「野球が大好き→上手くなりたい」と子どもが思うために必要なこと

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2024年10月05日 20:01  ベースボールキング

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9月11日に初めての著書となる『弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由』(辰巳出版)を出版した元東北楽天ゴールデンイーグルスの聖澤諒さん。本の中では現在コーチとして指導している楽天イーグルスアカデミーのことにも触れています。そんな聖澤さんに子どもを指導しているなかで感じていること、子どもが野球を好きになるために保護者や指導ができることなどについて、お話を伺いました。(撮影=黒澤 崇/提供=辰巳出版)



まずは自分の体を上手く動かせるようになること。そこから意識
——聖澤さんの少年時代と今の時代の子ども達、どんなところに違いを感じますか?

野球の練習中にあまり声が出ないことですね。僕の子どもの頃は、例えばノックの時はノッカーに対して大きな声で「お願いします!」「さぁこい!」みたいな声を出していました。でもいまはノックを無言で受ける選手や声を出しているのか聞こえないような小さい声だったり。彼等が所属しているチームを覗いてみると、アカデミーで声を出せていない子も一生懸命に声を出しているんですよね。

——アカデミーでは学校も違う、チームも違う子達が週に1回顔を会わせる場でもあるので、子ども特有の恥ずかしさという部分もあるのかもしれませんね。

それもあると思います。でもやっぱり野球における声の重要性を理解できていないことが原因のような気がします。ノックを受けていれば守備は上手くなる。上手くなるのに声は関係ない。つまり声を出すことと野球が上手くなることの繋がり、関係が理解できてないのかなと思います。

——令和の時代の子ども達を指導する上で意識していることや苦労していること、逆にやりやすさを感じていることはありますか?

チームに所属している子、していない子。将来は強豪高校やプロへ行きたいという子もいれば、楽しいから来てくれている子。30人のクラスであれば30人それぞれに目標や目的があって、それが必ずしも一つの方向を向いていないことが難しいところですね。目的や学年などに応じてクラスは別れていますが、同じクラスの中でもいろんな子がいますから。

——今の子ども達の運動能力はどのように感じていますか?

かなり落ちていると思います。頭の中で考えたことを体で表現する、反応することが遅い。思ったように体を上手く動かせない生徒が多い。スキップをすると手と足が一緒に動いてしまったり、ステップしてボールを投げることができない子が多いですね。思ったとおりに体を動かせないから、「こういうふうにバットを出してごらん」「こうやって動いてこうするんだよ」と言ってもなかなか上手くできないですよね。
運動神経が昔よりもかなり落ちていると思うので、まずは自分の体を上手く動かせるようになること。そこから意識して教えないといけないと思っています。
「野球の練習ができる場所がない」と決めつけない
——キャッチボールのボールが捕れない子、トスバッティングのボールがバットに当たらない子もいると思います。そういう子には聖澤コーチはどんなアプローチから入りますか?

キャッチボールは、最初はグローブも使わずに近い距離からトスした柔らかいボールを避ける練習から始めます。左右に避けたり、ジャンプしたりしゃがんだりして。次はそのボールを掌に当てて落とす練習。ボールに対する怖さもあると思うので、ボールも体の正面ではなくて体の右側、左側に投げるようにします。こういった段階を踏んだ練習を10球1セットのようにして行います。
キャッチボールのボールが捕れない子は遠近感だったり、ボールがどの辺に飛んできているのか、どこにグローブを出せば良いかがよく分かっていないと思うので、その辺をもう少し簡単にしてあげるイメージですね

——バッティングはどうですか?

バットは細くて重たいので、まずは太くて軽いプラスティックのバットで打つことから始めます。バットのヘッドは重たいですから、(小さい子や初心者は)振ろうと思ったときにバットが下がってしまってボールの下を振ってしまうケースが多いんです。でも軽いプラスティックのバットで振らせると、自分のイメージ通りにバットを振ることができます。ですので、当たらない子には太いプラスティックのバットで置きティーを打つことから始めますね。

——公園で野球もできない、壁当てもできない、家の前で素振りもできない。そんな環境の子どもも多いと思いますが、そんな環境に「野球大好き聖澤少年」がもし住んでいたら、毎日どんなことをしますか?

例えば家の中で親に卓球ボールやペットボトルの蓋を投げてもらってそれを片手でキャッチしたりとか。丸めた新聞を投げてもらって打ったりとか、仰向けになって天井に向かってボールを投げてキャッチしたり。公園や道端で練習ができなくても「上手くなりたい」という意識があれば、いろんな練習を考え出せると思うんです。だから家の前で素振りができない、壁当てができる場所がないとか、そういうことを言い訳にしない。野球の練習ができる場所がないと決めつけないでほしいですね。

——発売された『弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由』を読みました。聖澤さんの小中学生時代のように「野球が大好き→上手くなりたい」と子どもが思うためには、指導者や保護者にはどんなことができると思いますか?

まずは「野球って面白いなぁ」という気持ちにさせることが第一歩だと思います。でも子どもよりも大人の方が勝ちたい気持ちが強かったり、「将来は強豪高校へ入れたい」という気持ちが先走ってしまったりすると、子どもは野球が好き、楽しいという気持ちになかなかならないかなぁと思います。
あとは練習でお腹いっぱいにさせないこと。「もっとやりたい!」というくらいで練習を終わらせることも大事かなと思います。そのほうが次の練習を楽しみにしてくれるようになりますし、家に帰ってから「バッティングセンターに行きたい!」みたいに自分で練習することにも繋がると思いますから。そうなったときに、大人はしっかり付き合って、サポートしてあげて欲しいですね。正解を押しつけるのではなくてヒントを与えて、子どもに考えさせてあげる。そんなふうにして寄り添って欲しいですね。(取材・ヤキュイク編集部/写真提供:黒澤崇)



【書籍情報】



「弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由」
辰巳出版
1870円

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