衆院予算委員会で質問を聞く石破茂首相(右)=17日午後、国会内 石破茂首相が2025年度予算案の今年度内成立を目指し、野党に歩み寄る姿勢を鮮明にした。教育無償化を巡る日本維新の会の要求を取り入れ、予算案を修正する方針を明言。週内の合意形成を視野に、調整を加速させた。立憲民主、国民民主両党との協議で隔たりが残る中、維新への秋波を際立たせ、両党の軟化を誘う狙いも透ける。
「予算を修正する方向で与党と相談していく」。17日の衆院予算委員会で、維新の前原誠司共同代表が国公私立高校の就学支援金11万8800円に設けられている所得制限の撤廃を求めたのに対し、首相は撤廃を確約した上でこう明言した。
維新は教育無償化と社会保障改革を予算案賛成の条件に掲げる。教育無償化を巡る与党と維新の協議では私立の支援金の引き上げ幅で溝が埋まっていないが、首相はこれについても引き上げに向けた調査実施を表明。社会保障改革でも、日本医師会の反対論が強い「OTC類似薬」の公的医療保険除外に関し「政党間の協議体を設けるよう党に指示したい」と踏み込んだ。
首相が「党内野党」と皮肉られてきた当時から、前原氏は気脈を通じる数少ない相手だった。首相から維新との調整を指示された自民の森山裕幹事長ら党幹部は、前原氏と水面下で接触し、一致点を探った。17日の審議では首相、前原氏共に手元のペーパーを丁寧に読み上げる姿が目立ち、事前の入念な調整ぶりをうかがわせた。
憲法に基づく予算案の年度内の自然成立を確定させるには3月2日までに衆院を通過させる必要がある。修正手続きを考慮すれば、週内が与野党合意の事実上のタイムリミットとの見方も強い。予算委後、自民、公明、維新3党の政調会長が会談。維新は続いて幹部会合を開催した。前原氏は首相の答弁に関し「一定の評価をする」と記者団に語った。
維新に比べ、立民への首相の姿勢は冷淡な印象が否めない。17日の予算委で質問に立った立民の野田佳彦代表は、首相在任中に予算の年度内成立を自民に阻まれたことが「トラウマ」だと振り返る一方、「報復したら切りがない」と予算案修正を要求。しかし、野田氏が「特に強く要求」した高額療養費制度見直しの凍結について、首相は「凍結すれば何が起こるのか。(見直さなければ)制度は持続困難だ」と突っぱねた。
一方、18日には所得税の課税最低ライン「年収103万円の壁」見直しに関する与党と国民民主の協議が2カ月ぶりに再開される。ただ、与党と維新の協議は妥結目前との見方が広がり、国民民主は「維新とまとまるならうちと協議しなくてもいいだろう」(幹部)と神経をとがらせている。
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衆院予算委員会で立憲民主党の野田佳彦代表(左手前)に答弁する石破茂首相(右端)=17日、国会内
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会談に臨む自民、公明、日本維新の会各党の政調会長ら=17日午後、国会内