2025年F1第8戦モナコGP 角田裕毅(レッドブル) 前戦エミリア・ロマーニャGPでのクラッシュから5日後、5月22日(木)、F1第8戦モナコGP前日にメディアの前に現れた角田裕毅(レッドブル)にとって、すでにイモラの悪い記憶は過去のものとなっていたようだった。
「クラッシュしたことは反省していますが、レッドブルのクルマを理解していたと思っていたけど、そうではなかったということを知ることができたという意味では、とてもいい経験になったと思います」
角田にとって、あれほどまでに大きな単独クラッシュは、2021年のイモラでの予選以来のことだった。
「VCARBではああいうクラッシュはなかったんです。少なくとも2022年以降はなかったと思います。セットアップを変更したときにどう変わるかまでは予測できていませんでした」
イモラでのクラッシュは、フリー走行3回目でグリップ力が不足したために、予選に向けて金曜日のフリー走行2回目のセットアップに戻して予選に臨んだことが要因だった。
「予選前にセットアップを変更するのはこれまでもやってきたこと。ただ、セットアップを変更して予選に臨むときは、もう少し慎重にアタックを開始するべきだったというのが今回の学びです」
角田は、そう振り返る。そして、モナコGPに向けては次のように気を引き締めていた。
「とにかく慎重に、段階を踏んでスピードアップしていきたい。先週のイモラや他のサーキットとは違って、モナコには逃げ場がないですから、攻めすぎないように心がけたい」
クラッシュしてマシンにダメージを与えることはそれだけでデメリットになるが、フリー走行でのクラッシュは、それ以外にも予選とレースに向けて、ダメージを与える。それは、モンテカルロ市街地コースではエンジンの使用回転域がほかのサーキットに比べて、著しく低いからだ。
ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)はこう説明する。
「モナコは超低速サーキットなので、低回転域でのドライバビリティが重要になります。たとえば、ターン6(ヘアピン)はほかのサーキットでは使わない回転域を使用するので、エンジンのチューニングがそこまでできていない可能性があり、そこをフリー走行でしっかりと走り込んで調整していく作業が金曜日は大切になってきます」
アクセルを踏み始める回転域が、ほかのサーキットであれば8000回転付近なのに対して、モナコでは5000回転まで落ちる。その回転域でのトルクの追従性をほかのサーキットにどれだけ近づけられるか。車体のセットアップだけでなく、エンジンをチューニングするためにもフリー走行ではできるだけ多くのラップを走行しなければならない。
エンジンは2022年からホモロゲーションされているため、エンジン自体の特性に大きな変化はない。ただし、マシンとタイヤは毎年進化しているため、低速コーナーでのグリップ力が違う。それが低回転域でのドライバビリティに大きく影響する。そのためモナコGPでのフリー走行はほかのサーキット以上に、タイムを出すことよりも、データを収集することが大切になる。
「フリー走行1回目から2回目にかけてクルマは確実に進歩しました。ただ、まだクルマからポテンシャルを絞り出せる余地が残っているので、そこを改善したい。現在のペースを維持し、予選ですべてをまとめられるように頑張ります」
今年のモナコGPは初日から赤旗が何度も出た。その原因を作ったり、被害を被ることもなかった角田。それがモナコGPの初日では、一番大切なことだった。
[オートスポーツweb 2025年05月24日]