東京2025世界陸上スペシャルアンバサダーの織田裕二「世界陸上のおかけで人を素直に褒められるようになった」

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2025年02月11日 07:20  webスポルティーバ

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織田裕二さんインタビュー

【最初は僕も「なんで俺?」と思った】

 その深い陸上愛は変わらない。

 
 今年9月、日本では18年ぶり、東京では34年ぶりとなる世界陸上(東京2025世界陸上)が開催される。同大会のスペシャルアンバサダーを務める俳優の織田裕二さんは、注目選手をこう語る。

「北口榛花選手(女子やり投げ)、サニブラウン アブデルハキーム選手(男子短距離)、橋岡優輝選手(男子走り幅跳び)、田中希実選手(女子中長距離)など日本人選手に期待しているのは皆さんと一緒。女子100mハードルにも強い日本人選手が3、4人いて、メダルに絡めるかも、と夢が膨らみます。

 男子棒高跳びの世界記録保持者で、パリ五輪で連覇を果たしたアルマンド・デュプランティス選手(スウェーデン)は、何十年後まで抜けない新記録を東京で出しちゃうかもしれない。女子中長距離のベテランのシファン・ハッサン選手(オランダ)とか、女子400mハードルのシドニー・マクラフリン選手(アメリカ)も気になったり。

 
(元難民の)ハッサン選手はその生き様を知ると、引退したあとにどこで何をするのかまで気になってしまう(笑)。マクラフリン選手は別種目の200mとか100ⅿに出ても勝ってしまうんじゃないかってほどの可能性を感じます。魅力的な選手はたくさんいますよ」

 
 1997年アテネ大会から2022年オレゴン大会まで、13大会、25年間に渡ってTBSの中継のメインキャスターを務めた織田さん。その情熱あふれる語り口と親しみやすいキャラクターで視聴者の心をつかみ、大会の認知度アップに貢献してきた。23年の前回ブダペスト大会の際には、そんな織田さんの不在を嘆く声も聞かれたが、地元開催の今回は、以前とは異なる立場で世界陸上に帰ってきた。


 今でこそ織田さんの陸上好きは広く知られる。だが、97年のキャスター就任時点では、興味も知識もまったくなかったと振り返る。それなのに、なぜオファーを引き受けたのだろう。

「僕も『なんで俺?』って思いましたし、スタッフにもそう言いました。そうしたら、『陸上ファンではない人にも中継を見てもらいたい。だからこそ(陸上に興味のない人に)やってほしい』と言われたんです。

 ただ、視聴者にどう伝えればいいかがわからないので、それぞれの国の事情から選手の詳細なプロフィールまで(TBSの)勉強会で教えてもらって、自分が面白いと思ったことをそのまま伝えられればと思ってやってきました。それでまさか25年もやることになってしまった(笑)」

【陸上競技を知らないからこそ全競技を一生懸命見る】

 当初は、門外漢である織田さんのキャスター出演に対して一部で批判的な意見も聞かれた。だが、その喜怒哀楽を隠さないスタイルはいつしか視聴者の心をつかみ、時には「地球に生まれてよかったー」(07年大阪大会)といった名言も生まれた。

 
「最初の頃はヨーロッパなど海外で行なわれている大会を、日本の深夜に赤坂のスタジオでやっていましたから。深夜ラジオのオールナイト番組じゃないですけど、『これ、誰が見るの? このへんで何かやっておく?』みたいなノリもありました。

 それが(07年大阪大会より)現地から中継するようになってからは、今まで見られなかったカメラに映らないところも伝えたいと思い、体が空けばサブトラックをのぞいたり、選手に話しかけてみたり、まったく別物になりました」

 ただ前のめりなだけではない、中継に臨む真摯な姿が共感を得たのだ。

「(陸上競技を)知らないから全競技を一生懸命見るんですよ。毎回こんな長時間テレビ(モニター)を見たことないぞってくらい見る。たとえば、4×100mリレー。もう注目選手だらけで、8人同時に走られても一度に全員を見られないのでまったくわからない。だから、本当は10回見たいけど、最低3回はリプレイしてほしいとスタッフに言ったり。

 どうして陸上にハマったのか? 毎回見てると、あの選手は少し走り方が変わったとか、何か気づくことがあります。それを専門家に伝えると、『わかります? コーチが変わったんです』と教えてくれ、すると、また見えてくるものがある。25年もやってきて、選手のデビューから引退、コーチになった姿を見て、その選手たちの背景まで知ってくると、それってもうドラマ。だから、面白くないはずないですよね」


 見れば見るほど、回数を重ねるごとにハマっていったわけである。


「選手を紹介するにしても、ただ均等に紹介するだけでは陸上ファン以外に刺さることは難しい。ただ速い選手は誰か、になってしまうので。そういう意味で、実際に選手を取材させてもらい、的を絞って、選手のもうひとつの顔などを突っ込みながら紹介してきたのがよかったのかもしれません。海外の選手は日本の役者から取材されていたわけで、ずいぶん珍しがられていたと思いますが(笑)」

 22年オレゴン大会限りでのキャスター卒業が決まった時は「寂しかった」としながら、「体力的な限界も感じていて、ホッとした思いもあった」と話す織田さん。あらためて、「織田さんのキャスター退任を残念に思っていたファンは多いです」と伝えると、「良かったー。いなくなってホッとしたって言われなくて(笑)。でも、なかには織田裕二がいなくなってせいせいしたっていう人もいたんじゃないですか」と愛嬌たっぷりの笑顔を見せた。

【どれぐらい速いとか、テレビでは伝わらないところがある】

 それまでの人生において、人付き合いを豊富にはしてこなかったという織田さんにとって、陸上選手と触れ合うことで人としての気づきもあった。


「同じ業種の人間とは、あまり(プライベートを)知っちゃうと仕事現場でやりにくくなるから距離を置いているようなところがありました。特に、若い頃はつっぱったり、斜に構えていた部分もあったり。でも、アスリートとはかぶらないし、世界陸上のおかげで人を素直に褒められるようになりましたね」

 キャスターではなくスペシャルアンバサダーとして、東京2025世界陸上にはどのように関わっていくのだろう。

「主に、大会前にいかに盛り上げられるかでしょうか。前回、東京で世界陸上があったのは34年前ということで、たぶん僕にとっては(東京で見られる)最後。陸上でこれ以上の大会はない。どれぐらい速いとか、テレビではなかなか伝わらないところもあると思うので、ぜひこの機会に生で楽しんでもらえたら」

 スペシャルアンバサダーを務めるのは地元開催の今大会限り。今後の織田さんの世界陸上との関わり方も気になる。

「いや、もういいでしょ(笑)。東京で終わればちょうどいい。世界陸上は(午前中の予選から夜の決勝まで)1日が長いし、それが9日間ある。真剣に見ていないと、一瞬で『今、何が起こった?』って見逃しちゃうし。今後はスタンドでビールでも飲みながら、イェーイって言いながら見るのがいいかなと思ってます」

(終わり)

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