熱いステージを、これからも繰り広げてくれるに違いない。(泉夏音)


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