D.A.N、あいみょん、RIRI……BMXとのコラボが急増中 音楽との親和性を探る

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2018年06月24日 10:02  リアルサウンド

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 小型の自転車を漕ぎ、その勢いでランプ(ハーフパイプ)から宙に舞うなど、疾走感とダイナミックな技が楽しめるのがBMXだ。日本ではスケボーに並び、エクストリームスポーツの一つとして一定の層から人気を集めていたが、2020年の東京オリンピックで初めて公式種目に選ばれて人気急上昇中である。以前から音楽シーンとの親和性が高かったBMXだが、ここにきてコラボするアーティストが目立っている。


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 フォルクスワーゲンの小型車「up!」のブランドムービー「Volkswagen UP! ALL NIGHT VOL.4」では、D.A.N.の新曲「Chance」に合わせてブレイクダンサーのISSEIやプロBMXライダーの池田貴広らがパフォーマンスを披露する様子が収められている。


 D.A.N.といえば、昨年リリースされた「SSWB」のMVでも小山田米呂、柳俊太郎といった人気のモデルやアーティストが出演して話題を呼んだのも記憶に新しい。新曲「Chance」のMV自体は主人公が車の運転を続けるという淡々としたものだったが、今思うと「Volkswagen UP! ALL NIGHT VOL.4」の伏線だったのだろうか。本作ではスケーター、BMXライダー、ダンサーに加えてゲーマーなども出演し、様々なサブカルチャーが楽しめる作りになっている。


 中でもBMXライダーの池田貴広は夜の街を自転車で疾走したり、床の上で自転車を自由に乗りこなす姿を披露している。池田貴広はフラットランドを得意としたプロのBMXライダー。BMXの大会での活躍はもちろん、あのシルク・ドゥ・ソレイユにも初のアジア人BMXライダーとして参加している。また、「高速スピン」のギネス世界記録も打ち立てた功績を持つ。そんな池田貴広の走りと技に着目してほしい。


 4月にリリースされたあいみょん「満月の夜なら」のMVでもBMXのライダーが多く出演する。同曲の疾走感溢れるギターポップサウンドがBMXライダーたちの駆け抜ける姿になかなかマッチしている。「おしゃれだから」というだけではなく、技のダイナミックさや疾走感を持ってBMXが作品の印象付けに貢献している。


 主演を務めるは俳優の小河原義経。彼がBMXをしている姿もなかなか様になっているが、脇を固めるのは比嘉勝太、南悠麻、大霜優馬といった現役BMXライダーの面々。Z.E.N DistributionというBMXクルーに所属する彼らだが、特に近年の比嘉勝太の活躍は目覚ましく、BEAMSの40周年記念プロジェクトとなる『TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)』にもBMXライダーとして出演。少し前にもGoogleのCMに出演し、自転車にまたがって宙を舞う姿がお茶の間に流れた。比嘉勝太もこれまでにBMXの大会でも好成績を残しており、その若さを加味しても東京オリンピックの選手候補として期待が持てる。


 J-POPとBMXというと畑違いと思われるかもしれないが、これまでにもBONNIE PINK「Spin Big」のMVや湘南乃風「カラス」のMVでもBMXが大々的に取り上げられたことがある。


 J-R&B界の新生として突如シーンに現れた若手シンガーのRIRI。セリーヌ・ディオンの出世作「Falling Into You」やブランディ―の名曲「Have You Ever」などを手掛けたことで知られるデヴィッド・フォスターのオーディションのファイナリストにも選ばれた彼女だが、シンガー/ラッパー・AIの後ろ盾を得るなど、18才という若さながらも実力と運を兼ね備えた存在だ。1stアルバムではプロデューサーにBrian Sokoを迎えるなど、新世代のシンガー特有の感性で作品作りに挑む彼女は「Keep Up」のMVで若手BMXライダーの中村輪夢とコラボし話題を呼んだ。


 この中村輪夢は若干16歳ながらもBMX界でもオリンピック選手候補と言われるほどの実力の持ち主。千住MURASAKI PARK TOKYOで年に一度日本一のBMXライダーを決める大会「ペルージャカップ」ではオープンクラスで連覇を達成するなど活躍は目覚ましい。「Keep Up」のMVではEDM寄りの作風に合わせて、ひたすら中村輪夢が街を駆け抜け、そして勢いよくランプを飛ぶ姿を堪能することができる。10代同士という若い感性がもたらした「音楽とBMXカルチャーの融合」が楽しめるビデオになっている。


 日本一のBMXライダーを決める大会として2011年より開催されてきたペルージャカップ。中村輪夢のようなスター選手が登場するなど、年々規模が大きくなっているが、「一斗缶跳び」と称して一列に並べられた一斗缶をどれだけの数をジャンプで飛び越えられるかを競う競技もある。そして助走をつけて自転車で跳び、その高さを競う「ワンメイクJAM」も毎回白熱した戦いを見せる。


 れっきとしたスポーツではあるが、BMXを楽しもうという遊び心の根底はやはりストリートに根ざしている。去年のペルージャカップはNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMACKA-CHINや、STUTSのリリースパーティーでもプレイを披露したDJ KUMIKO、そしてRittoを迎えてMIX CDを出すなど精力的に活動を続けるDJ MAS a.k.a.SENJU-FRESH!が競技に合わせてそれぞれDJを担当し、一般の観客にとって競技だけでなく、音楽も楽しめる大会となった。


 また、元々BMXで遊んでいたというのがラッパーのANARCHY。Reebok Classicとのコラボした「MONKEY TALK」では愛車に乗る姿も確認できる。


 BMXファンにとって見逃せないのがLIBROの「B面」のMVだ。まず、冒頭から登場するハンバーガー屋はBMXやスケボー専用のパークを併設するBASHI BURGER CHANCE。そこで比嘉勝太や眞謝大輔といったライダーたちの日常を切り取ったのがLIBRO「B面」のMVだった。練習に明け暮れ、時にはふざけ、時には転ぶ、そんなBMXライダーたちのありのまま姿を映し出している。フランクなトラックが心地よい「B面」の世界観にもぴったりだ。


 ラッパーのEVEが映画『ローラーガールズ・ダイアリー』でローラースケート選手に扮して話題になったこともあったが、ストリートカルチャーの一つでもあったエクストリームスポーツは以前よりHIPHOPなどの音楽文化と隣り合わせにあった。BMXがオリンピックの公式種目に選ばれたことにより認知度の向上が期待されるが、今後も音楽作品とも様々なコラボが展開されるだろう。競技としてのBMXはもちろんのこと、ストリートカルチャーとしてのBMXの魅力により多くの人がふれあう機会も生まれていきそうだ。(鼎)


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