インタビューに答える東大大学院の渡辺努教授=5日、東京都文京区 ―日銀による異次元緩和の評価は。
景気や雇用にそれなりの効果はあったが、本丸の2%の物価目標は達成できず、失敗だった。出発点の2013年時点で、物価も賃金も上がらないのが常識として根付き、崩せなかったのが大きな要因だ。日銀がもっと早く2%物価目標を導入していれば、より簡単に賃金や物価の上昇を実現できたのではないか。
―解除のタイミングは適切だったか。
植田和男総裁の就任から1年近くかかった。少しゆっくり過ぎた印象だ。金利引き上げは大きな混乱なくできているので、もう少し早めに始めてもよかった。
―今後の金融政策は。
今後1〜2年で、物価上昇率やインフレ予想が2%程度で定着し、実質賃金も安定的に伸びるという日銀が目指していたことがようやく実現できると考えている。政策金利は2年先ごろには2%が見えてくると期待している。日本経済は現状、金利を上げても耐えられる。景気悪化のショックに備え、金利を下げられる余地をためておくことが大事だ。
―デフレからの完全脱却はできるか。
賃金と物価が動かなかった状態からようやく上がり始めた。異常だった物価と賃金、金利が正常になってきているのが今の動きだ。来年以降、1〜2回の春闘を経れば、長く続いたデフレのノルム(社会通念)が払拭され、賃金・価格決定の新しい慣行の考え方がそろってくる。実質賃金の回復が遅いが、もう少しの辛抱ではないか。