『半分、青い。』風吹ジュンから『まんぷく』芦田愛菜へ 朝ドラのナレーションが果たす特殊な役割

25

2018年09月20日 07:31  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 10月1日にスタートするNHK連続テレビ小説『まんぷく』の“語り”を女優・芦田愛菜が務めることが注目されている。現在、14歳。朝ドラナレーション担当としては、史上最年少での抜擢だ。


【写真】菅田将暉ら『まんぷく』追加キャスト発表


 ところで、朝ドラのナレーションといえば、他のドラマとは異なり、ちょっと特殊な作品との関わり方・位置づけにある。


 例えば、現在放送中の『半分、青い。』の場合はかつてないほどにトリッキーで、第1回放送ではまだ胎児のヒロイン・鈴愛(永野芽郁)が「心の声」としてナレーションを担当。その後、同じ日に同じ病院で生まれた律(佐藤健)にバトンタッチ。そこから、第1週で亡くなってしまった祖母・廉子(風吹ジュン)へと引き継がれ、「天から見守る祖母」としてフォローしたり、ツッコミを入れたり、ナレーターとして後から補足したりという役割を担うことになった。


 さらに、祖父・仙吉(中村雅俊)も大往生を遂げた後、ナレーションに登場。祖父母がWでナレーションし、夫婦で掛け合いまで見せるというレアケースに発展した。


 亡くなった家族が見守るようにナレーションを担当するパターンは、近年では他に『ごちそうさん』の祖母・トラ(吉行和子)や『べっぴんさん』の母(菅野美穂)、『ゲゲゲの女房』の「おばば」(野際陽子)などがある。とはいえ、これは近年の流行りというわけではなく、『あすか』(1999年〜2000年)で祖母を演じた有馬稲子も前半で他界した後、ナレーターとして家族を見守っていた。


 そもそも「祖母」を演じる役者がナレーションを担当するケースは、『ちゅらさん』(平良とみ)、『こころ』(岸惠子)をはじめとして、朝ドラには案外多い。いずれも「優しく懐が深く、ヒロインの理解者」であることが多いため、「見守る存在=ナレーション」として最適な距離感なのだろう。


 また、朝ドラには「女性の一代記」モノが多いだけに、ちょっと意外かもしれないが、ヒロイン自身がナレーションを担当するケースは、ごくわずか。


 近年では『あまちゃん』の能年玲奈、宮本信子、小泉今日子の3世代があったほか、『純と愛』の夏菜、かなり遡って『てるてる家族』の石原さとみ、『オードリー』の岡本綾など。そして、忘れてはならないのが、ヒロインの成長・加齢とともに役者が交代していった『カーネーション』だ。ヒロインの交代とともに二宮星、尾野真千子、夏木マリへとナレーションも引き継がれていった。しかも、ヒロイン自身が亡くなった後に、ごく普通の口調で言うナレーションの「おはようございます。死にました」には盛大に泣き笑いさせられたのは、今も忘れられない。


 「人間でないナレーション」という謎設定もときどき登場する。前述の『ごちそうさん』のトラは、死後、「ぬか床」としてナレーションを担当。また、『まれ』のナレーションは「魔女姫人形」というキャラ(戸田恵子)だった。


 この「魔女姫人形」のキンキン声や、締め言葉「ごきげんよう」でおなじみの『花子とアン』の美輪明宏など、強烈な個性を放つナレーションの場合、ときに「うるさい」「話に集中できない」という批判を浴びることもある。半年間毎日耳にすること、朝という時間帯ということもあり、クセがなく落ち着いたトーンのベテラン女優やNHKアナウンサーがナレーションを担当するほうが全般に好評だというのも、朝ドラの一つの特徴だろう。


 そもそも朝ドラは、新聞小説やラジオドラマなどをヒントにして誕生したもの。初期は文学性のあるナレーションを中心に据えるスタイルだった。そうした経緯を考えても、「忙しい時間帯に、耳で聞いてわかる」ことは朝ドラが大切にしてきた要素の一つでもあるのだ。


 さて、ここで大いに期待されるのが、『まんぷく』のナレーション・芦田だ。制作統括の真鍋斎氏は、その人選の狙いについて「一人の少女が、おばあちゃんから聞いた話を友達に話して聞かせているというような設定」と語っている。その点、芦田は幅広い世代に親しまれているし、滑舌の良さ、言葉の聞き取りやすさも文句なし。さらに、純粋さや清潔感、「個」を強調せず作品に溶け込む聡明さもある。


 安藤サクラと長谷川博己という、濃厚な演技を見せる実力派メインキャストの物語の語り手として、実に良いバランスなのではないだろうか。


(田幸和歌子)


このニュースに関するつぶやき

  • 大丈夫、天才ですから(*^◯^*)
    • イイネ!2
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(20件)

ニュース設定