アニメとロックの融合起こすLiSA、ファンク愛溢れるENDRECHERI……2作の“音楽性”に改めて注目

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2018年05月20日 10:02  リアルサウンド

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参考:2018年5月21日付週間アルバムランキング(2018年5月7日〜2018年5月13日・ORICON NEWS)


 初登場の多い今週、1位と2位にはLiSAが初めてキャリアを総括した『LiSA BEST -Way-』『LiSA BEST -Day-』が並んでいます。前者は42,325枚、後者が41,651枚。……毎回思うんですが、このわずか674枚の差って何でしょうね? 両方欲しくないの? 店頭で二枚を手に取ってもう一枚は戻しちゃうの? すごーく謎です。


(関連:LiSAは“最高”を更新し続けるーーベスト盤から紐解く“ロックヒロイン”としての歩み


 ともあれ。女性アーティストがベスト盤で1・2位を独占というのは、浜崎あゆみ(2007年)、JUJU(2012年)、西野カナ(2013年)以来の記録だそうです。錚々たる歌姫のポジションに新たにLiSAが加わった……と書いてしまうと少し違和感がありますね。アニメ『Angel Beats!』の劇中バンドの歌い手として抜擢され、その後ソロデビューを果たしたLiSAは、一般的に“アニソンの人”だと思われているはず。Apple Musicでのジャンル名はきっぱり「アニメ」です。


 しかし彼女のライブを見た知人によると、ファン層は男女比が半々くらい。“オタ芸”に興じているアニメファンもいれば、Tシャツにスニーカーでサークルモッシュしているロックキッズ、またLiSAのファッションを真似た女の子たちもたくさんいるそう。アニメが出発点とはいえ、もともと高校時代からロックバンドをやっていた彼女は(その頃からSiMのMAH氏とはバンドマン同士の交流があったとか)、現在、アニメファンとロックファンを同時に惹きつけるパワーを持った稀有なポジションにいます。


 理由はもちろん楽曲力。それぞれ14曲を収録した今回のベスト盤は、うち7曲がUNISON SQUARE GARDENの田淵智也作曲です。以前掲載されたfhána・佐藤純一との対談を読んでもわかるとおり、ロックとアニメの両方に触れながら、それぞれのファン心理の違いも熟知している田淵ほど、LiSAにとって頼もしいパートナーはいないでしょう。アニメ好きとロック好きが「無理に混ざる必要はない」というスタンスの彼は、毎回LiSAのパワフルな歌声が最も活きるかたちで曲を書いてきた。その結果として、他のアーティストでは見られないファンの混ざり合いが起こっているというのは、歌い手のジャンルが何であれ理想的なことだと思います。


 また今週の8位は堂本剛のソロプロジェクト、ENDRECHERIの『HYBRID FUNK』。先週77,442枚で1位に輝いた本作が、今週は5,489枚、累計8万枚超えのセールスとなりました。KinKi Kidsならアルバムはだいたい初週で13万枚というのが近年のパターンなので、つまり、この作品を買い求めたのはすべてのKinKi Kidsファンではない。彼がENDLICHERI☆ENDLICHERI名義でファンクに挑んだのは2006年以降ですが、名義をいくつも変えながらもファンク愛だけは捨てず、むしろ凄まじいのめり込み方で追求してきた。その姿勢に感銘を受けたリスナーが残っていったのでしょう。


 そして、今回の『HYBRID FUNK』は堂本剛ソロの集大成ともいえる、あまりにも完成度の高いエレクトリックファンクの名作。KinKiとはまったく違うエロティックな唱法や、音に溶け切っているため英語にも日本語にも聴こえない言葉の節回しなど、ミュージシャンとしてのこだわりに圧倒されます。参加したメンバーも豪華なもので、なんと「HYBRID ALIEN」では山下達郎の超クールなカッティングが聴ける! これだけでも一聴の価値アリです。


 LiSAとENDRECHERI。ともに“アニソンの人”“ジャニーズの人”と括られ、バイアスのかかった見方をされがちですが、イメージだけでスルーしていてはあまりにももったいない。改めてそんなことを考える今週のチャートでした。(石井恵梨子)


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