石破茂首相(写真左)とトランプ米大統領 トランプ米大統領が日米安全保障条約を「不平等」との主張を2期目でも展開したことに、日本政府は警戒を強めている。日本側は「関税に続きディール(取引)を迫るための交渉材料になりかねない」とみており、トランプ氏の説得に注力する方針だ。
日米両政府はカナダで12〜14日に開かれる先進7カ国(G7)外相会合に合わせ、岩屋毅外相とルビオ米国務長官の会談を行う方向。岩屋氏は11日の記者会見で、トランプ氏の持論を念頭に「日米同盟の在り方、さまざまな国際的な課題に対する日米としての取り組みなどについて意見交換したい」と述べた。
中谷元防衛相とヘグセス国防長官は4月上旬にも東京で会談する見通し。日本側はこれらの機会を通じ、日本の防衛力強化の取り組みを説明し、同盟の重要性を確認したい考えだ。
トランプ氏は6日、安保条約について「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守らない」と述べ、不満をあらわにした。トランプ氏は既に北大西洋条約機構(NATO)を批判し、加盟国に大幅な国防費支出を要求していたが、日本も「対岸の火事」ではなくなった。
日米安保条約は5条で米国の対日防衛義務を、6条で日本による米軍への基地提供義務を定める。日米双方の果たす義務の性質が大きく異なることから「非対称的」「片務的」といった指摘は以前からあったが、再燃するのは必至だ。
トランプ氏は1期目の2019年6月、安倍晋三首相(当時)との会談でも「不公平な合意だ。われわれが攻撃されたとき、もし米国が彼ら(日本)を助けるなら、彼らも米国を助ける必要がある」と発言していた。
こうした米側の指摘に、日本政府は基地提供義務の意義を重ねて強調。石破茂首相は7日の参院予算委員会で「基地提供義務がどれほど重要な意味を持つか、米国の世界戦略にどれほど役割を果たしているか、話をしていかなければならない」と語った。
政府関係者は「日本では米軍の整備や修理を行うことができる。経済面でも日本に基地があることこそが、米国のこの地域での国益を支えている」と説明する。日本側は集団的自衛権行使を一部容認した安全保障法制を15年に成立させるなど、「切れ目なく互いに助け合う」(林芳正官房長官)関係を目指してきた。
石破氏自身も首相就任直前の昨年9月、米シンクタンクへの寄稿で、「対等な国」へと日米同盟を強化すべきだと表明していた。次回の日米首脳会談で同盟論が交わされるかも焦点だ。