石破政権内で、今夏の参院選に合わせて衆院選を行う「衆参同日選」論がくすぶっている。昨年10月の前回衆院選から間を置かず、自民、公明両党は次期衆院選の準備を進める方針で一致。背景には、24日召集予定の通常国会を少数与党で乗り切る道筋が描けないことへの焦りが透ける。
「今年は選挙の年だ。自公を中心に総力を結集したい」。石破茂首相(自民総裁)は7日、党本部で開かれた「仕事始め」に出席し、参院選と同時期の東京都議選にも触れつつ、党幹部にこう呼び掛けた。森山裕幹事長は続く役員会で「都議選、参院選をはじめ各選挙で確実に勝利を重ねる」と強調。同時に「衆院は常在戦場だと心しておかねばならない」と付け加えた。
衆院で過半数を失った自公にとって、参院の過半数維持は「最終防衛線」の位置付けだ。役員会後の記者会見で勝敗ラインを問われた森山氏は、与党で非改選と合わせた過半数の「死守」を標ぼう。「(有権者に)政治の安定こそ最も大事だと理解してもらう選挙にしなければならない」と力を込めた。
首相は昨年末の民放番組で、同日選について「これはある」と否定しなかった。7日の自公幹事長らの会談では、早期の衆院選を念頭に、両党の候補者調整を進めることで合意。自民側が提起したもので、森山氏は会見で同日選について「あるともないとも言えない」と含みを残した。
与党内では同日選を否定する声が多い。自民閣僚経験者は、派閥裏金事件の影響がなお残る現状を踏まえ、「やれるわけがない」と断言。公明関係者も「同日選だけは避けたい」と漏らす。
それでも衆院選の準備を急ぐのは、少数与党として臨む通常国会で2025年度予算案や重要法案の成立が見通せない中、内閣不信任決議案などへの対応次第で首相が解散権を行使する可能性が否めないためだ。自民幹部は「最後は首相の判断だ」と語った。
もっとも、前回衆院選から2カ月余りで首相が「伝家の宝刀」をちらつかせるのは、政権が苦境にあることの裏返しでもある。参院選の「1人区」で候補者調整を模索する立憲民主党や日本維新の会の動きを加速させる「呼び水」となるリスクもはらむ。
立民の野田佳彦代表は4日の年頭会見で、衆参同日選について「あってもおかしくない」と指摘。その上で「候補者擁立は常にやっていきたい」と意気込んだ。
自民党の仕事始めであいさつする石破茂首相(中央)=7日午前、東京・永田町の同党本部