「老後資金は2千万円、いや4千万円不足する」などの言説が飛び交い、お金の不安を抱える方が多いでしょう。ですが実際は、それほど心配しなくて大丈夫。それを伝えたくて『65歳からは、お金の心配をやめなさい 老後の資金に悩まない生き方・考え方』(PHP新書)を刊行しました。
そもそも老後2千万円問題は、2017年の家計調査で「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦無職世帯」の月約5万5千円の赤字が発端です。そのままの家計で95歳まで生きると、月5万5千円×12カ月×30年=約2千万円に赤字が膨らむという計算です。
ただデータは年ごとに変わります。たとえばコロナ禍の2020年は自粛の影響か月1千円ほどの黒字で、2023年は月約3万8千円の赤字。基となるデータが違うと30年分の試算は大きく変わります。
そのうえ、こうしたデータは世間の平均値で、わが家の実態を表しているわけではありません。
さらに、最近は働く高齢者が増えました。65〜69歳の男性の61.6%、60〜64歳女性の63.8%が働いているという調査もあります(2023年、総務省)。つまり、「高齢夫婦の無職世帯」が減る昨今、基準が時代と合っていません。
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ましてや「4千万円」は3.5%もの物価上昇率が20年続くという途方もない仮定に基づくもの。ありえない数字なのです。
私には、官民挙げて老後資金の恐怖をあおり“貯蓄から投資へ”誘導しているとしか思えません。
■医療費は夫婦で約200万円、介護費は1人約600万円
高齢者の多くは住宅ローンを完済した持ち家に暮らし、教育費も終了。生活費は、年金と少し働いた収入でまかなえるでしょう。
問題は医療費と介護費ですが、これらはさまざまなデータから平均値がわかります。医療費は高額療養費制度が利用できますから夫婦で約200万円、介護費は1人約600万円と考えましょう。夫婦2人だと1千400万円、余裕をみて、死ぬまで1千500万円あればOK。これなら、退職金などで用意できる家庭が多いのではないでしょうか。
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「年金の目減り」と恐れる方もいますが、年を重ねると使うお金が減るものです。すでに年金を受給中の世代は、今後、多少の目減りがあっても問題ないでしょう。
たとえ年金が「70歳から支給」になっても、経過措置を設け時間をかけて移行するはず。もうすぐリタイアという世代も大丈夫です。
それでも老後資金に困ったら、持ち家を売ればいいのです。相続したとしても、子どもは実家に住むでしょうか。家は大切な財産ですから自分のために使いましょう。
ただし、老後資金を危険にさらす落とし穴には注意してください。たとえばサブスク。利用頻度が減ってきたらすかさず解約を。また、健康食品やサプリに頼りすぎるのもNGです。孫の教育費支援も本当に必要かよく考えてください。
お金の心配を手放して、老後は「時間がある」というぜいたくを満喫してほしいと思います。
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