Anthropic、Claudeの経済影響レポート公開 米従業員の40%が職場で利用

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2025年09月16日 09:50  ITmedia NEWS

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 米Anthropicは9月15日(現地時間)、「Economic Index」を公開した。Claudeの採用パターンと、それが経済に与える影響に焦点を当てたレポートだ。このレポートによると、AIの普及速度は過去の技術と比較して前例がないほど速く、米国だけでも企業の従業員の40%が職場でAIを使用していると報告されている(2年前は20%だった)。AIは既存のデジタルインフラに導入可能で、特別な訓練なしに簡単に利用できるため、幅広い用途で既に有用であることが、この急速な普及を後押ししているとAnthropicは説明した。


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 この調査では、初期のAI導入が特定の地域や限られたタスクに集中していることが示された。Claude.aiの個人ユーザーの間では、コーディングが依然として最も多い利用法(36%)であるものの、教育的タスクの利用が9.3%から12.4%へ、科学的タスクが6.3%から7.2%へと顕著に増加している。さらに、ユーザーがClaudeにより多くの自律性を委ねるようになっており、「指示的」な会話(Claudeにタスク全体を委任するパターン)が27%から39%に急増している。これは、モデルの能力向上や、ユーザーがAIへの信頼を深めていることを示唆している可能性があるとしている。企業によるAPI利用では、この「指示的」な自動化の割合が77%とさらに高くなっている。


 AIの地理的な普及状況は非常に偏っており、Anthropic AI利用指数(AUI)で見ると、イスラエル(人口比7倍)やシンガポール(同4.57倍)のような高所得で技術的に先進的な国が、1人当たりのClaude利用率で上位に位置している。米国では、ワシントンD.C.が1人当たりの利用率で最も高く(人口比3.82倍)、ユタ州(同3.78倍)がそれに続いている。低普及国ではコーディングの利用が多い一方、高普及国では教育、科学、ビジネスなど多岐にわたる用途が見られる。このような不均一な普及は、AIの恩恵が既に豊かな地域に集中し、世界的な経済格差を拡大させる可能性を示唆している。


 企業によるAPI利用を見ると、個人ユーザーのClaude.ai利用とは異なり、自動化への傾倒がさらに顕著だ。ビジネス利用では77%が自動化パターンを示しており、特にコーディングや管理業務といったプログラムによるアクセスに適した専門的なタスクに集中している。企業は、タスクのコストよりもモデルの能力や自動化によって得られる経済的価値を重視する傾向があり、高コストのタスクほど利用頻度が高いことが示されている。しかし、複雑なタスクでAIを効果的に展開するには、適切な文脈情報を提供することが重要であり、分散した情報を集約・整理できていない企業にとっては、これがAI導入のボトルネックとなる可能性もある。


 この調査は、Claude.aiの100万件以上の会話データと、AnthropicのファーストパーティAPI顧客からの100万件の匿名化されたトランスクリプトを、プライバシー保護の分析方法を用いて収集・分類したもの。タスクの分類には、米国の標準的な職業分類であるO*NETタクソノミーと、Claude自身が生成するボトムアップのタクソノミーの両方を使用している。


 Anthropicは、AIの能力と導入は進化を続けており、知識ベースのタスクが急速に成長していると結論付けている。初期のAI導入における偏りは、その技術が経済活動を根本的に変革する潜在力を持ちつつも、既存の格差を拡大させるリスクがあることを示唆している。


 同社は、このレポートの基盤となる包括的なデータをオープンソース化することで、独立した研究を促進し、政策立案者がAIの経済的影響に関するエビデンスに基づいた対応策を講じることを期待している。AIがもたらす経済的影響は、技術的能力だけでなく、社会が下す政策決定によって大きく左右されるだろうと予測する。



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