国会議事堂=東京都千代田区(AFP時事) 国から秘書給与約828万円をだまし取ったとして石井章前参院議員(68)=辞職、日本維新の会を除名=が在宅起訴された事件では、公設秘書の不透明な雇用実態が浮き彫りになった。雇用状況を記載した届けは国会で公開されているが、未提出でも罰則はなく、過去の分は閲覧することができない。識者は、勤務実態をきちんとチェックする仕組みが必要だと指摘する。
公設秘書は特別職の国家公務員で、国会議員は政策秘書など3人を国費で雇うことができる。採用した場合、給与支給のために必要な非公開の「採用届」に加え、氏名や勤務地などを記した「現況届」を国会に提出する必要がある。
現況届は、1990〜2000年代に秘書給与詐欺事件が相次いだことを受け、04年に各会派の申し合わせで提出が義務付けられた。所属する会派を通じて国会に提出され、公開される。ただ、閲覧するためには衆参両院の事務局に足を運ぶ必要があり、インターネットを通じた公開などは行われていない。
石井前議員の公設秘書については、採用後も現況届が提出されていない時期があったことが判明している。ただ、届け出は申し合わせに基づくもので、未提出でも罰則はない。別の議員の政策秘書は「当然出すものだと思っていた」と驚く。
また、現況届は現在雇用されている秘書の情報公開が目的で、過去の届けをさかのぼって閲覧することはできない。参院事務局によると、提出後の現況届の保管についての定めはないという。
秘書の雇用状況について、ある政党職員は「提出されたものを信頼するしかない」と説明した。
法政大大学院の白鳥浩教授(政治学)は「税金から給与が出る以上、過去の雇用歴も公にするべきだ」と問題点を指摘。「第三者機関などで勤務実態をチェックする必要がある」と話した。