柴田亜美のドラクエ4コマ漫画、復刊で即重版に  “ゲーム4コマ”が漫画界に与えた影響とは?

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2025年11月10日 08:00  リアルサウンド

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 『南国少年パプワくん』などのヒット作で知られ、近年は画家としても活動の場を広げている漫画家・柴田亜美。柴田が1990年代初期に手掛け、子どもたちを爆笑の渦に巻き込んだ『ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場』の漫画が、新たに単行本にまとめられて10月30日に刊行された。『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場ニセ勇者本』(スクウェア・エニックス/刊)は刊行後から話題となっており、すでに重版出来となるなど売上も好調のようだ。


 当時、“ニセ勇者シリーズ”は圧倒的な人気を誇り、ニセ勇者のハチャメチャな性格は読者に強烈なインパクトを残した。また、ニセ勇者の髪型や目、性格などは、その後の柴田氏の代表作『南国少年パプワくん』のパプワの原型とも言ってもいいだろう。ニセ勇者の必携アイテムと言えば日の丸の扇子だが、その点もパプワと共有する。


■ゲーム4コマ漫画の魅力

 現在はあまり見かけなくなってしまったが、1990年代はゲームの公式4コマ漫画の全盛期で、エニックス(現在のスクウェア・エニックス)、新声社、双葉社、光文社などから出版されていた。キャラクター設定を漫画家が独自の解釈で描いた作品も多く、子どもはもちろん、コアなゲームファンも引き付ける人気があった。


 人気だったのは『ドラゴンクエスト』『スーパーマリオ』『ポケットモンスター』などで、『ぷよぷよ』や『魔導物語』シリーズの4コマ漫画はメーカーのコンパイルの独特の社風の影響もあってか、かなりマニアックな内容が多かった。また、1990年代後半になると美少女ゲームを題材にした4コマ漫画も出版されるようになった。


 当時の4コマ漫画を読み返してみると、当時の子どもたちがこんなマニアックな漫画を読んでいたことに衝撃を受けてしまう。多少のキャラクター崩壊も描き手の個性として許容されていたといえるし、当時はコミックマーケットでも二次創作が盛り上がっていた時代でもあり、そういった風潮を受けているのだろう。


 また、ゲームの4コマ漫画から、柴田氏を含め、その後数々のヒット作を生み出す漫画家が誕生したことも特筆される。いわば漫画家の登竜門でもあったといえるだろう。なお、ゲームの4コマ漫画の精神は、現在も出版界で生きている。例えば、芳文社が2002年に創刊した「まんがタイムきらら」は、ゲーム4コマの流れを汲んでいるといわれる。


 リアルサウンドブックでは、『ぼっち・ざ・ろっく!』(はまじあき/著、芳文社/刊)の担当編集を務める瀬古口拓也氏にインタビューを行っている。瀬古口氏は「きらら」の歴史に触れ、「ゲーム系の4コマは、きらら系の源流なんですよ。実際、『きらら』の初期には、ゲーム系4コマ出身の漫画家がいらっしゃいました」と証言している。


 「きらら」が普及したのは、ゲーム好きのファンが4コマ漫画に親しんでいたからなのかもしれない。ゲーム4コマ漫画は、漫画史においても重要なムーブメントだったといえるし、柴田氏はそれを牽引した漫画家といえる。そんな柴田氏のニセ勇者シリーズが、令和の時代に新刊で読めるのは至福だろう。当時小学生だった人も、新たに柴田氏のファンになった人も、手に取る価値の高い一冊になりそうだ。



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