カリスマカンタローが語る、日本のダンス界の未来 「世界のダンサーが目指す場所に」

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2018年05月20日 22:31  リアルサウンド

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 日本をダンスカルチャーの発信地に――。その夢を実現させるべく、奮闘している男がいる。自らがダンサーであり、日本のダンス界のアンダーグラウンドを牽引してきた、カリスマカンタローだ。


参考:ストリートダンス史に残る名勝負も! 日本一のダンサー決める『DANCE ALIVE HERO’S』レポ


 (株)アノマリー代表取締役CEOとして、ストリートダンスバトルイベント『DANCE ALIVE HERO’S』を主催。現在は(株)LDH JAPAN執行役員と(株)EXPG取締役も務めている。今年で13回目を迎えた本イベントは、両国国技館で1万人を集める世界最大級の規模へ成長。今夏には、優勝賞金1000万円を掲げた世界大会『DANCE ALIVE World Cup Japan 2018』の開催が発表され、さらに盛り上がりを見せている。


 「日本でダンスが流行って約10年、再構築するタイミング」と語るカリスマカンタロー。彼がダンスイベントを作ることで変えたかったダンサーたちを取り巻く現状。そして、その先に見据える未来について話を聞いた。


■ダンサーがダンサーのまま食っていける道がない


――まずは『DANCE ALIVE HERO’S』を作ろうと思ったきっかけから、教えてください。


カンタロー:最初は、自分がダンサーとして有名になるために、イベントを作ろうと思ったんです。「日本一デカいイベントを作って、そこで大トリを踊れば日本一有名なダンサーになれるじゃん!」って(笑)。じゃ、どうしたらそんなデカいイベントを作れるのかなと考えながら家でメシ食ってたら、ちょうどテレビでK-1がやっていて。これをダンスでできないかな、と思ったんですよね。ダンスバトルって、もともとサークルバトルってクラブで自然と行なわれるものなんですけど、それを大会にしたら盛り上がるんじゃないか、と。そこから頂点を決める『DANCE ALIVE HERO’S』の構想が生まれたんです。


――今年の来場者数は1万2000人超と過去最高を記録しましたが、ご自身の手応えとしてはいかがですか?


カンタロー:13年このイベントを続けてきましたが、僕は一度も達成感を味わうことなかったですね。毎年「まだまだだね」と言いながら走ってきた印象です。「まだまだ」と思うのは、「まだコアの域から出ていない」という意味でした。もちろんパイが大きくなれば、“薄まる”もの。一般の人はわかりやすいところで感動するので。サッカーで例えるなら、多くの人がゴールの瞬間に注目するのは当然のことです。でも、その前のアシストパスがすごかった、その前のキラーパスがやばかった……と掘り下げられていくのがコアな楽しみ方。最終的には、僕もカルチャーのど真ん中にいるので、多くの人にコアな部分に触れてほしいと願っています。だからこそ、どういう仕掛けがあれば、そこまでたどり着けるのかという道筋を作ることが大切なんです。そうすることで、コアな人たちが創り上げてきたカルチャーが報われるとも思っています。もっと幅広く一般の人を巻き込んでこそ、市場になると思うので。


――誰も成し得なかった、ダンス界の市場を作ろうとしているのですね。


カンタロー:はい。ダンサーは、みんなダンスを踊りたいんですよ。その先にどうしたらビジネスになるのか、なんて考えながら踊っている人はなかなかいない。僕も本音を言えば、ダンスだけを踊って生きていける生活がしたかった。僕みたいな誰かが作ったマーケットの中でスターになりたかった。でも、今はそれがないから、自分で作るしかなかったんです。どうしたら、もっとダンス界が知られるんだろう。どうやったら、一般の人がファンになってくれるんだろうと考えて、できたのがこのイベントです。


■アンダーグラウンドとメジャーが融合して見える未来


――実際にイベントを見て、ダンスを知らなかった人も楽しめるようになっていると感じました。


カンタロー:市場を作るには、『ミーハーな人』が必要だと思うんですよ。ミーハーって、ネガティブなイメージで用いられることが多く思いますが、僕はとてもステキだなって考えていて。だって、ミーハーって要するに素直ってことじゃないですか。「カッコいい!」「かわいい!」って感情のままに行動して、熱心に応援するのって、すごくまっすぐじゃないとできないことだと思うんですよね。僕自身も、中1のときにJリーグが始まって、カズ(三浦知良)カッコいい! って夢中になった経験があるんです。もともと母がダンサーで、自分もダンサーになりたいと思っていたんですけど、すぐに「サッカー選手になりたい!」って切り替えたくらい(笑)。「あんな風になりたい」と多くの人に夢を抱かせる大きなメジャーの流れ、その中で「俺はこっちをいく」という反骨精神も生まれてくる。正しくダンスカルチャーが伝わっていくためには、今まさにメジャーとアンダーグラウンドが融合が必要で、今年8月開催する『DANCE ALIVE World Cup Japan 2018』は、その変革の時だと思っています。


――PKCZ®、GENERATIONS from EXILE TRIBE 、E-girls、FANTASTICS、世界+Beat Buddy Boi、®AG POUNDら、LDHのアーティストやダンスチームがSHOWCASEにも参加して、大いに盛り上がりましたね。


カンタロー:僕が会社を立ち上げたのが2004年、LDHが2003年と、ほぼ同時期だったこともあり、当然ながら僕も意識をしていたんです。HIROさんから去年「一緒にやらないか」と話をいただいたときには悩みました。アンダーグラウンドで張っていた顔もありましたし、メジャーと融合するのはそんなに簡単なものではないですって言ったんです。もちろんやりたいなとは思ったけれど、やるには整理も必要だった。そしたらHIROさんからはイベントを大きく変えるのではなく、むしろLDHアーティストが“お邪魔します”というスタンスで一緒に盛り上げるマインドで行きたいと言われて。「それなら!」と実現したんです。混乱したのは、むしろLDHファンのみなさんでしょうね。「『DANCE ALIVE HERO’S』って何?」「国技館の枡席でライブ?」って。逆にダンス界はダンス界で「え、アーティストくるの? え、何なの?」って(笑)。でも、最初は混乱があって当たり前だと思います。そこから歩み寄りが生まれると思うので。


――アーティストのみなさんも決勝戦を観戦して盛り上がっている姿が印象的でした。


カンタロー:そうですね。ファンのみなさんも、SHOWCASEが終わってもそのままダンスバトルを見守ってくださる方がたくさんいました。このイベントにLDHアーティストが参加することで、彼らの原点がストリートダンスにあることをファンに知ってもらえたらうれしいですね。僕らにしても、日本のエンターテインメントを担うアーティストとしての活躍の道が、このダンスイベントの先につながっていることを示せるのはすごく大きなことだと思います。明日のスターがここにいるんだよ、これから新しい時代に行くんだよ、そんなSay Helloな場になったらいいな、と。近い将来、アーティストを含めたダンスバトルも繰り広げられるかもしれませんし、まだまだこのイベント自体進化させていく予定です。


――8月のW杯もダンスカルチャーが変わる象徴的なイベントになりそうですね。


カンタロー:まさに。例えばサッカーワールドカップを今から作ろうと思ったら無理じゃないですか。バスケも、野球も、F-1も、オリンピックだって、イチから作ろうと思っても今からじゃ全然想像つかないじゃないですか。でも、ダンスならまだイケるんです。同じようにプロリーグも作れるなって思ってて。これがもし僕が生まれるのが10年後だったとしたら、誰かが作ってたかもしれない。でも、作られてないってことは、チャンスだと思うんです。ダンスは言葉の壁も突破できるので、一気に世界的スターが生まれる可能性もある。世界のダンサーがここを目指そう、と思える場所を死ぬまでに作るのが、人生の大事な指針になりました。


――そこまでカンタローさんが熱意を傾けられるのはなぜですか?


カンタロー:いやー、やっぱりモテたいからですよ(笑)。ダンサーっていうのは、みんなモテたくて踊ってます。それは、異性にキャーキャー言われるという意味だけじゃなくて、同じダンスをしているヤツらから「やべぇ」って言われたい、後輩からは憧れられたい、何よりカッコいい自分でいたいと思うから。そのために、みんな人知れず練習をするんです。僕もそうでしたから。でも、ダンサーとしてはいつか体力的に限界がくるかもしれないけれど、ダンス界を変えることができたら、永遠に「やべぇ」って憧れ続けられるじゃないですか。「あの人だよ、ダンスのワールドカップを作ってる人!」って言われて、余裕のある感じで手を振り返せるような、モテるダンディーな男を目指してます(笑)。


■ダンスカルチャーで日本を元気に


――自分の夢と、ダンス界の夢がリンクしているんですね。


カンタロー:そうですね。みんな夢を語らなくなってくるんですよね、年をとってくると。でも、僕は40歳でこれやる、50歳でこうなっていたい、とずっと仲間に話してるんですよ。やりたいことをやるためには出会えた人に熱意をぶつけて、味方を作っていったほうがいい。どんなにつまんない毎日でも、どんなにやりたいこと全力でやってても、突然人生が終わることがある。だったら、失敗のリスクがあろうが、自分のやりたいと思ったことに全力で取り組める方がいいなと思っています。自分の欲求と社会の利益が一緒になれば、今までなかった仕事になる。だから、僕は自分の好きなダンスに関わるイベントをイチから作ることを「仕事」にしているんです。同時に僕は日本という国も大好きなんです。海外に行くたびに、日本が好きになって帰ってきます。ただ高度経済成長後の日本は、かつての勢いに比べて少し元気がない。だから、ダンスカルチャーで日本がもっとリスペクトされる国になってほしい、という願いもあります。


――日本をカリスマダンス大国にしたい、と。ちなみに、ずっと気になっていた“カリスマ”カンタローの由来も聞いていいですか?


カンタロー:あはは。2002年くらいにカリスマ美容師ブームがきたんですよね。その当時、僕はまわりから「カリスマ」ってよく言われていたんです。「お前の言うことカリスマだよ」みたいな。でも、そのカリスマブームが去ったとき、あえて名前に「カリスマ」ってつけたらウケるんじゃないかなって思ったのがきっかけです。おかげさまで初対面の人にも一発で覚えてもらえるので、そのまま使っています。ただ、HIROさんには「ふざけてんの???(笑)」と笑顔で何度言われたか(笑)。じゃあ、本名のほうがいいかってなって、僕の本名が神田勘太朗って聞いたら「本名もふざけてる(爆笑)」って笑われて。「失礼ですよ!」って僕も一緒に笑っちゃいましたけど。どっちにしろ目立つ名前で気に入っています。


――遠慮のないやりとりがとても微笑ましいです(笑)。では、最後に『DANCE ALIVE』の今後の展望を教えてください。


カンタロー:2025年には、大会自体を動員、影響力含めて圧倒的に世界一にしたいと考えています。そこで生まれたスーパースターがダンスだけでなく、例えばファッショニスタとなって着るものが世界のトレンドになり、世界中のアーティストが「このイベントで自分の楽曲をかけてほしい」と願い出るような、そんなイベントにしなければならない。会場への動員数はもちろん、リアルタイムで配信していく。そこから世界中の人が投票できるようになり、着用している衣装もその場で購入できるように環境を整えたいと考えています。そしたら会社のアイデンティティみたいになるお城を造りたいですね。だって、空港からヘリコプターに乗って会社の城に招待されて、くノ一が受付とかしてたらやばいじゃないですか。「なんてクレイジーな会社なんだ!」「アイラブジャパーン!」ってなるはずなんで。まあ、みんなバカにするんですけどね(笑)。そのためにも、まずは2020年にはプロのダンスリーグを作るように実はみんなで準備しています。日本からアメリカやヨーロッパへ輸出して、リーグごとに所属してるダンサーが移籍して……といった動きが普通の世の中になっていったら、もっと面白い世界が広がっていくんじゃないかなと思っています。応援よろしくお願いします。(取材・文=佐藤結衣/写真=石川真魚)


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