耳の神経が死滅する? 8人に1人を襲う「ヘッドホン難聴」の深刻さと、今すぐ始めるべき3つの予防策

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2026年03月07日 20:50  All About

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【小児科医が解説】子どもからの「聞き返し」が増えていませんか? 若者の8人に1人が、一生治らない「ヘッドホン難聴」の兆候があると分かりました。耳の「有毛細胞」は一度壊れると再生しません。手遅れになる前に親子で知っておきたい「耳を守るための3つの鉄則」をご紹介します。(※画像:Shutterstock.com)
教室や街中でイヤホンやヘッドホンをつけている子どもたちをよく見かけませんか?

「いつも音楽を聴いているようだけど、耳は大丈夫なのかな?」と心配になったことがある先生や保護者の方も多いのではないでしょうか。世界保健機関(WHO)も「ヘッドホン難聴」「イヤホン難聴」に警鐘を鳴らしています。実際のリスクについて、分かりやすく解説します。

約8人に1人に騒音性難聴の兆候……自覚なきまま進む「ヘッドホン難聴」の実態

難聴の早期発症を招く「ヘッドホン難聴」(※画像:AKITANI METAL 筆者作成)

実は、子どものヘッドホン難聴の心配が決して大げさではないと裏付ける、衝撃的なデータが発表されました。オランダのエラスムス大学の研究チームが18歳の若者の聴力を調査した結果、12.9%に「騒音性難聴」の疑いがあることが明らかになったのです。

12.9%という数字は、およそ8人に1人の割合です。30人のクラスであれば、約4人の生徒がすでに耳に何らかのダメージを負っている計算になります。これは決して無視できない、深刻な数字と言えます。

近年、スマートフォンや高性能なイヤホンの普及により、私たちの「耳」を取り巻く環境は激変しました。世界的に見ても、10代は音楽鑑賞やゲームなどのレクリエーションによる大音量にさらされるリスクが最も高い世代です。耳の細胞へのダメージは蓄積されるため、大人になってから慌てて対策しても手遅れになる可能性があります。

破壊された「有毛細胞」は二度と戻らない……子どもの聴力低下が怖いワケ

今回の調査では、3347名の18歳の若者に対し、詳細な聴力検査や中耳の検査を実施しました。そのうち2847名については、13歳時点のデータと比較し、5年間で聴力がどう変化したかも分析しています。

結果は衝撃的なものでした。まず、6.2%に「感音性難聴」、12.9%に「騒音性難聴(ヘッドホン難聴)の疑い」が確認されたのです。

感音性難聴は、音を感じとる役割のある内耳・聴神経・脳に何らかの問題が起きることで発症する難聴です。音が全体的に小さく聞こえたり、歪んで聞こえたり、特に高音域や早口の言葉が聞き取りにくくなるのが特徴です。このタイプの難聴は治りにくいことが分かっています。

騒音性難聴は、音の振動を電気信号に変えて脳に伝える役割を持つ内耳の「有毛細胞」が、加齢や騒音などの影響で傷ついて、壊れてしまうことで起こる難聴です。特定の高さの音が聞こえにくくなる「ノッチ」という現象や、高音域の聴力低下が見られます。騒音性難聴も耳の神経の難聴と言えます。

ここで最も重要なのは、「有毛細胞」は一度壊れると二度と再生しないという点です。強い振動によってこの細胞が死滅してしまうと、現代の医学でも元に戻すことはほぼ不可能になります。

すでに難聴の兆候があった子は、難聴が年齢とともに悪化する傾向も報告されています。「8人に1人が、一生治ることのない難聴を抱えている」という事態は、教育や発達の面からも非常に深刻です。

「聞き返し」は耳からのSOS? ヘッドホン難聴予防のために実践すべき3つの鉄則

この研究が私たちに教えてくれるのは、「若者の耳は、私たちが思っている以上に限界を迎えているかもしれない」ということです。

繰り返しますが、耳の奥にある「有毛細胞」は、一度壊れると二度と再生しません。今のダメージは、そのまま将来の「聞こえない世界」へとつながってしまうのです。私たち大人は子どもたちに何を伝えればよいのでしょうか。

厚生労働省や日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの専門家が推奨する、シンプルで効果的な「3つのルール」をご紹介します。


音量は最大音量の60%以下にする

「周りの会話がなんとなく聞こえる」程度が安全な目安です

耳にも「休憩時間」をつくる

「1時間聴いたら10分は休む」。この習慣をつけるだけでも、有毛細胞の負担は劇的に減らせます

ノイズキャンセリングを活用する

電車やバスの中などうるさい環境では、ついヘッドホンの音量を上げてしまいます。周囲の雑音をなるべく消す機能を活用することで、小さな音量で十分に音楽を楽しめます

筆者の小児神経外来には、「聞き返しが多い」「人の話がうまく聞き取れない」といった症状で受診する子どもたちがいます。多くは不注意や過集中によるものですが、実は「ヘッドホン難聴」による物理的な耳のダメージが原因である可能性も否定できません。

「ただの不注意」と片付けるのではなく、「耳からのSOSかもしれない」という視点を、ぜひ心の片隅に置いていただければ幸いです。

■参考文献
Stefanie N H Reijers,Jantien L Vroegop,Danique E Paping,et al. Longitudinal Insights into Sensorineural and Noise-Induced Hearing Loss in Adolescents Aged 13-18 Years.Otolaryngol Head Neck Surg.2025 Dec;173(6):1385-1392.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41085097/

ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)について - 厚生労働省. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/sensory-organ/s-002

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会.ヘッドホン・イヤホン難聴とは?
https://owned.jibika.or.jp/headphone

秋谷 進プロフィール

小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。
(文:秋谷 進(医師))

このニュースに関するつぶやき

  • 密閉型のヘッドホンや、耳栓の様な形のイヤホン(カナル型)のように、外気の進入を物理的に遮断する能力の高い系統のヘッドホンやイヤホンは特に注意。音圧の逃げ場がないので鼓膜を直撃する。
    • イイネ!1
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