
女優の芦田愛菜の唯一の“弱点”ともいえる「子役イメージ」からの脱却をめぐり、ネット上で議論が起きている。子役イメージからの脱却に成功となれば、女優としての人気や評価の高まりに拍車がかかりそうだが、業界内ではどのように見られているのか。業界事情に詳しい芸能記者が解説する。
芦田が「脱子役イメージ」が話題になったきっかけは、先日開催された「第48回日本アカデミー賞」の授賞式。映画『はたらく細胞』の演技で優秀助演女優賞を受賞した芦田は、高級ブランド「ジョルジオ・アルマーニ」の黒のロングドレスで登場した。
ドレスはシンプルながら首元にあしらわれたリボンがアクセントとなり、品のあるシックな雰囲気と華やかさを兼ね備え、大人っぽい魅力を引き立てていた。これに対して、ネット上の視聴者から「愛菜ちゃんがこんな大人っぽいドレス着こなせるようになって感慨深い」「中身は言わずもがな、 外見も大人っぽくなって素敵すぎる」「愛菜ちゃんが美しい大人の女性になって感動」などと称賛コメントが相次いだ。
芦田は昨年11月にDior(ディオール)の香水のPRに起用された際、総額100万円超えのディオールアイテムを着用したビジュアルなどが公開されたが、ネット上では「愛菜ちゃんにハイブランドは似合わない」「子役時代の印象が強すぎてディオールはイメージ違う」といった批判的な意見が目立っていた。
芦田は好感度が高く、慶応義塾大学法学部に進学するなど才色兼備でタレントとしても優秀。しかし、この「子役イメージ」の強さが唯一の弱点といえるものだった。女優としてもタレントとしても、子役イメージを引きずったままだと、活動や役柄が制限されてしまうからだ。
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だが今回のハイブランドのドレス姿の好評ぶりを見ると、いよいよ本格的に「脱子役イメージ」を果たし、大人の女性への階段を上っていきそうな気配だ。ただ一方、ネット上では「まだ子役時代の印象があるから大人っぽいドレスは違和感」「もっと可愛いドレスがいいと思う」といった声も根強くあり、本当に子役イメージを払拭できたのかどうかで議論が起きている。
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芦田愛菜の業界評価
そもそも芦田は、女優として業界内でどのように評価されてきたのか。業界事情に詳しい芸能記者はこう語る。
「3歳で芸能活動を始め、2009年に子役としてデビュー。翌年の日本テレビ系ドラマ『Mother』での子役離れした熱演で『第65回ザテレビジョンドラマアカデミー賞』などの新人賞を総なめにし、2011年の『江〜姫たちの戦国〜』(NHK)で大河ドラマデビューを果たした。同年に日本テレビ系『さよならぼくたちのようちえん』で日本のテレビドラマ史上最年少で初主演を飾り、さらに同年のフジテレビ系『マルモのおきて』でゴールデン帯の連続ドラマ史上最年少で主演を務めて人気を決定づけた。
当時から子役然とした妙にこなれた演技ではなく、自然体で役になりきり、そこにあざとさがないところが他とは一線を画していた。その後も2012年に映画『うさぎドロップ』と映画『阪急電車 片道15分の奇跡』で『第54回ブルーリボン賞』の新人賞を史上最年少で受賞するなど快進撃が続き、2013年には映画『パシフィック・リム』でハリウッド進出。恐怖で泣き震える演技の迫力はアメリカでも高い評価を受け、同作を手がけたギレルモ・デル・トロ監督も『恐ろしいほどの上手さ』『私が仕事をした最高の役者の一人』と絶賛した。
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中学生以降は学業優先で仕事をセーブするようになり、出演作選びがより慎重に。NHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』のナレーション、主演映画の『星の子』(2020)や『メタモルフォーゼの縁側』(2022)、第48回日本アカデミー賞の優秀助演女優賞を獲得した『はたらく細胞』(2025)などで強い印象を残し、中でも2023年にメインキャストの鵜久森叶を演じた日本テレビ系ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』でのリアルな演技は素晴らしく、同世代の実力派俳優たちが多数出演する中でも存在感が際立っていた。共演者の一人は芦田の演技について『全く熱量が落ちることなく、一つひとつの芝居に全力で挑んでいるのが伝わってきた』と絶賛。真摯に役と向き合う姿勢が、ちゃんと演技にも活かされているのが強みだろう」
「脱子役」はすでに成功か
脱子役イメージについては、業界内では「すでに成功した」との見方が強いという。あどけなさの残ったルックスの影響で「かわいい愛菜ちゃん」のイメージが抜けきれないように見えるが、女優として、タレントとしての彼女はもう成長済みだというのだ。前出の記者が言う。
「『マルモのおきて』でブレイクしてからバラエティ出演が増えた芦田は、年相応の無邪気さと可愛らしさでお茶の間の人気者になったが、早くからしっかりとした自我を持っており、5歳で『Mother』のオーディションを受けた際には、セリフの読み合わせや質疑応答に他の子役にはない個性があったという。中学・高校と成長するにつれて取材を受ける機会が増えたが、芦田の的確な回答と落ち着き払った立ち居振る舞いは業界内では有名で、それが嫌味にならず、しっかりとした考え方に裏打ちされていることから評判も良かった。
その背景には、小さい頃から読書家で、それを“お勉強”としてではなく、娯楽として楽しむ教養の高さや、早くから芸能界に携わったことで育まれた責任感がある。そんな芦田の魅力を世間に知らしめるのに一役買ったのは、MCを務めるテレビ朝日系バラエティ『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』だろう。この番組で芦田は、特定の分野に詳しい一般の少年・少女たちの魅力を引き出しながら、サンドウィッチマンと共に和やかに番組を回している。そつなく振る舞うのではなく、時に天然っぽい素の表情で親しみやすさを出しつつ、教養の高さや育ちの良さも垣間見せるところが、視聴者の心をつかんでいる。
このように着実に成長を続けているからこそ、スムーズに脱子役ができた。慶応義塾大学法学部政治学科に在学中で、今年から国連開発計画の国内親善大使に就任したが、政治色を表に出すことがほとんどないのも親しみやすさにつながっている。子役のイメージを引きずることなく、大人の女性へと進化を続けている芦田が、大学を卒業して仕事に専念するようになったとき、どんな作品に出演するのか。決して時流や周囲に流されることなく、自分の信念を貫いた役選びをするはずで、期待はふくらむばかりです」
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オリコンが3月に発表した毎年恒例の「第18回 男性が選ぶ恋人にしたい有名人ランキング」では、吉岡里帆や浜辺美波、今田美桜ら上位陣が固定化されているなか、芦田が初のトップ10入り(10位)を果たした。これも視聴者に「大人の女性」として認められ始めている証拠で、今後どのような女優に成長していくのか楽しみだ。
(文=佐藤勇馬)