ここまでシリーズを席巻してきた『ミツビシ・エクリプスクロス』に対し『トヨタ・カローラクロス』が逆襲に転じることに 今季より大変革のSUV時代を迎えている新生SCBストックカー・ブラジル"プロシリーズ"の第5戦が、8月15〜17日にミナスジェライス州クルベロにあるシルクイート・ドス・クリスタイスで開催され、ここまでシリーズを席巻してきた『ミツビシ・エクリプスクロス』に対し『トヨタ・カローラクロス』が逆襲に転じることに。
予選でトヨタにSUV新時代に於ける初のポールポジションをもたらしたセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラクロス)が、土曜スプリントを経た日曜メインレースにて待望の初優勝を飾り、今季ここまでの9ヒートで8人目の勝者に輝いている。
本来なら真冬の市街地フェスとして予定されていた開催2年目の『BH Stock Festival』こと、ベロオリゾンテでのストリート戦が開催延期となり、代わってシルクイート・ドス・クリスタイスでの一戦とされたレースウイークは、今季最初のTCRサウスアメリカ・シリーズ併催イベントに指定され、現地にはF1ドライバーとして活躍を演じるキック・ザウバーのガブリエル・ボルトレートも凱旋訪問。詰めかけた大観衆を前に各種イベント出演や表彰台プレゼンターの役割もこなした。
そんななか迎えた全長約3.3kmのテクニカルトラックでの走り出しは、走行25台のタイムが秒差圏内、首位から18番手までわずか0.5秒未満というSCBらしい超接近戦が演じられることに。その緊迫した条件のなかチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラクロス)と僚友ラモスがワン・ツー発進を決め、ここまで唯一の未勝利マニュファクチャラーとなっていたTOYOTA GAZOO Racingブラジル陣営が逆襲の狼煙を上げた。
「チームは非常にうまく機能した。バランスの取れたマシンでスタートを切り、ここまでは直線速度が不足していたが、改善に向けた作業で今日のプラクティスで成果が出たね」と季節外れの暑さのなか、路面にラバーの乗った最終セッションでトップタイムを計時したカミーロ。
「問題は解決できたと思う。最高速は他のマシンとほぼ同等で、クルマのバランスが非常に良好だったことから、僕らのセットアップが実を結んだようだ。フリープラクティス(FP)だがワン・ツーの功績は称賛に値する。ニューマシンのパフォーマンス向上に全力を注ぎ、このパフォーマンスを実現するためにつねに努力してきたチームにとって、これは大きな励みになるよ」
その手応えどおり、予選でもイピランガ陣営の勢いは衰えることなく、今度はチームメイトが主役に躍り出ることに。予選Q1では終了間際にベストラップを記録し、続くQ2では7番手に留まっていたラモスだが、自身で「人生最高のラップ」と表現した最終アタックにより、30号車カローラクロスで最初のポールポジションを獲得した。
「とてもうれしいね。チームにとってここまでとてもクリーンな週末になっているし、予選でも本当に良い仕事ができた」と感情のジェットコースターのようなセッションを経て、キャリア通算5度目のポール獲得となった36歳。
「予選Q1は少し緊張し、Q2はなんとか突破することができた。チームには感謝の気持ちでいっぱいだ。もちろん、息切れしそうなラップもあったけどね(笑)」と続けたラモス。
「ステアリングのスクリーンに基準タイムが表示されるが、Q2では7番手が精一杯。それほど強くないと感じていた。だから最後はすべてを詰め込むつもりで挑み、それが功を奏した。スクリーンを見たのはフィニッシュラインを通過したときだけで、週末で最速タイムだったんだ。信じられないほど素晴らしいラップ、ほぼ完璧なラップだったよ」
やはり気温29℃という季節外れの猛暑で迎えた土曜スプリントは、予選上位12台のリバースグリッドによりガエターノ・ディ・マウロ(ユーロファーマRC/ミツビシ・エクリプスクロス)が今季2度目の優勝を飾った初のドライバーに。これでディ・マウロはチャンピオンシップにおけるリードをさらに広げ、2位にギリェルメ・サラス(ヴァルダ・カバレイロ・スポーツ/シボレー・トラッカー)、そして3位にはカミーロが続くなど、グリッドを構成する3種のブランドが表彰台をシェアした。
「新世代の若手ドライバー2名に対し、表彰台に復帰できたチームには感謝しかないよ」と今季初表彰台を射止めたベテランのカミーロ。
「パフォーマンスを取り戻し表彰台に立てたことは素晴らしいことだが、自分たちのポテンシャルは分かっている。予算内で非常に良いペースを維持できたし、イピランガとトヨタに心から感謝している」
そして僚友がポールシッターを務めた日曜メインレースでは、残り10分でセーフティカー(SC)が介入し、フィールドが一丸となった状況下でも動じなかったラモスが、そのままキャリア通算4勝目を獲得。ストックカーSUVの新時代において、イピランガ・レーシングとトヨタ・カローラクロスにとって初の勝利となった。
「セーフティカーのような事態が発生する可能性があると分かっていたから、クルマとタイヤには細心の注意を払っていた。それでもうまくコントロールし、毎周プッシュし、そしてついにマシンをゴールに持ち込むことができたね」と宿願成就の喜びを語ったラモス。
その背後ではフェリペ・バティスタ(カー・レーシングKTF/ミツビシ・エクリプスクロス)が6番手発進から2位に躍進し、やはりエクリプスクロスの優位性を匂わせる戦果を挙げ、同じくスリーダイヤモンドのマシンを操る開幕勝者のフェリペ・フラーガ(ユーロファーマRC/ミツビシ・エクリプスクロス)も、僚友ディ・マウロがフライングスタートによるドライブスルーペナルティを受け23位に終わったこともあり、土曜時点で47ポイントのリードを奪っていたチームメイトに対し、その差をわずか11ポイントにまで縮めてみせた。
前半戦を終え、流れがわずかに変化した感触を漂わせる2025年のSCBシーズン。続く第6戦はカレンダー改訂版に従い、9月5〜7日にパラナ州カスカヴァルのアウトドローモ・ジルマー・ヴューで開催される。
https://www.youtube.com/watch?v=Orl5FcaACmg
[オートスポーツweb 2025年08月22日]