佐藤健、『半分、青い。』律役と『義母と娘のブルース』麦田役で光った「静と動」

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2018年10月16日 00:02  サイゾーウーマン

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 賛否を呼んだ連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)が終了した。昭和末期から平成中頃という近過去を舞台にした本作は、1970年代生まれ向けの“新しい朝ドラ”として大きく注目された。ヒロイン・鈴愛の性格をはじめ、時間軸がポンポン飛んでいくこと、そして脚本家・北川悦吏子によるSNSでの積極的な発言など、物議を醸した問題作だったが、それでも最後まで盛り上がっていたのは、次から次へと登場するイケメンたちが魅力的だったからだろう。

 偏屈な少女漫画家・秋風羽織を演じた豊川悦司は再評価され、中村倫也、志尊淳、間宮祥太朗といった若手イケメン俳優たちは、カッコいいけど困ったところのある愛すべき男たちを好演した。中でも、最も重要な存在が、鈴愛の幼なじみで最後に結ばれることになる萩尾律(佐藤健)である。

 律は鈴愛と同じ日に同じ病院で生まれた幼なじみ。いつも鈴愛を心配していて、困ったときはすぐ助けに来てくれるという、少女漫画に出てきそうな理想の男の子だが、鈴愛も律も定期的に別の恋人をつくる点には驚いた。全話見終えた今となっては、収まるところに収まったという感じがするものの、当初は鈴愛と律がどうなるのか予測もつかなかった。いや、正確に言うと途中までは、「どうせ結婚するんだろう」と思っていたが、物語の途中で律が鈴愛にプロポーズした後に振られて、数年後に別の女性と結婚するという展開に。その後、鈴愛は涼次(間宮)と結婚した後に離婚し、同じく離婚した律と会社を立ち上げることになるのだが、文字通り紆余曲折の展開だった。

 そんな律を演じた佐藤健は29歳。高校生役を演じると知った時は心配だったが、もともと童顔で少年性が強い俳優であることもあってか、高校時代を難なく演じ、実年齢を追い越して30代となっても違和感がなかった。ポーカーフェイスで、一見すると何を考えているかわからないが、鈴愛に対する激しい気持ちを内に秘めている律は、佐藤が最も得意とするところで、集大成とも言える役柄だった。

『仮面ライダー電王』で身につけた動と静

 佐藤が大きく注目されたのは、2007年に放送された『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)だ。佐藤演じる野上良太郎は、“イマジン”といわれる怪物の力で戦う仮面ライダー電王である。良太郎には4体のイマジンが幽霊のように取り憑いていて、彼らが憑依すると良太郎の性格も変化する。普段の良太郎はナヨナヨとした気弱な男の子なのに、憑依されると男らしくなったり、軽薄になったりと違う性格に変化する。声こそイマジンを演じる声優のものだが、体の動きは佐藤の演技で、その都度、多重人格者のように違うキャラクターを演じていたことになる。

 当時は演技経験の少ない若手だったが、高校時代にダンスを習っていたこともあり、動きのキレは抜群だった。ダイナミックなアクションと、優しい男の繊細な内面表現という「動」と「静」、2つの演技をいかんなく発揮し、この二面性は佐藤の大きな基盤となっていく。

 激しい演技は、時代劇映画『るろうに剣心』や、死なない体をもった青年を演じた『亜人』で磨きがかかり、佐藤はスタントなしでアクションシーンを演じている。繊細な内面を抱えたナイーブな少年役は『Q10』(日本テレビ系)を筆頭に、さまざまな作品で見られ、佐藤のパブリックイメージでもある。そして、『半分、青い。』の律は、今まで演じてきた少年像の集大成と言える存在だった。

 つまり、心理表現は繊細だが、アクションは豪快という二面性こそが、佐藤の本領だが、演技面でもアクションシーンのような激しさを感じさせたのが、『半分、青い。』と同時期に放送されたドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)だ。

 本作はキャリアウーマンの女性・宮本亜希子(綾瀬はるか)が、血のつながらない娘を育てることになった10年間を描く物語で、佐藤が演じたのは、亜希子が働くことになるパン屋の店長・麦田章。麦田は何をやっても仕事が長続きせず、職を転々としていたダメ男で、家業のパン屋を亜希子と立て直すことで一人前の男に成長していく。

 麦田は、律のような繊細な青年とは真逆の、少しヤンキー要素の入った若者だ。脚本の森下佳子は佐藤が主演を務めたドラマ『天皇の料理番』(同)の脚本も担当しているが、こちらで演じた料理人を目指す若者・秋山篤蔵も、短期で気性の激しいやんちゃな青年だった。おそらく、アクションの時に佐藤が見せる激しさを感情表現に落とし込んだのだろう。

 律と麦田。同じ時期に真逆の役を演じた佐藤の振り幅の広さには驚くものがある。もしかしたら『仮面ライダー電王』の良太郎のように、イマジンが何体か取り憑いているのかもしれない。
(成馬零一)

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