
企業が株主に向けて提供する「株主優待券」。株主にならなくても金券ショップやフリマアプリなどでも購入することができますが、「偽造品」を購入してしまう被害が今相次いでいるといいます。
【写真で見る】「意図的に持ち込むケースが多い傾向」見極める買取業者
「社員でも判別できないレベル」 株主優待券で支払い後に偽物と判明日比麻音子キャスター:
偽物の優待券にご注意ください。
そもそも株主優待券というのは、企業が株主に向けて提供する自社製品やサービスなどの優待券のことです。
マクドナルドでは、好きなバーガーなどと交換できる引換券を受け取ることができます。例えば、バーガー類、サイドメニュー、ドリンクなどです。
都内の金券ショップを見てみると、1枚780円で販売しています。店舗で購入すると、1000円近くになるセットもあるので、780円で購入することができればお得だという引換券になっているわけです。
様々な企業が優待券を用意しています。例えば、「サンリオ」ではテーマパーク共通優待券など、温浴施設の「極楽湯」では無料の入浴券、「スタジオアリス」では株主写真撮影券などがあるということです。
このような株主優待券をいわゆる転売することは、法律上問題はないということですよね。
牧野和夫 弁護士:
そうです。譲渡用としてはいけないというような記載がない限りは、持っている人が権利者ということで、特に問題はございません。
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日比キャスター:
ただ、先ほど紹介した3社の優待券も、偽物の券の流通が確認され、各企業のホームページで注意喚起がされました。
スタジオアリスでは、子連れの家族が記念日の撮影に行きました。支払いのときに、株主優待券で支払いをしたため、店側も株主優待券を受け取りました。
しかし、この株主優待券はメルカリから購入したもので、取引したのは偽物の券だったとメルカリから連絡があり、偽物だと判明したということです。
スタジオアリスの担当者は「本物と比較しないと社員でも判別できないレベル」だということです。
つまり、利用した人も、受け取った店側も偽物だと分からない精度であったということです。
スタジオアリスは優待券が偽物だった場合、▼いかなる事情でも利用不可、▼返金や交換等の一切の責任は負わないとしています。
見分け困難 偽物の券を使ってしまったら…日比キャスター:
転売に関しては問題ないということですが、このケースのように偽物の転売は法律上、問題はありますよね。
牧野和夫 弁護士:
はい。刑法上の有価証券偽造罪や行使等罪ということになります。
株主の優待券というのは、一定の価値を持っている有価証券ということになります。刑法上の罪に当たる可能性を知りながら販売したり、間違えて買ってしまった後に偽造されていると知った上で、他人に譲渡することも犯罪になります。
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日比キャスター:
今回のケースは、利用者の家族側も偽物だと知らずに使ってしまったということですが、仮に偽物の券を使ってしまった場合はどうでしょうか。
牧野和夫 弁護士:
偽物だと認識できなければ、かなり精巧に偽造されていたりするので、罪には問われません。
日比キャスター:
ただ、“偽物である”と認識した上で使うことは法律上問題ありますよね。
牧野和夫 弁護士:
はい。法律上問題はあります。
しかし、なかなか本物か偽物かということの区別はできないと思います。
最近、技術がかなり発展しているので、偽造が簡単にできてしまいます。それで、判別を難しくしていると思います。
南波雅俊キャスター:
メルカリのサイトを見てみると、いろんな種類の優待券が売られていますが、インターネットのサイトには、偽造品は出回っているものなのでしょうか。
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牧野和夫 弁護士:
正確な統計はありませんが、例えば、ブランド品でも正規品と偽物が出回っていたりするので、優待券に関しても同じようなことが言えるかと思います。
日比キャスター:
なぜ、偽造された株主優待券が気づかぬうちに手元に広がってしまっているのかという疑問がありますが、実は過去にも似たようなことがありました。
2010年、偽造されたマクドナルドの株主優待券を、中国から輸入した男6人が逮捕されました。
その数は、約3000冊で、すべてが偽物だったということです。組織的な犯行だったともみられています。
実際に何かを売る場合、例えば「買取大吉」では、不正な取引を実施した人物に関しては特定ができるようになっています。
厳しい鑑定があって、▼本人確認書類の確認もあり、▼防犯カメラなども設置されています。しっかりとプロの目で見て、販売することになっています。
フリマサイトなどでは、「本人確認前」や「匿名配送」でも出品可能になっています。
当事者のやりとりのみで取引が完了するというところから、本物かどうかの識別がなかなか難しいという背景もみられます。
メルカリは8月7日、マクドナルドから発行された株主優待券に関しては、21日から出品を禁止するということを発表しました。
また、メルカリでは偽物の株主優待券を購入してしまった場合、「全額補償サポートプログラム」で補償できる可能性もあるということです。
今回は、「マクドナルド」のみが対象になっていますが、他の企業に関してもどうなっていくのか、注目です。
偽物の株主優待券に関して、今後の対策はどのようなものが必要になってくるでしょうか。
牧野和夫 弁護士:
偽造の優待券が取引されたときに、フリマサイト側でトレースできるような形で、本人確認をきちんとしておくのが必要なことの一つだと思います。
フリマサイトでの取引というのは個人間の取引です。中には騙そうとする悪い人がいます。
安いので、つい手が出てしまうかもしれませんが、リアルの店舗を構えている金券ショップで、特に大手は非常に信頼できると思います。
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<プロフィール>
牧野和夫さん
弁護士
企業法務や民事事件を主に担当
消費者問題に詳しい