取材会に出席したホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治代表取締役社長 3月4日(火)、2025年のF1開幕を前に、ホンダ、ホンダ・レーシング(HRC)、ホンダモビリティランド(鈴鹿サーキット)の3社合同による取材会が行われた。出席したのは、株式会社ホンダ・レーシングの代表取締役社長を務める渡辺康治氏とF1プロジェクト総責任者の角田哲史氏、ホンダモビリティランド株式会社の代表取締役社長である斎藤毅氏だ。
1964年にF1参戦を始めたホンダ。直近では2015年から始まった第4期の活動があり、2019年のオーストリアGPでの初優勝やブラジルGPでのワン・ツー・フィニッシュ、2020年のイタリアGP優勝、2021年以降のHRCとしての活動時期には2023年に22戦21勝という史上最高勝率を記録したことなどを振り返り、渡辺社長はホンダのPUがフェルスタッペンのドライバーズタイトル4連覇を支えたことを強調した。
今や世界一のハードウェアを決める技術開発の舞台とになったF1で、ホンダはF1マシンに取り付けられたセンサーから送られてきたデータを瞬時に栃木県のHRC Sakuraで解析し、マシンのセッティングに反映できるよう作業を行っている。またHRCではレース中にリアルタイムで行うデータ解析に使用するソフトウェアも自社で開発しており、世界最先端のデジタルの戦いにも参加している。
今回の取材会では、イギリスのミルトンキーンズにあるHRC UKの現状も明らかにされた。HRC UKはもともとHRD(ホンダ・レーシング・ディベロップメント)が使用していた建物。2021年まではバッテリー開発の一部と製造を行い、一時はレッドブルの施設となっていたが、再びF1パワーユニットの開発をHRC Sakuraで行うことになったため、レッドブルから買い戻し、今後はメンテナンスとトラックサイドサポートのベース拠点になるという。昨年にHRC UKとして設立し、今季からの本格稼働に向けてすでに必要な人材の雇用も終了したとのことで、2026年からのアストンマーティンとの提携においてもホンダF1の重要な拠点になる。
その2026年にはF1パワーユニットの技術規則が導入されるため、車体、PUともに大きく変わることになる。2026年仕様のPUは、ICE(内燃エンジン)と電気出力比率の割合が現行の8対2から5対5に変わることが特徴のひとつ。使用される燃料も現在のE10燃料(ガソリンに10パーセントのエタノール/バイオエタノールを配合した燃料)から変わり、ホンダは2026年から導入されるCNF(カーボンニュートラルフューエル/合成燃料)の義務化に向けて、アストンマーティン、アラムコ、オイルメーカーのバルボリン・グローバルと4社による技術協力協定を結んで開発を行っている。
そんなホンダにとって、2025年はホンダF1が1965年にメキシコGPで初優勝を挙げてから60年の節目の年となるとともに、レッドブル、レーシングブルズとの提携最終年でもある。「困難だからこそ挑戦する価値がある」と語る渡辺社長は、2025年シーズンに向けて「チャンピオン獲得、有終の美を飾るべく、最後まで全力で戦っていきます」とレッドブルとの最終年の意気込みを述べた。
一方で角田氏は、現行のPUに関して「ハードウェアの限界の確認については、もうさすがに出すようなものはない」と明かしつつも、「使い方の部分で言うと、クルマも変わるし、サーキットの環境も変わっていくので、本当の使い切りという意味でいうと『もっと使い切れるんじゃないか』という余地はあるので、全力を出し切ってレッドブルと有終の美を飾りたいです」とさらなるパフォーマンス向上の可能性を窺わせた。
また先日バーレーンで行われたプレシーズンテストについても言及し、「PUで確認しないといけないところは全部確認したし、チーム側も状況を把握できていると思っています」と満足のいくテストであったという。ただし角田氏は相対的な完成度については明言を避け、開幕戦が始まらないとわからないと慎重な姿勢も見せた。
2026年からのアストンマーティンとの提携に関しては、細かいところは明かせないと前置きをしつつ「定期的にミーティングをしながら、その時の進捗に合わせて(PUの)搭載方法や形とか、どういう性能が出るのかということを前提に議論して、再参戦決定後から技術的に練っているところです」と説明。なおその2026年のPU開発に関して角田氏は「新しいことをやるのは苦しいですが、エンジニアとしては楽しんでいます」と前向きに取り組んでいるということだ。
2024年シーズンの最終戦終了後、渡辺社長はレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表と、提携最終年はコンストラクターズタイトルを奪還することを話したと明かしている。HRCのF1活動の区切りとなる2025年シーズンのホンダ/HRCの取り組みに注目だ。
[オートスポーツweb 2025年03月04日]