11月25日(月)の配信では、作家の青山美智子さんがゲストに登場。小説の執筆でいつも心がけていることを語ってくれました。
(左から)青山美智子さん、パーソナリティの新井見枝香
青山美智子さんは1970年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国し、上京。出版社で雑誌編集者を経て、執筆活動をスタートします。デビュー作「木曜日にはココアを」が第1回宮崎本大賞を受賞。「猫のお告げは樹の下で」で第13回天竜文学賞を受賞します。「お探し物は図書室まで」「赤と青とエスキース」「月の立つ林で」「リカバリー・カバヒコ」と、2021年から4年連続で本屋大賞にノミネートされています。
◆読者のために小説は書かない
新井:小説って受け取る側のコントロールが一切できないじゃないですか。読む人の気分とかによっても受け取り方って全然違ってくると思うし。そういうつもりで書いたんじゃないっていうようなことも弁解できなかったりするから、そういうことを気にして書いていたら何も書けなくなっちゃうんじゃないかなって思うんだよね。
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新井:そうなんだ!
青山:たとえば「なんだこれ?」と思われたとしても、その人の感想というか、それはそれで小説を読んだ意味はあると思うし、感想って変わっていくじゃない? 5年後に読んでみたら「こういうことだったのか」っていうのはよくあるよね。
新井:あるある!
青山:コントロールできないっていうのはもちろんそうで、だから私は狙わないようにしている。好きなように書いているので、好きなように受け取ってほしいって気持ちは常にあります。
◆新井からの感想が嬉しかった理由
新井:青山さんには作品の感想をつい送ったりするんだけど、相手が喜ぶだろうなと思って書いていないんですよ。登場人物たちをもっとも知る人と話がしたいだけなんだよね。
青山:感想をもらうことはストレートに嬉しい。しかも、感想がいつも変化球なんですよね(笑)。今回の新井さんの「人魚が逃げた」の感想は、「青山美智子が妖怪化してる!」だったの(笑)。
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新井:そうそう(笑)。感想は同じではあるんだけど、言い方は変えたよね。
青山:マイルドにして使い分けてくれているんだって思った(笑)。妖怪って表現は「妖精のようです」って言われるよりも100億倍嬉しかった。
新井:普段話をしていて、この言葉なら通じるかなって部分はあるかもしれないね。人によってはよくない言葉を使ってしまうこともあるし。
青山:新井さんが投げてきた方向から反れないように、私もその言葉を受け取れた気がする。だからめちゃくちゃ嬉しかった。
新井:よかった。そう言ったことも忘れてたよ(笑)。
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青山:今、書きたいものばっかりで肉体が追い付かない!
新井:すごい!
青山:どうしたらいいんだろう?
新井:時間が足りないって素晴らしいことだよね。小説って出すまでに時間がかかるもんね。
青山:そうなんだよ! 出してからもいろいろあるけど、私は小説を書かせてもらえているんだなって思うと、つらいこととか嫌なことが吹き飛ぶ。
悩んでも「私は小説を書くしかないんだな」と思うと、腹がすわるというか。プロデビューは47歳からだけど、貴重な経験を人生でさせてもらえているなって思う。
新井:まだまだ作品を読みたいね。
青山:私も長生きするから、みんなも長生きして読んでほしいなって思う。
新井:それが生きる理由になることも絶対にあるからね。
青山:時々考えるんだけど、「なぜ人は生きるのか」「どこまで生きるのか」に答えはないじゃない? 結局、その答えがこの世でもらえないんだったら、“生ききる”しかないんだなって最近は思っている。
前の自分は何があっても生き延びるって思っていたんだけど、今は“生ききる”って言葉が自分をすごく支えている。
新井:似た言葉のようで全然違うね。生き延びるだと、なんだか苦しいもんね。
青山:きっと生き延びさえすれば、次の手立てがわかると思っていたんだよね。今、こうして“生ききる”って思っているのは、どこかで吹っ切れたというか、“生ききる”って決めたら大丈夫って思えてくるんだよね。
新井:それで妖怪になったんだね(笑)。
青山:そう、妖怪に進化したんだよね(笑)。
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音声版「元・本屋の新井、スナックのママになる。」
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<番組情報>
番組名:元・本屋の新井、スナックのママになる。
配信日時:隔週月曜・10時配信
パーソナリティ:新井見枝香
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