1995年3月20日、神経ガスを使用した死傷者6000人以上の無差別テロが発生! 「地下鉄サリン事件」から30年、いまだに残る謎とは?

19

2025年03月20日 06:10  週プレNEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週プレNEWS

1995年3月20日、サリン事件に巻き込まれ、東京・営団地下鉄日比谷線神谷町駅構内から運び出され、路上で救護を待つ乗客

死傷者6000人を超す無差別テロが首都・東京で起きた! あれから30年。事件を知らない人も多くなり、記録も失われつつある。しかし、あの記憶を風化させてはいけない。だからこそ今、あえて「地下鉄サリン事件」を振り返る。

【表】オウム真理教に関する主な出来事

* * *

■無差別テロの目的は国家の転覆!

今から30年前の1995年3月20日午前8時頃。麻原彰晃を教祖とするオウム真理教の信者らが、東京・霞ケ関駅に向かう営団地下鉄(当時)丸ノ内線、日比谷線、千代田線の車両内で、猛毒のサリンが入ったビニール袋を先端を尖らせた傘で突き刺し散布。乗客ら14人が死亡、6000人以上が負傷した。

これが、いわゆる「地下鉄サリン事件」である。

『有田芳生の対決! オウム真理教』(朝日新聞社)や『追いつめるオウム真理教』(ベストセラーズ)などの著書があり、長年にわたってオウム真理教を取材してきたジャーナリストで衆議院議員の有田芳生氏が当時を振り返る。

「地下鉄サリン事件は、人類史で初めて都市部でサリンという猛毒がまかれた無差別テロ事件です。

サリンは第2次世界大戦前の36年にアドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツが開発した化学兵器ですが、殺傷能力が非常に高いということで実際に戦争で使用されることはありませんでした。

しかし、その後、イラン・イラク戦争末期の88年、イラクのサダム・フセイン政権がクルド人自治区で使用したとされています。

そんな化学兵器サリンを軍隊ではなく、宗教団体が製造・使用したということで世界中に衝撃を与えました」

オウム真理教はなぜサリンを使用した無差別テロを行なったのか。

「目的は国家転覆です。日本を占領しようとしていたんです。そのためオウム真理教は教団内に大蔵省、外務省、法務省、建設省、防衛庁、科学技術省などの、国と同じような省庁をつくっていました。地下鉄サリン事件で、霞が関を狙ったのも官僚に危害を加えたかったからでしょう」

では、なぜ国家転覆を計画したのか。

「オウム真理教は教団を批判し、被害者の会を組織していた坂本堤弁護士一家を89年に殺害しました。すると、その事件を隠さなければいけなくなる。当然、事件の捜査は始まっているわけですから、それをもみ消すには政治的な力を持つしかないと考えたわけです。

それで90年に『真理党』という政党をつくって衆議院選挙に教団幹部らを出馬させます。信者たちは一生懸命に選挙活動をしたけれども、結果は全員落選。そこで、落選した理由を考えなくてはならない。『落選したのは権力が票の操作をしたからだ』などという陰謀論を展開したわけです。

『権力が自分たちを攻撃している。だから、国家を転覆させなければいけない』ということになるわけです。

最初の事件を隠すために、もっと大きな事件を起こさなくてはいけなくなる。それがエスカレートしていって地下鉄サリン事件につながったということです」

■オウム事件についてきちんとした分析がない

でも、なぜ、そこまでエスカレートしていくのか。

「実は、なぜ教団が組織的に犯罪暴走行為をするまでに至ってしまったのかという分析は、いまだにきちんと行なわれていないんです。

今年は地下鉄サリン事件から30年ですが、20年たった2015年にジャーナリストの立花 隆さんが『文藝春秋』に『三月二十日』という文章を書いています。そこでは『オウム事件とはいったいなんだったのかと問われたときに、納得させられる説明はないような気がする』と言っている。

それから10年もたっているのに、いまだにわからないことが多い。

地下鉄サリン事件の実行犯になった人物は、東京大学や慶應義塾大学などを卒業した真面目で優秀で、世間でいうエリートと呼ばれる人も多くいたわけです。

彼らがなぜ、そういう世界に惹かれたのかということも解明されていない。日本社会で教訓化されていないんです。そのうちに30年もたってしまった。

また、今年3月7日に衆議院の法務委員会で鈴木馨祐法務大臣の所信表明があったんですが、30年という節目の年なのにオウム真理教とその後継団体アレフについての記述は、たったの2行でした。政府の認識もそれくらいのものなんです。

さらに先日、警察庁に地下鉄サリン事件の資料を見せてもらおうと思ったら、もう保存期間が過ぎたから廃棄してしまったというんです。

旧統一教会問題の風化が言われているけれども、オウム真理教問題も風化してきている。もっと真剣にカルト教団対策を考えないといけないと思います」

実際に対策はあるのか。

「フランスは01年に『反カルト法(反セクト法)』を作って、カルト認定された団体を公表していました(05年から公表を中止)。ただ、カルトの定義や認定は非常に難しい。

難しいからやらないというのではダメなんですが、まず、今回のように地下鉄サリン事件を風化させないためにメディアが情報発信を続けていくことが重要だと思います。そうしないと40年たったときには、さらに風化が進みますよ」

今年2月、東京都足立区で「地下鉄サリン事件風化防止条例」が成立した。地下鉄サリン事件を風化させない努力は地道にだが続いている。

今から30年前の3月20日、人類史で初めて、都市部でサリンという猛毒がまかれた無差別テロ事件が起こった。

そのことだけは、忘れないでほしい。

取材・文/村上隆保 写真/時事通信社

このニュースに関するつぶやき

  • 国家転覆?でコレか?頭悪いにも程がある、やるなら警視庁、陸自市ヶ谷、国会中心に永田町を同時にばら蒔けばかなりやれただろ?ホントにチキンクズ(笑)
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(17件)

前日のランキングへ

ニュース設定