
連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)が、3月28日に本編最終回を迎えた(29日には1週間の振り返り放送)。
6歳のときに阪神・淡路大震災で被災した主人公・米田結(橋本環奈)が自らの心の傷に向き合い、立ち上がって、病気で困っている誰かを支えるために管理栄養士になった。その物語のラストシーンは震災から30年後の2025年1月17日、結の原点である「おむすび」を雅美(安藤千代子)と共に食べるところで結ばれた。
1995年1月17日の発災直後、雅美はおむすびを作って、瓦礫を踏み分けながら歩き、結ら親子が身を寄せる避難所まで持って来てくれた。雅美が配った塩むすびに、まだ幼い結は「冷たい。チンして」と言ってしまった。その後悔が結の原点であり、また原動力でもあった。2人がおむすびを食べるラストシーンに込めた思いを、制作統括の宇佐川隆史さんと真鍋斎さんに聞いた。
実話に基づいた「避難所のおむすび」のエピソード
宇佐川さんは第5週の「冷たいおむすび」と、最終回ラストシーンの「温かいおむすび」の成り立ちについてこう語る。
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「このシーンで終わることができてとても良かったと思っています。第5週『あの日のこと』で結が雅美からもらったおむすびは、物語の起点でもあります。避難所の『冷たいおむすび』のエピソードを作った経緯は、『おむすび』の企画について検討している初期の段階で、根本さんがあるリポートを持ってきてくれたことに始まります」
「それは、阪神・淡路大震災の直後におむすびを作って丹波篠山から神戸まで運んできてくれた女性が実際にいた、というリポートでした。私たちはここから物語を立ち上げていったのですが、ラストシーンを考えていく際に、こうしたリポートを結がテレビで観て、雅美を見つけた可能性もあるのでは、と思い至りました。あのときのおむすびへの感謝と、『冷たい』と言ってしまったことへのお詫びをしたいと、結はずっと“おむすびのおばさん”を探していたのではないかと思います」
続けて真鍋さんは、
「避難所のおむすびは結にとって原点であり、結はずっとあのときのことを気にしながら生きてきたと思うんです。かつては震災で受けた傷から心を閉ざしていましたが、ギャル魂を身につけて自分らしく生きて、夢であった管理栄養士になった結が、どんな行動をとるかなと考えました。僕だったら、“おむすびのおばさん”をなんとしてでも探すだろうなと思いました。結は高校を卒業したあと、神戸に戻ってきてから何年間か雅美を探して連絡がつき、それ以降は毎年1月17日に会っているというイメージです」
とコメントした。
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雅美役の安藤千代子は神戸の語り部「こんな役は後にも先にもない」と感激
宇佐川さんは、第5週以来の再登場、そして最終回の重要なキーパーソンとしての役割を任された俳優・安藤千代子について、
「安藤さんに最終回で出演オファーをさせていただときは大変驚かれて、『またこの役で出られるとは思わなくて、本当に嬉しい』と言っていただきました。安藤さんは実際に神戸で被災し、その後も俳優を続けながら震災の『語り部』として活動されてきました。安藤さんはこれまでのご自身の歩みを雅美に重ねつつ、『これまでもこれからも、こんな役はないだろうから、自分のすべてを雅美に投げこんだ』とおっしゃっていました。『雅美は、結ちゃんが自分を探して会いにきてくれたことが本当に嬉しかったでしょうね。だって私自身が嬉しいから』とも」
と話した。
「避難所のおむすび」を起点に紡がれた「誰かが誰かのために」生きる物語、『おむすび』。結の思いは、また次の「誰かのために」広がっていく。
(まいどなニュース特約・佐野 華英)
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