東京23区で年収4000万円を稼ぐ大家が警告「高利回りは高リスクの証」。成功した不動産投資家が説く“意外な投資哲学”

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2025年04月14日 09:21  日刊SPA!

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―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。単純計算すれば利回りは4%ですが……。村野氏は「不動産投資において、利回りはあくまで結果に過ぎない。だから、多少参考にはしても気にしない」と言い切ります。利回りをそこまで気にしない理由について村野氏が語ります。

◆そもそも利回りは「気にしない」、不動産投資の本質とは

私が不動産投資の話をすると、「資産10億円、家賃収入4000万円ならば利回り4%。大した事がない」と批判的なコメントをもらうことがあります。しかし、私自身は利回りばかりを気にした不動産投資はナンセンスだと思っています。

一般に「不動産投資では6〜8%台の利回りを目指すべき」とも言われていますが、東京を含む首都圏なのか地方都市なのか、地域によっても物件の利回りは変わってきます。そもそも「利回りが高い」=「高いリスクがある」の表れです。ですから、リスクを取りたくない私自身は利回りを特に追い求めてはいないのです。

不動産投資において利回りが高くなる理由を紐解いてみましょう。利回りを押し上げる要因は「家賃が高く設定されている」か、「物件価格を安く取得できる」という2点に集約されます。

賃貸市場に出した際の賃料によって利回りは全然変わります。例えば、1000万円の物件を取得した際、賃料が10万円ならば表面の利回りは12%と高くなります。しかし当然のごとくその賃料が5万円になると表面利回りは6%と半減します。一方で仮にこの物件が何らかの理由で半額の500万円になったら……。賃料5万円になったとしても表面利回りは12%になります。

このようにあくまで「利回り」はその時点のものであり、未来永劫保証してくれるものではありません。売りに出ているときの賃料はあくまで「たまたま今の入居者が払っているもの」です。また、空室であれば「想定」でしかなく、借りる人がいなければ絵に描いた餅に過ぎません。単純に見た目を良くしようとするのであれば、「賃料10万円で、フリーレント半年」という条件などをつければ、表面利回りは高くみせていくことも可能となりますが、実際の収入は低くなってしまうのです。

◆AV男優が陥った不動産投資の罠

先日、AV男優のしみけん氏が不動産投資トラブルに遭ったことが報道されていました。物件は新潟県にある築25年の1棟8部屋のアパートで価格は1800万円。8部屋中6部屋が入居中だったので利回りは13%、満室だと利回りは16%想定だったそうです。しかし、決済の前日に6部屋中4部屋に退去があり、利回りは5%弱まで低下してしまったとのこと。

満室かのように見せかけて売却を持ちかけるのは満室詐欺(カーテンスキーム)と呼ばれる古典的な手法です。1棟アパートの場合に限らず、不動産投資の世界ではまったく珍しくない話で、特に地方の空室率が高めのところで勝負している不動産投資家の中には、この手の手法でなんとかして次のオーナーに売り抜けようとする、いわゆる“ババ抜き”のような状況を見ることもあります。

この事例からも、満室時の想定利回りがいくら高かったとしても、実際にはなんらかのカラクリがあることが分かるのではないでしょうか。

ちなみに私は「利回り15%以上の良い物件があるんですが買いませんか?」と持ちかけられたら……。まずは「そんなに条件が良いならば、あなたが買って持ってればいいのに」と言うでしょう。おそらく、相手は「今早急に現金が必要なもので」ともっともらしい理由を述べるかもしれません。とはいえ現金が必要な状況であればその物件を担保にしてお金を借りてくればいいだけです。「金利10%で借りても5%以上のイールドギャップが取れるので損はしないですよね?」と私は思います。

◆高利回り物件が回ってくる理由

購入時には周辺の家賃相場と空室状況を見ること。同じ地域、同じ間取りでどれくらいの家賃が設定されているのか、賃貸募集サイトで確認します。掲載されている部屋が多すぎたり、少なすぎたら要注意です。多すぎれば需要側が少なすぎる可能性がありますし、少なすぎればそもそも供給が無い、つまり人がそんなに居ない可能性があります。このような状況の時などは、自身に何かしらの武器が必要です。例えば、「自分で入居者を見つけられる」「特徴のある部屋にリフォームできる」「管理スキルがあり維持管理費用を抑えられる」など、何かしらの強みないことにはこの先の運営が難しくなってくるでしょう。

そして一部の部屋が空室でも、共同住宅の場合は他に住んでいる人がいれば共用部等の管理は行う必要があります。ゴミ捨て場の掃除や壊れた共用部の修繕はしなければいけません。一方で空室で家賃収入が入ってこないのですから、当然のごとく収支は苦しくなってきます。となると、オーナーは管理が面倒になり早く手放したくなって安く売り出すかもしれません。すると、さらにその物件自体の利回りは高くなり新しい獲物のところに移っていくのです。

不動産投資で利回りだけを追い求めると、「楽をして、何もしなくても家賃収入を得る」という結果からは遠のくことがあります。我々投資家の本当に欲しかったものはなんでしょう? 利回りという数字でしたか? コンクリートや木の箱ですか? 

10年以上前にソフトバンクの孫正義氏が銀座のティファニービルを320億円で購入したことが話題になりました。買収金額から考える期待利回りは2.6%だったそうですから、利回りのみを重視すると「なんでそんな低い利回りで購入したの? 高値掴みで失敗した投資では?」と判断しがちです。しかし、銀座の一等地には希少価値があるので、今後の値上がりを見込めばどうでしょう? 賃料も上昇するのでは? 低金利で資金を調達できていたら……? などなど、利回りにだけに注目して購入成否の判断をすると、見えなくなることがたくさんでてくるはずです。

利回りだけに着目するのでなく、その周辺のことを考えてみることで資産形成においては”急がば回れ”の結果になることもあります。不動産投資は利回りを追い求めすぎないこと。覚えておいて損のない法則だと思います。

構成/上野 智(まてい社)

―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

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