JUJU、アルバム『I』を巡る長い旅の終わり 吉田羊も登場した“JUJUの日”武道館公演

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2018年10月23日 13:22  リアルサウンド

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 8月11日に富山でファイナルを迎えたホールツアーからおよそ2カ月、JUJUが再びステージに帰ってきた。大阪城ホールと日本武道館で行われる『-JUJU 15th ANNIVERSARY- JUJU TOUR 2018「I」ARENA追加公演』3本のうち、今日は武道館の2日目。自他共に認める最高傑作『I』の世界を再現するツアー、そのグランドフィナーレでJUJUは何を見せてくれるのか。満員のオーディエンスが見つめる中、午後6時半、期待に満ちた幕が開く。


(関連:『-JUJU 15th ANNIVERSARY- JUJU TOUR 2018「I」ARENA追加公演』写真


 オープニングはこれまでリリースされたオリジナルのアルバムアートワークに加え、映像を駆使してアルバム『I』のコンセプトをドラマチックに表現するもの。ファンクでロックなダンスナンバー「believe believe」が1曲目なのはホールツアーと同じだが、コーラス隊と弦カルテットの入ったバンドに、さらに3名のホーンセクションが加わったおかげで、体に伝わる音の豊かさと迫力が違う。白と銀とピンクのフリンジドレス、可愛いギャリソンキャップを頭に乗せたJUJUが、新たにセット入りした「What You Want」などアップナンバーの曲を、ダンサーと共に歌い踊る。爆音と共に金と銀のテープが打ち出され、まだ序盤なのにすでに盛り上がりは最高潮。ミラーボールが輝くダンスR&B調の「RISKY」など、アップテンポ四連発にフロアは総立ちだ。


「10月10日のJUJUの日に、みなさまと過ごせることを幸せに思います。今日は4月からのツアーの最終日になります。なんだか楽しい夜になりそうな気がしています」


 精魂こめて作り上げたアルバム『I』のコンセプトをあらためて解説し、「今の自分にできることはいろんな“アイ”の歌を歌うことです」と締めくくるJUJU。逢、藍、哀、相、曖、I、そして愛。続いて歌った「あの夜のふたり」のように、長い時を経て再会した大人の濃厚なラブストーリーや、忙しく過ごす日々の中で愛を探す女性心理を描く「Love Is Like」など、JUJUが楽曲にこめた思いは一色では収まらない。幸せ、孤独、喜び、悲しみ、様々な感情が混ざった複雑で美しい色合いが、JUJUの描く大きなアイの世界だ。


 ドラムとベースが叩き出すファンキーなリズムと、流麗なストリングスが溶け合う「いいわけ」のふくよかなグルーヴが、武道館いっぱいに響き渡る。JUJUの呼びかけでオーディエンス全員がコーラス隊になった「Let It Flow」では、手拍子と合唱で会場がひとつになる。ここまででちょうど1時間。バンドが奏でる贅沢な音、オーディエンスのかもしだすハッピーでリラックスしたムード、バランスは絶妙だ。


 中盤にはホールツアーと同じく、JUJUの重要なルーツのひとつ、ジャズをフィーチャーしたコーナーがあった。12月5日にリリースが決定したニューアルバム『DELICIOUS〜JUJU’s JAZZ 3rd Dish〜』の完成を記念して、「New York New York」「Fly Me To The Moon」「My Favorite Things」「Remember (The Good Times)」と、レモンイエローとゴールドの衣装に着替えてスタンダードの名曲を歌うJUJUは見るからに楽しそうで、ご機嫌な4ビートに乗ってステップを踏むと、武道館が一気に親密なジャズバーの空気に変わる。「New York New York」のエンディング、豊かな声量を生かした超ロングトーンも素晴らしかった。「ジャズは私(I)にとって自分を作るための重要なファクター」と語るJUJU。彼女のライフワークと言ってもいい最新ジャズ・アルバム、ぜひチェックしてほしい。


 メンバー紹介を兼ねたバンドのインスト演奏を経て、ライブはいよいよ終盤へ。黒いシースルーのロングスカートで、ステージに組まれた階段状のセットの下に立つJUJU。そして階段上に現れた天女のような白いドレスの女性は……そう、特別ゲストの吉田羊だ。アルバム『I』に収録された平井堅の提供曲「かわいそうだよね (with HITSUJI)」で実現したコラボレーションが遂にライブで見られるとあって、この日一番の大歓声が二人を包む。そして彼女の歌を生で聴いた感想は……「本当に歌が巧い」。舞台出身の女優らしい確かな発声、表現力、完璧な音程、低音域の効いた魅力溢れる声。お互いの衣装を「神々しい」(JUJU)、「布面積が少ない」(吉田)と品評しあったり、2階席に手を振って話しかけたり、初武道館とは思えない自然なたたずまいがとても魅力的。これが最初で最後とはもったいない。「きっとまたこういう機会があると思うので」というJUJUの言葉を信じて、近い将来の再共演を期待しよう。


「ここで、私にとって大きなターニングポイントになった曲を歌います。この曲で私のことを知ってくださったという方も多いかもしれません」


 ライブはもうあと少し。ここでJUJUは、ホールツアーではセットリストになかった大事な曲を歌ってくれた。2009年の大ヒット「明日がくるなら」を、序盤はピアノとストリングスで静謐に、後半はドラムやウッドベース、ギターを加えたアコースティックグルーヴでしなやかに。思い出の名曲を新しいアレンジで蘇らせたあとは、「東京」「あなたがくれたもの」という最新バラード名曲の二連発。スクリーンに短編映画のようなミュージックビデオを映しながら歌った「東京」がせつない涙を誘うバラードなら、小田和正の提供曲「あなたがくれたもの」は温かい感動の涙を呼ぶバラード。JUJUのバラードにはいくつもの涙があり、その涙にはいくつもの人生のストーリーが隠れている。


「みなさんに、デビューから14年分の感謝を込めたラブレターをアルバムに入れました。受け取っていただけますか」


 ラストチューンは、JUJUの手描きの歌詞をスクリーンに流しながら歌うロックバラード「I」だった。総勢14名のバンドが奏でる音に乗り、日本武道館の高い天井からハートをかたどったいくつもの紙片が美しく舞い落ちる。〈あなたと歩いてゆきたい〉−−。ラスト一節を歌うJUJUの声が涙で詰まる。すかさず、それを支えるように自然発生で湧き起こった大きな拍手。それはとても美しい、ステージの上と観客席とが一体となった素晴らしいシーンだった。


「アンコールに呼んでいただけなかったら、どうしようと思っていたのですが。呼んでいただけたので、新曲を歌いたいと思います」


 アンコール1曲目は東京メトロ「Find my Tokyo.」CMタイアップソングで、JUJUがデビュー15周年イヤーに入って初の新曲となる「メトロ」だ。JUJU×松尾 潔×小林武史という強力なトリオによるこの曲は、少女から大人の世界へ入り込む時期の繊細な感覚をみずみずしく描く歌詞、ゆったりと流れるリズム、ジャズの香りがするホーンの音色と、聴くほどに味わいの増すタイプの曲。今後、どんなふうにライブで成長していくかが楽しみだ。続いて強力なダンスナンバー「PLAYBACK」でもうひと盛り上がりすると、いよいよ残すはあと1曲。


「今日でツアーは終わりますが、また来年お会いできる日まで、今日のことを憶えていていただきたいと思います」


 この日の20曲目となった「YOU」は、これまで自分を支えてくれたすべての人に贈る感謝のラブレターという意味で、「I」と強く響き合う、せつなさよりも未来への明るい希望を強く感じるバラード。およそ2時間40分を歌い切ったJUJUの声は最後まで強く、しなやかで、時になまめかしく、時に癒しに満ち、そしてどこまでも美しかった。


 アルバム『I』を巡る長い旅はひとまずここで終わるが、すでに来年へ向けてJUJUは動き出している。12月にはジャズアルバムをリリースし、来年6月から10月にかけて全国ツアーを行うことも発表された。デビュー15周年を迎えたJUJUの歩みは力強く、さらなる光の中へと続いていくだろう。(宮本英夫)


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