13日、ワシントンのホワイトハウスで記者会見に臨むトランプ米大統領(右)とインドのモディ首相(AFP時事) 【ワシントン時事】トランプ米大統領が、関税や非関税障壁の高い国・地域に相応の関税を課す「相互関税」の導入に乗り出した。13日のインドとの首脳会談では、米国の対印貿易赤字削減に向けた交渉入りで合意。他の貿易相手国・地域に高関税を突き付け、2国間交渉に持ち込む思惑も透ける。
相互関税は、関税率を各国に平等に適用するよう求める世界貿易機関(WTO)体制に背を向け、米通商政策の転換点になり得るとの指摘もある。
「インドに送られた米国の自動車には70%の関税が課され、販売するのはほとんど不可能だ」―。13日午後開かれた米印首脳会談後の共同記者会見。トランプ氏は、インドのモディ首相を目の前にしても容赦なかった。
2024年の米国の対印貿易赤字は約460億ドル(約7兆円)。WTOによると、23年のインドの平均関税率(加重平均)は12.0%と、米国の2.2%を大きく上回る。インド側は米国産石油・天然ガスの輸入拡大など米国への「お土産」を用意したが、トランプ氏の納得を得られなかった。
トランプ氏が相互関税を打ち出したのは7日で、正式決定は首脳会談の直前。関税を課す姿勢を明確にし、インド側に圧力をかける狙いがあったとみられる。
米政権は、貿易赤字が大きく、問題が多いと判断した国・地域から調査を進め、関税率を決めていく考え。規制や為替政策など「非関税障壁にも焦点を当てる」(米政府高官)という。国・地域ごとに規制緩和や市場開放などを迫ることになりそうだ。
WTOは、他国に認めた有利な税率を全ての国に適用する「最恵国待遇」を大原則に掲げる。しかし相互関税では、相手国によって異なる関税率を設定する可能性がある。米シンクタンク「大西洋評議会」のダニエル・ムレイニー氏は「関税賦課の手法を根本から変える恐れがある」と指摘している。