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良いことばかりではない リモートワークの“実態”

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2018年05月16日 06:42  ITmedia ビジネスオンライン

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ITmedia ビジネスオンライン

写真リモートワークの社員の負担がオフィス側に……
リモートワークの社員の負担がオフィス側に……

 働き方改革の中でも、「場所の自由」を実現する柱として注目されている「リモートワーク」。在宅勤務やテレワーク、クラウドソーシングなどとも呼ばれるが、会社以外の遠隔地で、Eメールや電話などを使ってオフィスにいる社員あるいは外部の取引先などとコミュニケーションをとりながら仕事を行う勤務形態だ。総務省は、地域活性化にもつながるICT利活用促進政策の1つとして掲げている。



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 リモートワークの導入により、企業にもたらされるメリットは次のようなものだと言われている。



社員の業務生産性向上



オフィスでのムダなコミュニケーションや会議などから解放されることによって、必要な業務に集中して取り組むことによって業務遂行量が向上する。顔を合わせるコミュニケーションがなくても、ICTツールによってチームの一体感が失われることはなく、むしろ強化される例もある。



企業コストの削減効果



社員のために用意する備品類や光熱費などの固定費が削減できる。リモートワークに従事する社員の割合によっては、オフィスそのものの家賃や土地代も削減できる可能性がある。さらに、通勤がなくなるため、交通費を支給する必要がなくなる。



通勤からの解放



通勤がなくなることは、人によっては往復2時間を超える通勤時間を別なこと(仕事だけでなく、趣味や家族と過ごす時間)に使えるというメリットも生む。さらに通勤によるストレスなどの健康に及ぼす影響からも解放される。



人材の多様化



リモートワークを導入することにより、会社の場所を中心とした採用を行う必要がなくなるため、人材獲得の幅が広がり、いわば世界に対して募集を行えるようになる。



●リモートワーク導入企業の狙いは?



 こうしたことから、リモートワーク制度を導入している企業が続々と増えている実態がある。その一部を紹介しよう。



 日本ヒューレット・パッカードでは、「フレックスタイム」制と合わせて、従業員が場所や時間に縛られない働き方を提供しており、「フレックスワークプレイス」(FWP)という制度を使えば、週2日、月8日まで、会社以外でも仕事ができる。特に理由がなくても、「明日はFWPで働きます」と上司に報告すればよい。通勤時間の短縮のために家で仕事をしたり、子育て中で、子どもが熱を出したりしたときに、午前中に小児科に行って午後は在宅で仕事をしたりできるようになる。



 社員に話を聞いてみると、「昔は遅くまで残る社員もいたのですが、今は早く帰って家族と過ごし、夜に少し仕事をする、といった時間の有効活用ができています」。



 従来のITサービス業は、開発者と運用管理者などが同じ場所で顔を見ながら仕事を進めることが一般的だったが、ITサービス大手のSCSKでは、2017年8月から「どこでもWORK」という制度を全社展開した。



 リモートワーク制度推進の後押しをしたのは、社員における少子高齢化、それに伴う介護が身近になってきたことが理由にあるという。ワークライフバランスが重視される今、社員に柔軟な働き方を提供できる施策を打たないと人材が集まらなくなりつつあり、また、リモートワークなどの施策がなければ、人材自体が活躍できる時間も短くなってしまう。そこで同社では、ICTをフル活用し、リモート環境でも自席と同様に働けるようにして、月に3回程度の在宅またはサテライト勤務を推奨している。



 インテリアデザイン・施工を手掛けるコスモスモアでも、フリーアドレスだけでなく、リモートオフィス制度が取り入れられている。担当者は「上司が部下を間近で見ること=管理、という考え方は、ダサいと言いますか、今の時代にそぐわないのではないでしょうか」と語っている。「『部下が目の前にいたらマネジメントできるの?』と疑問に思ってしまいます」。



 リモートワークの導入が現実的なものになっているのは、インターネット上のクラウドサービスが進展、充実してきたからでもある。クラウドスペースを利用すれば、社外からでも資料を閲覧して編集したり、クラウド上で作業をすべて完結させたりすることが可能になる。社内外を問わずネットワーク環境さえ整えば、社内と同等の仕事ができる環境になる。



 クラウドセキュリティサービスを提供するHDEでは、業務を実際にクラウド化することで、何が課題になってくるのか、自社を実験場として社員が働く「場」づくりに努めている。



 同社では、エンジニアに限らず、セールスや、企画・総務・人事などの今まであまりリモートワークがされていなかったバックオフィス業務でも、積極的にリモートワーク導入を進めている。コーポレートサイトを見ると、シングルファーザーとして育児をしながら時短かつリモートワークでセールス業務を行う人や、女性で育児をしながら在宅で総務庶務業務を行う方、台湾でセールスを行う女性の例が紹介されている。時短でリモートワークにすることで、従来、制約条件のために働けなかった優秀な人を採用することができているという。



●リモートワークを導入するのは決して容易ではない



 それでは、実際にリモートワークの制度を導入するにあたり、上述に紹介した企業では何がハードルになっただろうか。



 日本ヒューレット・パッカードでは、リモートワーク制度を機能させるためには、オフィスエリアをデジタル化する総務的な戦略や、会社以外のリモートで仕事ができるようにするIT戦略、加えて、家でする仕事の進ちょくを管理するための評価制度などの人事戦略が必要だと指摘している。



 一口にデジタル化と言っても、企業にとっては大きな改革が必要だ。SCSKでは、大規模な「ペーパーダイエット(ペーパーレス化)」に取り組んだ。



 例えば、会議で紙資料を配布するために、会議のある日はリモートワークができなくなるように、印刷された資料は、働く場所を限定してしまう原因の1つになる。同社では大型モニターを会議室に導入してそこに資料を表示させ、マイクとスピーカーも設置してリモートで会議参加できるようにした。さらに印刷枚数50%削減、保管資料の50%削減を目標にペーパーレス化を進め、保管量を削減したことで収納キャビネットも減らした。社員が紙資料を保管するための袖机(サイドキャビネット)もすべて撤去したという。



 IT戦略としては、社外でも問題なく業務を行うためには、VPN接続を暗号化通信で社内環境にアクセスできるセキュリティ運用が必要になる。オフィスのみでの利用が定められているようなデータにアクセスするためには出社しなければならない。



 さらに、リモートワークでは勤怠がばらついたり、サボリが発生したりするのではないかという懸念がある。上述のクラウドサービスを中心に、リモートワーク社員とのコミュニケーションは、おおむねチャットやメールなどの非同期な手段に依存することになるため、連絡が返ってこないと不安になる管理職も多いようだ。



 リモートで働く側も、「早く成果を出さないとサボっていると思われる」という意識から、かえって働きすぎにつながってしまうケースも目立つ。



 上述のHDEでは、「こうした制度改革は上からやることが大事」と、まずマネジャーからリモートワーク制度を導入し、マネジャーが会社に来ないで仕事をする日を週1日作って見本を示し、チームの仕事スタイルを変革したという。部門やチームによって運営ルールは異なるので、強制的な仕組みを作らずに、導入したチームの事例を共有するにとどめ、ゆるやかに導入する理想的な改革であると言える。



 通常の働き方とリモートワークの違いを分解していくと、「コミュニケーションの取り方」の違いということにたどり着く。



 チャットやメールでも、顔を合わせて行うのと同等以上のコミュニケーションは十分可能である。管理する側、される側の不安を払拭するために、普通の会社が同じ時間に出勤するように、同じ時間にチャットを開いて仕事を開始することでリモートワークでも出勤時と同じ環境を作ることは可能だ。しかし、それ以前に、「社員にどういう働き方をして、どういう成果を出してほしいのか」ということを十分に議論することが必要だろう。



 一方で、チャットやビデオ会議では互いの考えていることが伝わらなかったり、「会ったときに話そう」と話を延ばしてしまうことで決断が遅れるなど、生産性が低下したために、一度導入したリモートワーク制度を廃止したり、限定的なものにとどめている企業もあるという。



 また、リモートで働く社員ができない作業負担が、オフィス側の社員に一方的にのしかかってきてしまうという問題も指摘されている。



●働き方改革の本質を問い続けることが重要



 リモートワークの実態はさまざまで、勤務時間の100%を遠隔業務でこなす場合もあれば、オフィスで働く日や時間を設けるハイブリッドなケースもある。企業との契約も正規雇用と外部契約の場合があり、後者の場合は、従業員ではなくアウトソース先ということになる。



 リモートワークは、働く人と企業の双方に魅力的な改革になり得るが、これまでオフィスをビジネスのための主な拠点としてきた企業にとっては、従業員をオフィス以外の場所で働かせることになるハードルは、決して低いものではない。



 制度の導入は、単に働き方を効率化するというだけでなく、何を目的とするかということで大きく成否が分かれる。



 地方在住の優秀な人材の採用力を伸ばし、事業を拡大していくために導入する企業もあれば、現在働いている社員の裁量を広げることで、業務を効率化し、意識を改革させていく企業もある。



 それぞれの企業が、自社にとっての働き方改革の本質を問い続けながら制度を導入し、ワークライフバランスに適した職場環境を構築していくことが必要なのである。



(アスクル「みんなの仕事場」編集部)


このニュースに関するつぶやき

  • 海外しかリポート先が無い人(アジアマネージャー)は出社の意味がありませんでした。就業規則に従い限定的な在宅勤務でしたが、業務にあわせてフルリモートや週1リモートなど細かく設定できるようにすると良いと思います。
    • イイネ!2
    • コメント 0件
  • リモートワークって、自分の計画力やオンとオフの切り替えがしっかり出来る力、仕事の段取りや他社との調整力が無いと、大抵の場合オンサイトよりかなり非効率になります。少なくとも、そこを分からずに会社の批判だけする人にはお勧めしない
    • イイネ!13
    • コメント 4件

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