写真 結婚を控えた人が、家庭を築くことへの不安や迷いから気落ちしたりイライラしたりしてしまうマリッジブルー。
今回は、そんなマリッジブルーをきっかけに人生が変わったという女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆初めての婚活パーティーで彼氏ができた
里村結衣さん(仮名・32歳/派遣社員)は、生まれて初めて婚活パーティーに参加することになりました。
「今までそんなに結婚したいと思っていた訳ではないのですが、仲の良い女友達が次々と結婚していく中、とうとう最後の1人が最近あちら側に行ってしまって。ついに独身は私だけになってしまったんですよ」
すると途端に焦ってきてしまった結衣さんは、その女友達の1人が結婚相手を見つけたという婚活パーティーに乗り込んでみたそう。
「そしたらいきなりまぐれでカップリング成立してしまい、初対面の伸之さん(仮名・34歳/会社員)とお茶しに行って連絡先を交換してドキドキしましたね」
そして2人はトントン拍子にお付き合いをすることになりました。
「そこまでタイプだったわけではないですが、物腰が柔らかく誠実そうな男性だったので結婚するにはぴったりだろうと思ったんですよ」
◆交際3ヶ月でプロポーズ、そしてマリッジブルーに
そしてお付き合いを始めて3ヶ月後の結衣さんの誕生日に、伸之さんからプロポーズされたそう。
「もちろん嬉しかったですし、即OKしたのですが……なぜか胸がモヤモヤするというか手放しでは喜べない複雑な心境になってしまい、いちばん最近結婚した女友達の美菜子(仮名・31歳/雑貨屋勤務)に相談したんですよ」
すると「それはただのマリッジブルーでよくあることだし、心配しなくてもすぐに結婚する自分を受け入れられるようになるから、今は気分転換しながら時間が過ぎるのを待っていたらいいよ」と、美菜子さんが最近ハマっているというプロレスに結衣さんも連れ行ってもらうことになりました。
「そしたら私は、初めてのプロレス観戦でかなりの衝撃を受けてしまったんですよね」
ある選手に心を鷲掴みにされてしまった結衣さんは、美菜子さんが引くほどに凄いスピードでプロレスにハマっていったそう。
◆恋人に別れを告げて、仕事も辞めてしまった
「筋肉隆々で雄々しい選手が多い中、私が気になった選手は強さの中に繊細さを合わせ持った儚げな印象のイケメンなんですが、どんなにやられてもやられても立ち上がる不屈の精神に私は感動してしまって。
その選手を見ていると、『私が婚活パーティーで適当に相手を見繕って結婚するのって、ただ自分の人生から逃げているだけなんじゃないのかな? 一般的な幸せみたいなものを手にしたいって気持ちも周りの目を気にしているだけだし、つまり私は自分と向き合うことをせず逃げているだけなんだ』というカッカッした気持ちになって……。
結局私は、伸之さんに別れを告げると仕事も辞めてしまったんです」
そして結衣さんは、以前からずっと好きで興味があった銭湯に勤めはじめました。
「新しい職場は服装髪色自由なので、推し選手とおそろいの金髪にしたんです。些細なことかもしれませんが私にとってはかなりの冒険で、金髪にした自分を初めて鏡で見た時に不思議と胸がスッとしたんですよね」
◆プロレス漬けの日々を送るようになったある日
そんな結衣さんは試合やイベントに通いまくり、プロレス漬けの日々を送るようになったそう。
「そしたら半年後、急に伸之さんから連絡が来てビックリしました」
せっかくだから会おうということになり、2人は食事に行く約束をしました。
「すると私の姿を見た伸之さんが『前よりずっと生き生きしてるし別人みたいだね』と、近況を興味深げに聞いてくれて……そこから普通の友達になることができたんです」
◆あの時、プロポーズを断って良かった
それから2人は一緒に遊びに行くようになり、自然と会う頻度が増えていき復縁したそう。
「出会いは婚活パーティーでしたが、伸之とは出会うべくして出会った相手だと思えましたし、本当の私を丸ごと受け入れてもらえて嬉しかったんですよね。そしてあの時伸之のプロポーズを断ったことで自分らしく生きられるようになったことを心底感謝しているんですよ」
伸之さんから2度目のプロポーズをされた結衣さんは、今度はわだかまりなくOKすることができたそうです。
<イラスト・文/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop