なぜ日暮里駅は“通過点”の印象が強いのか 1日25万人が利用する駅の静かな現実

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2025年07月17日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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日暮里駅が発展しにくい“意外すぎる理由”

 日暮里駅は、京浜東北線や山手線などのJR東日本の路線と京成電鉄、さらに日暮里・舎人ライナーが乗り入れており、多くの人が行き交う場所だ。


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 2023年度のJR東日本・日暮里駅の1日平均乗降人員は10万2143人。京成電鉄の2024年度は10万1435人、日暮里・舎人ライナーの2023年度は5万2085人となっており、多くの人が利用する駅であることが分かる。


 しかし、利用客数は多い一方で、日暮里駅に対して「ぱっとしない」と感じている人も多いのではないだろうか。


 日暮里駅は常磐線の起点とされており、京成電鉄の有料特急「スカイライナー」が全列車停車し、都心から成田空港に向かう人が多く乗り換える駅である。また、日暮里・舎人ライナーの利用者が都心に向かうため、JRに乗り換える駅でもある。


 このように重要な駅であるにもかかわらず、なぜ日暮里駅は地味な印象を持たれ、発展していないのだろうか。本稿では、その理由を探ってみたい。


●駅ナカもある日暮里駅だが……


 日暮里駅は、山手線や京浜東北線を上野駅から北に進んだ先、鶯谷駅の次に位置する。常磐線では、上野駅の次が日暮里駅だ。


 JR東日本の日暮里駅には、駅ナカ施設「エキュート日暮里」がある。しかし、店舗数は28店のみで、イートインは1店舗、カフェも1店舗のみと、決して大規模とはいえない。その他の店舗も、弁当や総菜、お菓子などの販売が中心で、駅構内の一角にある小規模な施設である。


 これに対し、日暮里駅よりも都心寄りの上野駅には、大規模な駅ナカ施設が整備されており、利用者数や店舗の充実度の両面で、日暮里駅とは大きな差がある。


 しかし、日暮里駅のように多くの路線が交差し、乗り換え客が集中する拠点では、「もっと駅ナカなどの施設が充実していてもおかしくない」と感じる人は多いはずだ。


●特徴的な、高低差のある土地


 では、なぜ日暮里駅は駅ナカ施設さえ十分に整備されていないのだろうか。その理由は、駅周辺の複雑な地形にあると考えられる。


 日暮里駅の西側には、崖のような急な斜面が広がっており、その上には谷中霊園や天王寺が位置している。駅自体も、この高台の縁に沿うような形で設けられており、地形的にギリギリの場所に立地している。谷中霊園は広大で、駅ホームとの間にも明確な高低差がある。


 一方、駅の東側は、西側とは対照的に低地である。京成電鉄の日暮里駅は、JRの駅の東側に位置しており、地盤がJRのホームよりも一段低い。そのため、日暮里駅は水平方向にも垂直方向にも、拡張の余地がほとんどない。


 こうした地形的制約によって、大規模な開発や再整備が難しいという事情が、日暮里駅の発展を阻んできたのだ。


 また、駅周辺の道路構造も、こうした「地形的な制約」を象徴している。JR日暮里駅の西口を出た先の道路は、線路をまたいだ後、北口の前で直角に折れ曲がり、京成日暮里駅に沿って急な坂道を下る。その坂道の先にロータリーがあり、駅前の動線も非常に複雑だ。


 日暮里・舎人ライナーの駅もまた、地形の影響を強く受けている。JRと京成の駅とは接続しているものの、東側のロータリーのすぐ上、かなり高い場所に設置されており、地上との高低差は想像以上に大きい。アクセスに大きな問題はないが、さまざまな施設を配置できるほどの余裕はほとんどない。


●地形や線路による制約も


 前述の通り、日暮里駅周辺は地形の高低差が大きい。そして、駅自体も、多くの線路が交差しているにもかかわらず敷地が非常に限られている。そのため、東北本線や高崎線はホームを設けられず、京成電鉄も「スカイライナー」のため多層構造の駅にせざるを得なかった。


 線路を設けるためのスペースは確保できても、その上に建物を作るほどの余裕はない。無理をして建物を作ろうとすれば、かなりの手間がかかるであろうことが、現地に行けば一目瞭然だ。どのような手順で工事用の資材や車両などを入れれば良いのか、簡単には考えつかない場所にあるのが日暮里駅なのだ。


 しかも、近くには上野という巨大なターミナル駅がある。商業用施設建設のために工事をするには、あまりにも手間がかかりすぎる日暮里駅を無理に大きくするよりは、上野駅に行ってもらった方が良いとも考えるのは自然なことだろう。「日暮里駅の施設を拡充させるより、上野駅に集約したほうが合理的」と、JR東日本も京成電鉄も考えていてもおかしくない。


 このように、重要な拠点ではあるものの、地理的な制約もあり、大規模開発は難しい――それこそが、日暮里駅の最大の特徴であり、「乗降者数は多いのにあまり発展しない」最大の理由ではないだろうか。


(小林拓矢)



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  • 日暮里は谷根千散策のスタート地点の印象の方が強いexclamation�ࡼ��夕焼けだんだん階段の終着点が日暮里駅ͼ���¤�(ͼ�Ƥ�)
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