夏の参院選のカギを握る野党候補の一本化に向け、日本維新の会が「予備選」の実施計画をまとめ、各党に説明を始めた。与党過半数割れを目標に据える吉村洋文代表肝煎りの提案だが、他の野党からは仕組みやスケジュールに冷ややかな声が上がり、実現できるかは見通せていない。
「もっとシンプルな方法にした方がいいんじゃないか」。維新の岩谷良平幹事長が24日、立憲民主党の小川淳也幹事長らに計画の内容を説明すると、立民側はこう難色を示した。
計画によると、予備選は全国に32ある改選数1の「1人区」が対象。情勢調査と比例代表得票数(昨年10月の衆院選)を基に各党に擁立可能な選挙区数を配分し、各党が候補者を立てたい選挙区を指定する。希望が重複した選挙区では情勢調査を再び行い、擁立する政党を絞り込む。情勢調査は候補者名ではなく党名で行うとしている。
維新が計画を公表したのは22日。維新と同様に一本化を目指す立民は「方向性は一致する」(野田佳彦代表)と当初前向きだったが、詳細が伝わると戸惑いが広がった。
懸念が集中するのが予備選の仕組みだ。幹部の一人は「この方法では候補者の知名度が反映されない」と指摘。別の幹部は「立民の候補者が減りかねない」と語り、重鎮の一人は「予備選で負けた人の無所属出馬を阻止できない」と話す。
スケジュールを問題視する声も多い。維新の想定では全1人区で擁立する政党が固まるのは5月14日。野田代表は24日の記者会見で「参院選は半年かけないと浸透しない。遅い」と断じた。
国民民主党も懐疑的だ。維新は24日に国民民主にも計画を説明する予定だったが、直前に延期になった。国民民主幹部は維新の計画で一本化した候補を「野党統一候補」として扱わないとされている点を挙げ、「競り負けた政党の応援が得られないならメリットはない」と突き放す。
維新の計画には党内からも「絵に描いた餅」とやゆする声が上がる。ただ、野党候補一本化に失敗すれば与党を利するのは確実だ。維新の前原誠司共同代表は24日の会見で「柔軟に他党の意見も聴き、多くの政党に参加してもらえるものにしたい」と述べ、粘り強く調整を続ける姿勢を示した。