政府が、2025年の戦後80年の節目に首相談話を出すかどうかに注目が集まっている。公明党は談話で平和国家としての姿勢を示すべきだと主張するのに対し、自民党内では保守派を中心に反対論が根強い。石破茂首相は何らかのメッセージを発信することに意欲を持っているとされるが、熟慮を重ねる意向だ。
「現時点で新たな談話を発出するかは決定していない。今後の対応はこれまでの経緯を踏まえ、さまざまな観点から考えていきたい」。林芳正官房長官は24日の記者会見でこう語った。
戦後50年には当時の村山富市首相が、60年には小泉純一郎首相が、70年には安倍晋三首相がそれぞれ談話を公表した。このため、「平和の党」を看板に掲げる公明党の斉藤鉄夫代表は、「戦後80年の節目の年に談話を出すべきだ。平和国家を目指す日本として出す意義がある」と訴えている。
70年談話で、安倍氏は「謝罪外交」に終止符を打つことを強く意識。2月に有識者会議を設置して本格的な議論を始め、村山談話にある「侵略」「植民地支配」「反省」「おわび」のキーワードは盛り込みつつ、次世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と明記した。
自民党内には安倍談話が一つの区切りだとして、新たな談話を出す必要はないとの意見が少なくない。とりわけ保守派は、80年談話を出すことで、安倍氏による70年談話を塗り替えるのではないかとの警戒が強い。旧安倍派の一人は「蒸し返す必要はない」と強調した。
80年談話公表への賛否が交錯する中、対応次第では不安定な政権基盤がさらに揺らぐ可能性がある。石破政権は当面、25年度予算案の年度内成立に全力を挙げるとみられ、政権幹部は「その先のことはまだ幹部内で議論できない」と漏らした。