激しいせきが続く百日ぜきが流行している。今年、全国の医療機関から3月30日までに報告された累計患者数は4771人で、昨年1年間の4054人を上回った。就学前の小児や小・中学生を中心に広がっているとみられ、専門家は「ワクチンの任意接種も検討してほしい」と訴える。
百日ぜきは、百日ぜき菌が引き起こす感染症。せきやくしゃみの飛沫(ひまつ)を吸い込むなどして感染し、風邪のような症状が出た後にせきがひどくなる。乳児が感染すると重症化し、命に関わることもある。
18年から全患者数を把握することになり、同年と19年はいずれも1万人を超えた。新型コロナウイルスの流行が始まった20年以降減少し、21年と22年は1000人を下回ったが、翌年から再び増加。今年3月24〜30日の患者数は18年以降、1週間当たり最多の578人に上る。
予防にはワクチン接種が有効だ。百日ぜきを含む5種混合ワクチンは公費による定期接種の対象で、生後2カ月から1歳半ごろまでの間に計4回接種する。ただ、免疫効果は弱まるため、日本小児科学会は、就学前の小児や小学校高学年での任意接種を推奨している。
治療には抗菌薬が使用され、服用から5日後に菌はほぼ消えるとみられている。だが、抗菌薬の効きにくい耐性菌が大阪府や鳥取県などで確認され、同学会は注意を呼び掛けている。
国立健康危機管理研究機構の鈴木基・感染症疫学センター長は「耐性菌と感染拡大の関係はまだ分からないが、流行が続く可能性がある。ワクチンを打つことが最大の予防策」と話している。