成績が今は良くても…「伸びる子、伸びない子」の差は? 教員歴12年で気づいた、現代の子どもに大事なこと

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2025年07月15日 07:40  まいどなニュース

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現役教員は、子どもの成績や友だちの多さよりも「自分の機嫌を自分でとる力」が大切という(photoACより「ちゃぁみい」さん撮影、イメージ画像)

「教員歴12年のわたしが断言します。成績が良くても、ちょっと注意されたらフリーズする子がいます。友だちが多くても、トラブルがあるとすぐにパニックになる子も。一方、成績はごく普通でも、失敗したあとに自分で気持ちを立て直せる子は、ぐんぐん伸びていく。その違いは何かっていうと…『自分の機嫌を自分でとれる力』があるかどうか。この力がある子は、どこにいっても折れません。環境が変わっても、人間関係でつまずいても、自分で立て直すことができるからです。」

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子どもの成績や友だちの多さよりも大切なことがある──そう語るのは、現役教員として日々子どもたちと向き合う「ひのりえ」さん(@hinorie555)だ。「自分の機嫌を自分でとる力」が、なぜ今の子どもたちに必要なのか。教員としての体験や、家庭でできる声かけの工夫、SNSで発信する理由を聞いた。

「人の機嫌をとる前に、自分の機嫌をとれなきゃダメだ」と気づいた瞬間

教員になりたてのころ、ひのりえさんは子どもの前では明るく振る舞いながらも、帰宅後は疲れ切って何も手につかない日々が続いていたという。

「情けない話ですが、家族に当たってしまうこともありました。そんな自分に気づいたとき、『人の機嫌を取る前に、自分の機嫌を取れなきゃダメだ』と思ったんです」

ある保護者から「先生、子どもが『今日は先生怒ってなかった』と安心して帰ってきました」と言われたとき、ひのりえさんはハッとした。

「私の機嫌ひとつで、子どもたちの安心感が左右されるんだと気づかされました」

それ以来、「自分の機嫌は自分でとる」ことを意識するように。

「休む時間をつくる、好きなものを食べる、日記を書く。小さなことでも、自分をごきげんにする工夫を重ねることで、子どもや周りの大人たちとの関係もよくなっていきました」

 日記に綴られた一文が教えてくれた子どもの力

印象的だったエピソードとして、ひのりえさんが教える学級で起きた出来事がある。

「トラブルが続いていた男の子がいたんです。すぐにイライラして友だちに手を出してしまうこともありました」

しかしある日、その子が日記に書いた一文がきっかけで変化が起きた。

「『今日はイライラしたけど、トイレで深呼吸したから大丈夫だった』と。私は『すごい!自分の気持ちに気づいて、落ち着く方法を見つけたんだね』と伝えました」

その後、その子は日記に「自分をごきげんに戻す工夫」を何度も書くように。

「大人が叱ったからではなく、自分で自分の機嫌を整えようとしたことが嬉しかったです。この子はきっと、この先もうまくやっていけると感じました」

子どもが自分の気持ちを整える力を育てるには、「今どんな気持ち?」と問いかけたり、落ち着ける行動をカードなどで示すなど、大人の関わりが大切だとひのりえさんは言う。

 “すぐに正解を与えない”声かけが子どもの力を育てる

家庭でできることとして、ひのりえさんは「すぐに正解を与えないことの大切さ」を挙げる。

「たとえば『〇〇ちゃんが遊んでくれなかった』と子どもが泣いて帰ってきたとき、つい『次はこうしよう』とアドバイスしたくなりますよね。でも、そこをグッとこらえて『それは残念だったね。今どんな気持ち?』『どうしたら楽になるかな?』と問いかけてほしいんです」

感情に気づき、自分で気持ちを整える流れをつくることがポイントだという。また、家の中に「深呼吸ゾーン」を決めるなど、感情の避難所を用意することも効果的だそうだ。「泣いちゃダメ」「怒っちゃダメ」ではなく、「感情と上手に付き合う力」を育てていくこと。それが子どもの生きる土台になるとひのりえさんは語る。

 SNSで伝えるのは「がんばり屋ほど苦しくなる現実」

ひのりえさんがSNSで「自分の機嫌をとる力」の大切さを発信するのには理由がある。

「がんばり屋の子ほど、学校や家庭で苦しくなってしまう現実をたくさん見てきました。表ではニコニコしていても、心の中はしんどい子が多いんです。『もっとがんばれ』ではなく、『いったん立ち止まってもいいんだよ』と伝えたいんです」

同じ思いは大人にも向けられている。

「子育てや仕事で、誰かのためにとがんばるあまり、自分の気持ちを後回しにしてしまう大人も多いですよね。私自身がそうでした。だからこそ、『まずは自分を満たすことが大事』というメッセージを届けたいんです」

 これからの時代に必要なのは「自分の心を扱う力」

最後に、これからの時代を生きる子どもたちに必要な力を尋ねると、ひのりえさんはこう語った。

「どれだけAIが進化しても、『感情』は人間だけのものです。失敗して落ち込んでも、『まあ、こんなときもあるよね』と切り替えられる。SNSで他人と比べてしまっても、『人は人、自分は自分』と思える。そうやって、自分の感情を自分の力で整えられることが、何よりの土台になります」

テストの点数や友だちの多さよりも、「ごきげんな自分でいられる力」。それを育てる関わりを、大人たちが意識することが求められているのかもしれない。

「誰かに優しくする前に、自分に優しくする」

それは子どもだけでなく、大人にも必要な力だ。忙しい毎日の中で、自分の心を満たす時間を、あなたも少しだけ作ってみませんか。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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