ソニー、約2億画素のイメージセンサー発表 ズーム時も細部を鮮明に

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2025年12月05日 11:40  ITmedia Mobile

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ソニー

 ソニーセミコンダクタソリューションズ(ソニー)は11月27日、モバイル機器向けの新型イメージセンサー「LYTIA 901」を商品化すると発表した。1/1.12型という大判サイズに有効約2億画素を搭載し、さらにAI技術を活用した画像処理回路をセンサー内部に組み込んだ点が大きな特徴となる。2025年11月から量産出荷を行い、今後のスマートフォン市場における高倍率ズーム撮影の品質向上を目指した製品として注目を集める。


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 新型センサーは、0.7μmの画素ピッチによって約2億画素を実現したうえ、Quad-Quad Bayer Coding配列を採用することで高解像度と高感度の両立を図った。QQBC配列は、4×4の16画素を1つの同色ブロックとして扱う特殊な構造で、通常撮影では16画素分の情報をまとめて扱うことで夜景や室内でも十分な感度を得られるように設計されている。これにより、大判センサーの特性を生かしながら暗部のディテールを保持し、明部の破綻を抑える性能を底上げした。


 一方で、ズーム撮影時にはこのままでは高解像度を十分に生かせないため、配列変換処理によって通常の画素配列に戻す必要がある。ソニーはこの工程にAI学習型のリモザイク処理を採用し、その回路をモバイル用センサーとして初めて内部に搭載した。通常、リモザイク処理は色の再構築に膨大な演算量を必要とするうえ、高周波成分と呼ばれる細かな模様や文字などの再現が難しい。AIを活用した新方式では、こうした細部の描写が従来以上に自然かつ精密に再現されるとした。


 リモザイクをセンサー側で処理できるようになったことで、撮影時の応答速度も改善し、4K解像度で4倍ズームまでの動画を最大30fpsで高画質のまま記録できるようになった。単眼カメラ構成が増える最近のスマートフォンにおいて、光学系に頼らずデジタル処理で画質を最大限に引き出すアプローチを強化した点が、このセンサーの大きな狙いとなる。


 また、HDR処理関連の技術も強化されている。センサー内部で異なるゲインのデータを合成するDCG-HDR技術に加え、従来10bitだったAD変換の分解能を12bitへ引き上げたFine12bit ADCを搭載した。これにより、ズーム倍率を4倍まで高めた状態でも広いダイナミックレンジを維持し、細かな階調表現を可能にする。暗所や逆光の場面でも、滑らかな階調と自然な色再現を保てる点が利点となる。


 さらに、短時間露光で得たフレームを後段のアプリケーションプロセッサで合成するHF-HDR技術も新たに採用された。HF-HDRでは、DCGのデータと短時間露光データを組み合わせることで、従来を大きく上回る100dB以上のダイナミックレンジを実現する。明暗差の大きい場面でも黒つぶれや白飛びを抑えることで、実際の視界に近い描写を可能にしたという。


 センサー全体としては、解像度、感度、階調、ズーム時の解像感といった要素を一体的に底上げすることで、スマートフォンの単眼カメラでも高倍率ズームを実用的なレベルに引き上げることが目指されている。これらの技術を組み合わせることで、細部を失わない静止画撮影はもちろん、動画撮影時における画質維持も強化される。


 ブランド名の運用方針についても説明があった。ソニーはLYTIAの認知向上を目的に、今後展開する製品名を「LYTIA(製品番号)」へ統一していく方針で、今回の商品化されるLYTIA 901はその最初のモデルとなる。モバイル向けイメージセンサー事業のライン全体を1つのブランドに集約し、性能と特徴を明確に伝えていく狙いがあるとみられる。


 今回の発表によって、スマートフォンのズーム性能、とりわけ単眼構成の機種における超解像処理の品質は大きく変わる可能性がある。AIをセンサー内部へ直接組み込むというアプローチがどこまで実機で効果を発揮するかが、今後の注目点となるだろう。ソニーは、かつてセンサー構造の刷新によってスマートフォンカメラの画質を大きく進化させてきた経緯があり、今回のLYTIA 901も同様に市場の基準を引き上げる可能性がある。出荷開始が近づくにつれ、採用メーカーや搭載端末の動向が関心を集めそうだ。



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