麻酔をかけられる患者(写真はイメージ) 外科手術などに用いられる吸入麻酔薬が作用するメカニズムについて、東京大などの研究グループは4日、麻酔の効果に関わる分子を新たに特定したと発表した。マウスなどを用いた実験で、細胞内にカルシウムを放出するたんぱく質が活性化していることを確認した。論文は米科学誌プロス・バイオロジーに掲載された。
グループによると、神経細胞の働きを抑制する吸入麻酔薬は約180年前から外科手術などで使用されてきたが、メカニズムは今も完全には解明されていない。麻酔薬が細胞内外で働く複数のたんぱく質に作用することは分かっていた一方、未知の分子の存在も示唆されていた。
東大の上田泰己教授らは、細胞内にカルシウムを放出するたんぱく質「1型リアノジン受容体」に注目。細胞株に吸入麻酔薬を投与したところ、このたんぱく質の活性化を確認した。細胞内のカルシウムは眠りの制御に関係していることが分かっており、研究に携わった同大大学院生の金谷啓之さんは「脳の特定部位や神経細胞で、受容体によるカルシウム放出が起こっている可能性などが考えられる」とした。
また、このたんぱく質を構成するアミノ酸配列も分析。特定部位のアミノ酸「メチオニン」を別のアミノ酸に置き換えたところ、吸入麻酔薬への反応性は大幅に減弱したことから、この部位が麻酔の作用に関連している可能性があるという。