「いつか土漠に雨の降る」も異知性とのコンタクトを扱った作品だが、うってかわってオーソドックスなスタイルだ。南米の高地に棲息する齧歯類ビスカチャが謎を解くカギとなる。
「Yours is the Earth and everything that's in it」は、AIと仮想現実が発展・普及した世界で、その波に乗れずひっそり暮らす村のありさまを描く。扱われる状況やテクノロジーは現代的だが、小説のたたずまいとしては50〜60年代、F&SFやギャラクシーに掲載された良質な短篇SFの匂いが感じられる。
表題作「わたしは孤独な星のように」は、シリンダー型の宇宙コロニーが舞台。そのコロニーは人口減少によって滅びつつある。寂寥感が全篇に立ちこめているが、それは絶望ではなく、静かな安寧とさえ呼べる。わたしは亡くなった叔母を弔うため、叔母の友人レタリアとともに小さな旅に出た。その経緯が大きなドラマもなくカタルシスもないまま、淡々と語られる。ゆるやかに詩情が流れる佳作。ヴァンス・アンダール「広くてすてきな宇宙じゃないか」を思いだした。
(牧眞司)