「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ここは退屈迎えに来て』

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2018年10月21日 12:51  リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、ゴールド免許を持て余している“Paper Driver”大和田が『ここは退屈迎えに来て』をプッシュします。


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 山内マリコの同名処女小説を映画化した本作は、みんなの憧れの的だった“椎名くん”を柱に、キャラクターたちを交差させながら描く群像劇。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とはまた違った意味で、車に乗りながら2013年、2008年、2010年、2004年と時代が行き来し物語が紡がれていく。


 観初めてすぐ、地元なのでは、と思うくらい、車が進んでいく道脇の建物、自然の風景に見覚えがあった。だが、本作の撮影地は富山。廣木隆一監督は「今回は富山に限定した物語ではなく、“ある地方都市”として見えたらいいなと思っていたので、地方都市ならどこにでもあるようなロケーションを選びました」と明かしている。この映画の中には、高校の廊下で繰り広げられる日常や、上京したことがある人間と地元に残っていた者との会話のやりとりなど、どこか覚えがあるような瞬間をたくさん感じさせるシーンがいくつも挟まれていた。


 何者かになりたくて東京で就職したものの、10年経って何となく戻ってきた27歳の主人公“私”と、高校の同級生のサツキちゃん、新保くん、椎名くん、椎名くんの元カノの“あたし”には、同じ時間が流れている。そしてそれぞれにとって、その時間の中身は違う。上京していた者もいれば、地元に残っていた者、付き合っていた者、仕事を紹介してあげた友達、その時々で彼らには“椎名くん”との距離の変化もあった。“椎名くん”はという1人の存在に、周りの人物たちは、別々の意味の憧れや気持ちを抱いていた。相手との心の距離感や、相手に対する思いの変化は、“椎名くん”相手に限らずに日常茶飯事で起きていること。登場するキャラクターたちが、そのときに何を思っているのか自然と察せられ、時間や関係性、そして気持ちの変化を味わう楽しさを感じた。


 『SUNNY 強い気持ち・強い愛』など、青春時代に戻りたいなと思わせてくれる(同時にもう絶対戻れないという虚しさがこみ上げる)作品は多いが、本作が違ったのは、自分自身に置き換えてみたときに、記憶を緩やかに振り返らせてくれるような心地良さがあったこと。劇中に登場するいくつもの車に乗車して物語を巡りながら、自分自身の思い出もぼんやりと浮かんでくるような映画体験をご堪能あれ。


(リアルサウンド編集部)


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