8月から肉・野菜・嗜好品が爆上がり! 逃げ場のない“値上げ熱波”の対策テクを専門家に聞いた

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2025年08月11日 11:10  週刊女性PRIME

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※写真はイメージです

 ここ数年の物価高で家計は圧迫され、さらにこの猛暑でさまざまな作物の生育被害も懸念される今、食材価格はどこまで値上がりしていくのか。

世界情勢、人口減、気候 値上げの要因しかない日本

ここ長らく騒がれている米にしろ、この猛暑では今年の収穫量も不透明ですし、季節野菜も果物も、当然暑さや台風、ゲリラ豪雨の影響を受けます。これは世界的な問題で、どの国も影響は甚大。

 しかし、問題なのは、食料自給率が低い日本は、こうした有事において世界の中でも食品が値上がりしやすい状況にあるということです

 と、消費経済アナリストの渡辺広明さん。

 現在、日本の食料自給率は38%といわれている。諸外国はというとカナダは204%、アメリカは104%、フランスは121%と、国内消費とさらに輸出にまで手が回る国もある中で、日本の食料自給率は主要国の中でも非常に低い。

作物の種や肥料をはじめ、家畜を育てるための飼料、エネルギーなどの輸入量を加味すると、真の自給率はカテゴリーにもよりますが、10%前後という説もあるほどです。気候変動や天災などによって輸入先に何らかのにダメージがあった場合、輸入に頼る日本はそのあおりをじかに受けるのです」(渡辺さん、以下同)

主菜の強い味方「鶏肉」にも暗雲が

 その例が、昨今の健康志向から、日本で最も多く消費される肉となった鶏肉だ。

「今年5月にブラジルにおいて高病原性鳥インフルエンザが発生し、日本をはじめ各国が輸入を一時停止しました。1か月程度で感染収束宣言は出されたのですが、鶏肉の輸出大国において世界的に流通がストップした影響は大きく、ブラジル産の値上がりが続いています

 安価で流通するブラジルの鶏肉は加工品などで多く使用されており、各小売業や飲食店などでもその影響が懸念されている。

流通量が減れば当然値段が上がります。5月に全国のスーパーで売られる鶏肉の平均価格が100g150円と過去最高額になったのもこの影響があるのでしょう。そもそも、鶏肉においては国内自給率が65%といわれていますが、

飼育に必要な飼料やその肥料、エネルギーなどは輸入頼りですから、このブラジル鳥インフルエンザ問題以前から値上がりが続いていました。今後も価格はなかなか下がらないと思います

 これは牛や豚などの肉類にもいえること。

「自国で飼育コストをコントロールできる国と比べると、日本の畜産業は非常に脆弱(ぜいじゃく)です。その上この気候で家畜の育成が悪く、また鶏卵も小ぶり化しているといわれている。さらに厳しい現実に直面するかもしれません

嗜好品は軒並み高価格!今こそ意識改革を

 輸入に頼っていると輸入先となる国の影響がダイレクトに家計に響くのは前述のとおり。80%を輸入に頼るカカオや、ほぼ100%輸入のコーヒーもしかり。

 この8月以降、マヨネーズなどを生産するキユーピーでも、鶏卵をはじめとするさまざまな原材料価格の高騰、人件費上昇の影響により値上げを発表。無印良品なども計85品目についての価格改定に踏み切る。

 他にも、各企業から値上げの告知がなされており、もはや企業努力では価格は抑えられない状況だ。

 そんな中において、消費者の価値観も変えなければならない、と渡辺さん。

今の日本は、過去30年のデフレ節約志向のひずみが爆発しています。人件費もコストも削って、とにかく消費者が望む“安くていいもの”を追い求めてきた。気候変動も人口減少もコスト高も、自国の努力ではどうにもならない問題が山積の今、あらゆるものが値上がりするのは当然なのです

 各家庭でできる打開策は何か。それは「地産地消」だ。

これだけ食費が値上がったとあえいでいても、いまだ日本はフードロスの割合が高い。売り物にならない規格外品野菜などが大量に捨てられています。

 この野菜の規格というのは各県や産地で決められていることが多いようですが、これらも見直して、日焼けがあろうと、傷があろうと虫食いがあろうと多く流通させ、買うかどうかは消費者に任せればいいんです。高い品質を追い求めるなら、高い金額を払って購入すればいい」

 それでなくてもこれだけ暑いと、ロスさせようと思わなくても野菜や果物をうっかり腐らせてしまうことも非常に多くなるだろう。

あとは極端なことを言っているようですが、私は自給自足の生活に立ち返ったらいいと思います

 たかだか80年程度前には多くの家で鶏を飼ったり、野菜を作っていた。ミニトマト、ピーマン、枝豆、ゴーヤの夏野菜など育てやすいものは自分で作ってみてはどうか。

これだけ地球規模で予測不可能なことが起こっているのですから、本当に自給自足しなければならない時代が再びやってくるかもしれません。家庭菜園が趣味ではなく、生きる手段になるのです

値上げしてもそれでも安い、今の価格に耐性をつけて

 ちまたは夏バテと節約疲れのダブルパンチ状態。しかし、この高価格に徐々に慣れていくしかない。

「米も卵も、以前の値段より倍近く高くなりました。でも、値上されてもお米はお茶碗1杯約45円※、卵は1個約30円程度。卵かけごはんにしたら1杯75円。菓子パンを買うより栄養もあるし安いのです。

 昔よりも高いからといって買い控えてしまうことで国内生産量が落ちてしまえば、また輸入の依存度が増してしまう可能性があることを意識してほしいですね

※農林水産省によると5kgの精米はお茶碗約77杯分。5kg3534円(7月11日の小売価格平均)にて算出

 値上げされてもなおコスパのいい、夏の食卓のおすすめは、冷凍食品だという。

「原材料を考えると地産地消とは少し離れてしまうかもしれませんが、冷凍食品もまた値上げしたとしても非常にコスパのよいアイテム。

 大量に収穫された時季のものを加工しているので気候による価格変動の影響も受けにくいですし、安易に腐らせることもなく、消費期限も長いのでフードロス対策にもなります

 ひと昔前は、季節性の高い消費の増加から“猛暑は経済を回す”ともいわれてきた。しかし、人も家畜も生命の危機を感じ、作物の生育に支障があるほどのこの暑さは、経済を疲弊させる。まだまだこれからが暑さの本番、夏の新たな乗り越え方が必要だ。

教えてくれたのは……渡辺広明さん●消費経済アナリスト、マーケティングアナリスト、流通アナリスト、コンビニ評論家、コンビニジャーナリスト。過去にコンビニバイヤーとして約780品の商品開発に携わった経験をもとに、コメンテーター、コンサルティング、講演など幅広く活動中。

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