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「話が長い」「結論が見えない」「何が言いたいのか分からない」――こういった批判を受けることはないだろうか? 現代のビジネスパーソンは膨大な情報に日々接しており、「メタボな話し方」は嫌がられる傾向にある。だからこそ、タイパを意識して簡潔に話すことが肝要だ。
そこで今回はタイパを重視する若手社員とのコミュニケーションに役立つテクニックを紹介する。新人に指示が伝わらない、若手社員との会話がかみ合わないと悩んでいる上司は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
●「メタボな話し方」をする上司3つの共通点とは?
メタボな話し方をする上司には、ある共通点がある。それが以下の3つだ。
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・準備不足
・構造化できていない
・相手視点の欠如
まず、準備不足の上司は何を伝えたいのかが自分自身でも整理できていない。なので、思い付くままに話してしまう。結果として話が冗長になり、肝心の要点が埋もれてしまうのだ。
これは意外にも、権威性が高い人に多い。周りから「分かりづらい」「何を言っているか分かりづらい」と指摘されないからだ。だから社長に
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「それでは、伝わりませんよ」
遠慮なしに言える私のようなコンサルタントが必要なのだ。
次に、構造化できていない上司は、話の筋道が不明確になりやすい。建物で例えるとこうなる。「今は柱の話をしているのか? 基礎の話なのか? それとも壁の話なのか?」
構造を意識せずに話をする人は、何が意見で主張で提案で根拠で事例なのか、まるで分からない。話を聞かされる新人は「この話はどのような“建物”になるのか」がまるで理解できず、迷子になる。
そして最も重要なのが、相手視点の欠如である。とくにタイパを重視する若手社員ほど、長々とした説明や回りくどい指示にいら立ちを覚えやすい。
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私はYouTubeを6年以上やっているから分かる。注意がそれないような編集をしないと、中高年でさえ2分も3分も集中して動画を見ることができないのだ。YouTubeのコンサルタントもそのように分析している。従って新人と話をする際は「どれだけ相手の興味を引くか」を意識した準備が不可欠だ。
●ピラミッドストラクチャーの基本構造
そこで、簡潔に分かりやすく話すフレームワーク(構造)の代表格――ピラミッドストラクチャーを使いこなそう!
ピラミッドストラクチャーとは、簡単に言えば「結論→根拠→事実」という3層構造で話を組み立てる方法だ。頂点に結論を置き、中段に根拠を並べ、下段で事実やエピソードを展開する。
1. 結論(トップメッセージ):相手に伝えたい最も重要なこと
2. 根拠:なぜその結論になるのか(主に3つ程度)
3. 事実・エピソード:各根拠を支える具体例やデータ
例えば営業部長が新人営業に指示する場合はこうだ。
「今月中にA社への提案書を完成させてほしい」(結論)
「理由は3つある。期末の大型案件であること、競合他社も動いていること、顧客が早期の提案を望んでいることだ」(根拠)
「この案件は当社の第2四半期売上目標達成のカギだ。それに先週の情報によると、ライバルのX社も提案準備を進めている。しかもA社の調達部長からは『早めの提案が欲しい』と直接言われている」(事実)
このように話せば、新人社員は「何をすべきか」「なぜそれが重要か」「具体的な背景」を短時間で理解できる。ピラミッドストラクチャーを使えば、分かりやすく指示できるだろう。
●ピラミッドストラクチャーを実践する4つのステップ
ピラミッドストラクチャーを使いこなして指示を出すには、以下の4つのステップで話を組み立てる。具体的ステップは次の通り。
1. テーマの提示:何の話かを一言で示す
2. 結論の提示:何をしてほしいのか簡潔に伝える
3. 根拠の説明:結論の根拠を3つほど示す
4. 事実の補強:根拠を支える具体例・エビデンスを示す
※そして最後にもう一度結論を繰り返し、行動を促す
このような4ステップを意識して話せば、1分程度で要点が伝わる。新人も優先順位を理解できる。タイパを重視する若手社員にとっては、このような簡潔明瞭な指示が歓迎されるはずだ。
●効果的なピラミッドストラクチャーを作る3つのコツ
それでは、さらにピラミッドストラクチャーを作るコツについても紹介したい。以下の3つは頭に入れておこう。
根拠は「MECE」で検討する
根拠を考える際は、「MECE(漏れなくダブりなく)」の原則で検討しよう。ただし、若手社員に全ての情報を伝えるのではなく、重要な要素を3つ程度に絞ることがポイントだ。「あえて削る」のと「漏れている」のは別物である。
例えば営業部長が案件の重要性を伝える場合、「売り上げへの貢献度」「競合の動き」「顧客からの期待」の3点に絞り込むことで、新人営業も要点を押さえやすくなる。タイパを意識した情報の取捨選択が重要だ。
事実には「生々しいエピソード」を入れる
数字やデータだけでは若手社員の心に響かない。具体的で生々しいエピソードを加えることで、感情に訴えかける効果が高まる。
「A社は重要顧客だ」という抽象的な説明ではなく、「先月、A社の社長が当社の本部長と会食し、将来的な取引拡大について前向きな発言をしていた」といったエピソードを加えれば、新人営業も案件の重要性を実感できる。
新人の質問に備えて準備する
ピラミッドストラクチャーで話した後は、新人からの質問に備えよう。とくにタイパを重視する若手社員は、必要な情報を短時間で得たいと考えている。
「この提案書のフォーマットはどこにありますか?」
「過去の提案事例はどこあら参照できるますか?」
「作成スケジュールはどう組めばいいですか?」
などの実務的な質問に即答できるよう準備しておく。そうすることで、無駄な時間を削減できる。
●上司が新人に対してタイパを意識すべき理由
それでは「上司こそタイパを意識した話し方を心掛けるべき」という主張をピラミッドストラクチャー的にまとめてみたい。その理由は以下3つである。
若手社員のモチベーション向上
メタボな話し方は若手のやる気を削ぐ。タイパを意識した簡潔な指示は、新人がムダに悩み、迷子になることを防ぐだろう。
ミスコミュニケーションの防止
上司の意図が正確に伝わらず、新人が間違った方向で作業を進めることが防げる。上司にとっても効率がいい。
組織全体の生産性向上
一人一人のコミュニケーションが効率化されれば、組織全体の生産性も向上する。今は作業効率よりも「会話効率」のほうが大事な時代だから。
●まとめ
ピラミッドストラクチャーを使った話し方は、とくに若手社員とのコミュニケーションに効果的だ。「結論→根拠→事実」という流れで相手の理解と行動を促す。新人指導や部下への指示など、日常のあらゆるコミュニケーションに応用できるだろう。
この話し方を新入社員自身も学べば、報連相の質も上がる。顧客に対する提案活動にも役立つはずだ。短ければ良いわけではないが、ピラミッドストラクチャーで話すことは、単なるテクニックではなく、相手を尊重する姿勢の表れでもある。超簡潔な話し方を身につけ、円滑なコミュニケーションを実現しよう。
著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
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