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災害派遣の自衛隊員、免許があっても重機を使うのはNG!? 足かせとなる陸上自衛隊の制度

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2018年08月11日 09:22  日刊SPA!

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日刊SPA!

写真陸上自衛隊Facebookより
陸上自衛隊Facebookより
「自衛隊ができない40のこと 36」

◆台風シーズンの豪雨災害は突然やってくる

 このところの台風の動きは従来とは違い、北海道までその影響範囲となってきたようです。夏から秋にかけての台風のシーズンには、日本全土が突然の暴風雨や土砂災害に警戒しなくてはならないのです。

 西日本豪雨災害の被災地の一つ、広島市と呉市を結ぶJR呉線は、土砂崩れで運行できなくなりました。東広島に住む被災者の方が「10月まではJRが復旧しないため、主人は職場近くに単身赴任する覚悟をしました」と話してくれました。JRが使えないため、通勤時間の道路は大渋滞となり、職場に遅刻することもあったようです。災害は一度起こると長く被災者の生活に影響します。家族が離れ離れに暮らす不自由さや寂しさが、災害の後片付けが終わってほっとした時に込み上げてきて涙がでるのです。

 インフラの完全復旧は早ければ早い方がいいのですが、今回の災害派遣で少し気になることがありました。自衛隊は災害の初期段階の救難と後片付けの手伝いをしましたが、大きな重機があるのに使わず、スコップで手掘りという部隊もあったのです。「どうして?」と不思議でしたが理由がわかりました。

◆建築機械免許を持つ予備自衛官が派遣志願

 今回の災害派遣には、常勤の自衛官だけでなく、多くの予備自衛官たちも参加しました。予備自衛官は非常勤の自衛官で、普段は別の仕事をしています。年間所定日数の訓練を受けて自衛官としての能力を維持しつつ、イザと言う時には自衛隊に組み込まれ自衛官として災害対処や治安維持、防衛の任につく人達です。予備自衛官が様々な免許を持っていることがあります。自衛隊で免許や資格を取得した人もいれば、今働いている職場で取得した場合もあります。

 「西日本豪雨災害の災害派遣」に応じた予備自衛官のAさんは、建築機械のユンボやブルドーザーを使える「車両系建設機械」の免許を持っていました。テレビで河川が決壊して水が流れ込んでいる様子を見ていた彼は、これは重機を使う人が必要な災害だと考え「免許を持っている俺が行かないでどうする」と決意しました。通常の仕事の方が災害派遣に出るよりずっとお金になるのだけれど、「こういう時に役に立ってこその予備自衛官だ」と、まだ派遣地も決まっていないうちに「行きます」と返事をしたそうです。

 まずは道路を塞ぐ大量の土砂をどけなければ、救援車両や食料を運ぶ輸送車は被災地に行けません。もちろん、ヘリで緊急輸送はできますが、たくさんのトラック輸送で運ぶ量には程遠いわけです。断水で飲み水がない中、給水車や救援物資等が通る道を確保したりすることは重大な任務です。

 そもそも、自衛隊は国防のための組織です。重機の免許を持っている常勤の隊員がいても、常に土木や建築工事で重機を使っている人のスキルにはかないません。民間の土木や建築現場の専門職として磨いた技能をフルに使って「助けにいくよ!」と手を上げてくれた彼らには心からの感謝をしたいとおもいます。

 今回の西日本豪雨災害では、事前に各々の予備自衛官がどんな免許を持っているかの聞き取り調査があったようです。土砂をどける土木関係の資格、重機の免許と振動機械の資格を聞く調査があったため、その資格保持者は現地で活躍できると本気で考えていました。「よっしゃあ!やるぞ!」と仕事の休みを取り災害派遣に出向いたわけです。

 ところが、現地は大混乱していました。土砂をどけるための建築機器があるにもかかわらず、自衛隊の制度の問題で、せっかくの資格をもつ予備自衛官はブルドーザーもユンボも運転することができなかったのです。

◆陸上自衛隊での特殊資格登録がないと重機は使えない

 MOS(モス:Military Occupational Specialties):特技(自衛隊での取扱資格)と呼ばれる制度がこの壁となりました。自衛隊内の制度登録資格がないと、重機を自衛隊の隊員としては運転させられないのです。これは陸上自衛隊独自の制度のようです。

 隊員でさえなければ、免許があれば運転できるのに、自衛隊員としては運転を許可できないなどという制度に開いた口がふさがりません。

 制度を説明します。自衛隊のトラックを例にします。トラックを運転するには、中型免許が必要です。しかし、中型免許を取得しているだけの自衛隊員は、トラックを運転してはいけません。自衛隊の中での特技としてのMOS資格を登録してないと、いくら国家資格があろうがダメなのです。「手枷足枷」ってこれですね。自衛隊車両でよく見かける小型のトラックの運転に必要な特技が『初級装輪操縦(特技番号55373)』です。一般の普通免許以外に、自衛隊員として自衛隊内の仕事で運転するためにはそれが必要なのです。2つがそろわないとダメなのです。

 特技と免許の両方をもつ自衛隊員よりも上手に建築機器を使える予備自衛官がいて、十分な重機があったにもかかわらず、彼らは運転を許されず、スコップで手掘り作業をすることになりました。

 さすがにこの制度は現場で問題となりました。しかも、指揮官によって認識が異なり、作業していいかどうかの方針が二転三転する大混乱だったようです。これを教訓に自衛隊内の制度が変わってくれればと思います。そもそも自衛隊は公務員であり、災害派遣時のような急を要する場合でも制度重視です。せっかく技能と志のある隊員が現場にいたのに、がんじがらめで使えなかったことが本当に悔やまれます。

◆自衛隊を縛る制度と憲法改正

 外から見るとこういった制度は「枷」にしか見えません。まるで、自衛隊を自由に動けなくするためにわざわざ存在するかのように見えてしまいます。この自衛隊を縛る法律や制度は、自衛隊が合憲ではないという認識をもとにできたものだと思います。

 自民党は2020年までに自衛隊を合憲とする憲法改正を目指しています。そのスケジュールで憲法改正をするためには、この臨時国会、もしくは次の年の通常国会には憲法改正の発議がなされないといけないはずです。来年度には皇位継承式典などの行事が予定されており、国民投票で使える日程は限られています。

 こうした自衛隊を縛る制度や法律が、一刻を争うはずの災害派遣現場でも自衛隊の力を削いでいます。憲法改正をやり遂げ、こういった制度の矛盾を一新できる時が一日も早く来ることを祈っています。<文/小笠原理恵>


【小笠原理恵】
国防ジャーナリスト。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰

このニュースに関するつぶやき

  • 自衛隊の下らない規制や制度はすぐに撤廃して欲しい。
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  • 自衛隊法を変えたらいいだけだと思うんだけど。国会議員の怠慢でしょう?wでも、重機があっておそこに人がいるかもしれないときは手作業してるよね。
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