『ホットスポット』好評で存在感が増す“脚本家バカリズム” 早くも民放で“ポストバカリズム”探しが…大本命は蓮見翔か

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2025年03月26日 01:01  サイゾーオンライン

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バカリズム(写真:Getty Images)

 2025年1月期の地上波ドラマのなかで、特に視聴者から高い支持を受けた作品といえば、バカリズムが脚本を担当した日本テレビ系ドラマ『ホットスポット』(毎週日曜夜10時30分)がまっさきに挙げられるだろう。

『ホットスポット』特別が特別でなくなること

 同ドラマは、富士山麓のビジネスホテルで働くシングルマザーの主人公・遠藤清美(市川実日子)と職場の先輩である宇宙人の高橋孝介(角田晃広)の交流を中心に描く“地元系エイリアン・ヒューマン・コメディー”。

 2023年1月期に日テレ同枠で放送された、バカリズム脚本の『ブラッシュアップライフ』のチームが制作を手掛け、ユーザー投稿型のドラマレビューサイト「Filmarks」では5点満点で4.2点の高得点を獲得。ちなみに『ブラッシュアップライフ』は同サイトで4.5点を獲得しており、2作連続での高評価となっている。

 ヒット作を続けざまに生み出すバカリズムは、脚本家としてどういった部分が今の視聴者に刺さっているのだろうか。コラムニストでドラマ評論家の吉田潮氏が分析する。

「ウケるドラマにおいては、まず女性視聴者に刺さるかどうかが重要です。そしてその時代の“理想”ではなく“等身大”の女性像を捉えているか、共感を得られるかという点において、バカリズムさんは秀逸。これまで男性の脚本家だと、どうしても女を“下”に捉えた描き方をするか、あるいは聖母化、美化しがちな色合いが濃かったものです。

 バカリズムさんの場合、基本的に、女の面白さやしょっぱさに敬意を払いつつも、美化することはなく、嘘くさくならない。『そんなセリフ言わねえよ』、みたいなのがないんです。このあたりは、さすが芸人として磨かれてきたセンスなのかなと思いますね。

『ブラッシュ―』も『ホットスポット』も、このしょっぱい女たちが淡々と日常を送っているから、親近感とリアリティがある。繰り広げられる会話劇に中身はないんだけど、そのどうでもいい会話にこそ、役者の見せ場があるし、地続きだと感じさせます」(吉田氏)

 ともすれば「頑張らなきゃいけない」「頑張ることこそが美しい」といったメッセージを暗喩することがドラマを作る意味だと考えてしまいそうだが、バカリズムの描く世界は、現実世界ではあり得ない出来事が起こりつつも、どこまでも「目の前のものを淡々と受け入れるしかない日々」の連続で、「それが小気味よい」と吉田氏は言う。

「メッセージ性が強いと、疲れちゃうという人も多い時代。女友達の楽しそうな、でも打てば響く会話の平和で害がないリズム感が心地よいんだと思います」(同前)

増殖する芸人脚本ドラマ

 ヒット作を連発したことで、確実に業界内での信頼度を高めたバカリズム。今後はその存在感がさらに増していくことになりそうだ。

「たとえば、三谷幸喜さんや宮藤官九郎さんは、作品の内容以前にその名前だけで注目される脚本家です。バカリズムさんは、完全にその領域に達したと言える。執筆オファーをしたいと思っている関係者は多いでしょう」(ドラマ関係者)

 ただし、バカリズムは当分の間“日テレ案件”になるのではないかとも囁かれている。というのも、『ホットスポット』放送開始前に公式サイトで公開されたバカリズムのコメントによると、『ホットスポット』の原案は「企画を3つぐらい出したときの1番下」だというのだ。つまり、“数合わせ”で出した企画が実写化されたということであり、今後、残った企画がドラマ化される可能性も十分に考えられるということになる。

「『ブラッシュアップライフ』が2年前で、2024年1月のスペシャルドラマ『侵入者たちの晩餐』を挟んで、今回の『ホットスポット』。バカリズムさんはここ数年、地上波では日テレばかりで脚本仕事をしています。仮にまだ企画が残っているのであれば、あと1〜2年は日テレでの仕事が続く。バカリズムさんは難しいとなると、別の人気芸人さんを脚本家として立てようと目論む制作陣はいるでしょう」(同)

 そもそも昨今、芸人が脚本を担当するドラマが増えており、直近でも、ヒコロヒーがABCテレビ・テレビ朝日系『トーキョーカモフラージュアワー』の脚本を担当。2022年6月に3夜連続で放送されたフジテレビ系ドラマ『脚本芸人』では吉住、水川かたまり(空気階段)、岩崎う大(かもめんたる)の3人が脚本を描き下ろしたほか、2024年4月には加納愛子(Aマッソ)が『スナック女子にハイボールを』(中京テレビ)で脚本を担当している。また、地上波ではなくネット配信だが、じろう(シソンヌ)はAmazon Prime Videoのオリジナルドラマ『No Activity』の脚本を担当し、シーズン2まで配信されている。

“ポストバカリズム”は誰なのか

 すでに結果を出している“芸人脚本家”も多いが、このなかにポストバカリズムはいるのだろうか。お笑い事務所関係者は話す。

「特にコント師とドラマ脚本の相性はすごく良くて、ロングコートダディの堂前透さん、男性ブランコの平井まさあきさん、ビスケットブラザーズの原田泰雅さん、蛙亭のイワクラさんなどは、脚本家として花を咲かせる可能性が十二分にある。ただ忙しい芸人スケジュールのなかで、締切もタイトな1クールのドラマの脚本を完成させるのは大変です。しかも、吉本の芸人さんは劇場出番も多い。お笑い賞レースに力を入れている場合、ネタ以外に割ける時間も少なくなってしまう。“ポストバカリズム”になるには、才能と同時にスケジュールの問題も大きくからんできます」

 そうしたなか“ポストバカリズム”の大本命と目されるのは、コントだけでなく演劇の公演も行っている8人組ユニット・ダウ90000の蓮見翔だ。

 ネタはもちろん演劇公演の脚本も手掛ける蓮見は、ドラマの脚本としてもフジテレビ系『エルピス-希望、あるいは災い-』のスピンオフ作品『8人はテレビを見ない』(TVerで配信)や日本テレビで放送された5分ドラマ『今日、ドイツ村は光らない』を担当している。

「芸人さんの場合、登場人物が2〜3人のコント脚本には慣れているけど、ドラマのようなたくさんの人物が登場する作品については、経験不足ということも考えられる。ただ蓮見さんは8人の登場人物がいる脚本を書き続けているので、ドラマ向きではあります。ネタについても、昨今のお笑いのフォーマットとは異なる切り口で、幅広い視聴者層にも刺さりやすいもので、そういう意味でも地上波ドラマ向き。何より、2024年に独立し、スケジュールを自分で調整しやすい。蓮見さんへの脚本オファーがしやすい条件が整っているんです」(同)

 才能あふれる芸人脚本家たちの飛躍に期待したい。

『ホットスポット』の結末をオカルト専門家が予測!

(取材・文=サイゾーオンライン編集部)

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