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近畿大学は9月1日、稻野俊直准教授と木南竜平助教授の研究グループが、オスからメスに性転換させたシベリアチョウザメからの採卵とふ化に成功したと発表した。キャビアの生産効率向上につながる可能性があるという。
近大は2019年、人工ふ化したシベリアチョウザメに女性ホルモンを経口投与し、オスの個体をメスにすることに成功している。このときメスにしたチョウザメの卵巣が正常に発達するか継続調査していたところ、観察対象が7歳2カ月になったところで、一尾の抱卵を確認したという。
さらに後日、その個体から約1050g(約6万8000粒)の卵を採取することにも成功。別のシベリアチョウザメの精子を受精させたところ、5日後にふ化した。ふ化したシベリアチョウザメを無作為に採取し、性別を確認したところ、全てがオスだった。
「シベリアチョウザメは、ZZ/ZW型の遺伝的性決定様式を有する種であることが分かっており、オス(ZZ)と通常のメス(ZW)の交配によりオスとメスが1:1の割合で生まれる。本件においては、性転換したシベリアチョウザメのメス(ZZ)と通常のオス(ZZ)の交配であるため、理論上はオスだけが生まれてくると考えられるが、このことを世界で初めて実践・証明した」(研究グループ)
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シベリアチョウザメは、水質の変化に強いことから世界で最も多く養殖されているチョウザメの一種。他のチョウザメに比べ卵のサイズが小さいものの、キャビアを生産できるスピードが早く、日本でも養殖されている。一方、遺伝子による雌雄判別が可能なため、国内の養殖においては、稚魚期にオスを選別・廃棄する場合もあるという。
研究グループは今後、キャビア生産のさらなる効率化に向け、今回ふ化したオスのメス化や、生まれながらに全個体がメスである種苗の生産を目指す。
「私たちが開発した技術が産業実装され、オスからキャビア生産が可能になり、オスが廃棄されることのないチョウザメ養殖産業になることを期待する」(稻野俊直准教授)
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