
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領に対し、ソウル中央地裁は2月19日に無期懲役の判決を言い渡した。2024年12月に「非常戒厳」(=戦時など非常事態時に軍事力によって民主的な政治活動や市民生活を制限する措置)を宣言したことで、尹氏は内乱首謀罪で起訴されており、特別検察は死刑を求刑していた。
相次ぐ韓国大統領の逮捕
韓国の大統領は、全斗煥(チョンドゥファン)氏《内乱罪などで無期懲役》、盧泰愚(ノテウ)氏《内乱罪などで懲役17年》から始まり、最近の李明博(イミョンバク)氏《収賄罪などで懲役17年》、朴槿恵(パククネ)氏《収賄罪などで懲役22年》と何人も退任後に逮捕されてきた。戦後、日本では元首相が逮捕されたのは田中角栄氏のみだが、どうして韓国はこんなにも大統領が逮捕されるのだろうか。
「韓国の大統領は行使できる権限が非常に大きい。代表的な例で言うと、通貨危機になった際にどの企業をつぶすのかという不良債権処理は政府の傘下にある金融委員会の管轄。そこで、あまり経営状態のよくない企業や認可を受けられない企業が、大統領やその家族、側近に金銭を渡せば便宜を図ってもらえると考え、賄賂が横行するのです」
と話すのは韓国の政治事情に詳しい神戸大学大学院の木村幹教授。
収賄罪で捕まった朴元大統領や李元大統領は日本だと凶悪な殺人を犯したぐらい重い判決を下されている。
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「李氏は日本円で約11億円、朴氏は数十億円の賄賂で金額がとても大きいにしても、田中元首相は約5億円の賄賂で懲役4年でした(のちに控訴)。これは日本の刑法では収賄罪の刑期の上限が懲役5年だからです。
一方、韓国では収賄額が1億ウォン(約1000万円)未満の場合は最長で懲役5年ですが、それ以上の額の場合、無期懲役もしくは10年以上の懲役とされています。これは60年以上前に制定された法律がそのまま残っており、軍事政権だったときの名残です。今の価値観でいうと金額に対して刑が重すぎると感じますが、変わっていないのは韓国人の処罰感情の強さの表れでもありますね」(木村教授、以下同)
李氏も朴氏も判決後、特赦により保釈されている。
「特赦も大統領の大きな権限のひとつです。昔から、無期懲役だなどといって逮捕しては、反省しているなら保釈しよう、ということが韓国では繰り返し行われていました。
保釈後は警察の警備がつき、一般の国民のように暮らせますが、年金などさまざまな公的サービスは受けられなくなります。尹氏も政権交代が行われたら、特赦保釈される可能性はあります」
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盧武鉉(ノムヒョン)元大統領は2009年、不正資金疑惑で捜査を受ける中、自殺。
悲劇の末路をたどる韓国大統領が多いが、李在明(イジェミョン)現大統領は強大な権力のもとで誘惑を断ち切れるのか。
