
4月9日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「トランプ政権“相互関税発動”と“日本経済と株式市場”への影響」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆「リーマンショック」「コロナショック」と並ぶ歴史的かつ大幅な下げ
浜崎:それでは今回、宗さまには「トランプ政権“相互関税発動”と“日本経済と株式市場”への影響」についてお話しいただきます。
やしろ:まず、先月このコーナーで相互関税についてのお話がありましたが、宗さまの予想通りになりましたね。
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あのときの私は「トランプ大統領のことですから、全く意味のないことには触れないでしょう。実行に移す可能性はかなり高いと思いますし、相互関税の発動が現実化すれば世界経済もマーケットも大変なことになりますよ」とお話しましたね。そして実際に、世界経済もマーケットも大変なことになってしまいました。日本には24%の相互関税が課されることになりました。
やしろ:あの数字の出し方は、宗さまとしては納得できるものなんですか?
宗正:ちょっと計算式があいまいで、数字の前提条件もよく分からないですよね。ただ、彼にとって計算式は後付けの理由なので、その正解不正解を語っても意味がないでしょう。問題なのは、「もし相互関税が現実化したとしても、これくらいだろう」と思っていた関税率の水準を遥かに超えていたということです。
やしろ:トランプ関税の影響で、世界中の株式市場が大きく下がって不安定になっております。今の株式市場の反応をどのように見ていますか?
宗正:相互関税の発動の発表以降、世界中の株式市場は連日のように大幅な下げが続きました。多少の揺り戻しはありましたが、総じて歴史的な下げ幅を記録していますね。相互関税はどうせ口先だけの話だろうと思っていたら実際に発動されて、しかもその内容も想定の水準を超えていた。この一連の動きにマーケットが完全に驚いている状態です。
株式市場は事前に内容を織り込むことが普通で、実際にその事実が発表されたタイミングでは織り込み済みなのであまり動かないといったケースが多い。ところが今回ばかりは世界中の株式市場が超サプライズで、日経平均株価も今週7日の月曜日には前週末の4日金曜日と比べて2,600円以上も下落しました。
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宗正:歴史的な下げといえば、過去には「リーマンショック」や「コロナショック」がありましたが、それらと並ぶ大幅な下げ。そして今回の動きが過去と違うのは、その要因がトランプ政権による人為的なものだということ。そのため株式市場は今の状況がいつまで続くのか全く分からないということなんです。
やしろ:コロナショックだったら、コロナウイルスの感染状況などの様子を見ながら判断できますけど、トランプ大統領がどう出るかがわからないから予測不可能なんですね。
宗正:相手は何を言い出すか分からない、高齢な外国の元気なおじさんですからね(笑)。株式市場もパニック状態になる訳ですよね。
◆トランプ関税は日米二国間の政治的な最重要課題
やしろ:相互関税の内容自体は、今後の日本経済に大きな影響を与えそうでしょうか?
宗正:間違いなく与えますね。特に日本経済に大きな影響を与えそうなのは、アメリカに輸出する自動車にかけられる25%の追加関税です。
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そして自動車だけではなく、自動車関連部品の輸出も日本の得意分野ですが、これも同様に25%の関税がかけられる予定です。その分はアメリカでの販売価格に上乗せされる計算になりますが、昨年2024年の自動車、そして関連部品の対米輸出額は7兆2,000億円なんですよ。日本国内において、自動車関連産業で働いている人の数は558万人。日本国内の就業者の12人に1人が自動車関連産業で働いています。これだけの人に影響してきますよ。
やしろ:そんなにいるんですか! すごい数字ですね。
宗正:これが自動車関連産業に依存する日本の経済実態です。「トランプ関税」は単なる経済的な課題ではなくて、明らかに日米二国間の政治的な最重要課題なんですよね。
やしろ:聞けば聞くほどすごいことが起きているなと思いますけれども、当面の株式市場の動きはどのようになっていくのでしょうか?
宗正:トランプ関税に関わる情報が日々発信されて内容も変わる中、株式市場は一定の範囲内で上がったり下がったり、そんな動きが当面の間は続くと思います。今回の相互関税の発動の発表は、日本の株式市場にとってタイミングも良くなくて、もしかすると一番悪いかもしれません。日本の上場企業は全体の6割が3月決算です。3月決算の企業が今のタイミングで何をしているかというと、今年度(2025年度)の会社計画を作っているときなんですよ。
2025年度3月期の会社計画が本格的に出てくるのは、毎年ゴールデンウィーク明けになりますが、3月決算の上場企業の株価というのは、この初めて出てきた会社計画をもとに形成されるんです。つまり今は、「会社計画」という株価の拠り所となる基準がないタイミングなんですよ。今の日本の株式市場はパニック状態にある上に基準がないので、日々発信されるトランプ関税の情報によって、一定の範囲内で上がったり下がったりをしばらくの間は繰り返す動きになると思います。
やしろ:今お話にもありましたけれども、ゴールデンウィーク明けに出てくる上場企業の会社計画は、どこに注目すればいいのでしょうか?
宗正:まずはトランプ関税の影響が、どのような形で会社計画に落とし込まれているか。特に会社計画のトップライン、売上計画ですね。高い関税率がかけられて、アメリカ国内で売上げがどの程度落ちるのかを予想するのは非常に難しいと思います。関税が上乗せされることでアメリカ国内の販売額が上がるため、普通であれば売上げは落ちます。会社計画の中の数字について、投資家が頷ける論理構成がそこには必要です。
やしろ:3月決算の上場企業が投資家をちゃんと説得できるものを、残り1ヵ月くらいで発表できるか……ということですか?
宗正:そうです。そしてもう1つは輸出関連企業の場合には、会社計画の前提となる想定為替レートが重要です。輸出関連企業の場合には、これと実際の為替水準の差異が業績と株価を決めると言っても過言ではありません。
例えば輸出関連企業の場合には、円安ドル高のほうが企業業績にはプラスに働きます。企業がその会社計画を作るときに、想定為替レートを仮に1ドル150円にしたとします。実際の為替市場が1ドル140円の方に動けば、要は円高ですので企業業績にはマイナス。逆に1ドル160円であれば想定為替レートよりも円安の方に動いたわけですから、企業業績にはプラスです。日々こんな感じで為替市場の動きを受け止めながら、輸出関連企業の株価は動いています。
やしろ:なるほど。トランプ大統領の発言の後、一度1ドル140円台の前半まで急速に動きましたよね。
宗正:為替市場は一旦一方向に動き始めると早いんですよ。金利の動きも同様です。
◆不安定な動きが続く株式市場で個人投資家が確認すべきこと
やしろ:リスナーの中には、新NISAをきっかけに投資を始めたばかりで、今のような株式市場の状況で不安になっている方も多いと思います。彼らに向けて何かメッセージがあればお願いします。
宗正:去年の夏に次ぐ大幅な下落で、投資を始めたばかりの方は本当に不安な日々が続いていると思いますが、昔から「休むも相場」という相場の格言があります。株式市場の動きや方向性がよく分からないときには休む、手を出さないという判断も今の局面ではありかなと思います。
戦争のような地政学リスクが起きたときに、株式市場は一旦大きく下げるじゃないですか。あれも同じです。よく分からないときには、投資家は株式市場から投資資金を1回引き上げるんです。投資の資金が引き上げられると株式市場は下がります。あれも言ってみれば「休むも相場」です。
それから、今のように株式市場が上下に乱高下しているときには、積み立て投資も有効です。毎週でも毎月でも定期的に決まった一定額を積み立てる。一定額を積み立てていると、株価が下がったときにはたくさん買えます。株式市場が上がったときには以前に買ったものがリターンとして戻ってきます。
株式市場は常に上げ下げを繰り返しているんです。上がるときにも上がったり下がったりしながら上がっていきますし、下がるときにも上がったり下がったりしながら下がっていきます。つまり積み立て投資は、株式市場の動きを利用して、自動的に運用資産を増やす仕組みなんです。
もう1つ大事なことを挙げるとすれば、自分の「投資ホライズン」を再確認すること。“何年後にいくらまで増やすことを目標としている投資なのか”という際の運用期間を「投資ホライズン」と呼びますが、これを再確認しましょう。
例えば、30年後の老後の生活資金を増やすために今投資しているのであれば、投資ホライズンは30年。今の株式市場の乱高下に慌てる必要はないわけです。投資ホライズンが長い人は、むしろ今の水準は買いを入れるタイミングかもしれない。ここ1〜2年で一番安い水準なわけですからね。一方で2〜3ヵ月後に運用成果を求める投資をしているのであれば、今は投資をしない方が良いかもしれません。ただ単に「投資を続ければいい」と投資ホライズン(投資の時間軸)を決めずに投資をしていると、気付けば過大な投資リスクを取りがちで失敗してしまうことが多い。投資ホライズンの再確認をお勧めします。
やしろ:新NISAが始まるときにも、周りに流されてズルズルやるのではなく、期間や目標額を決めてやるのが良いというお話をされていましたね。それがすごく印象に残っています。投資ホライズンを再確認しないといけませんね。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月〜木曜17:00〜19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ〜)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/
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